BCMAを標的とする抗体は感染症リスクが実は高めです。
最初に承認されたのはBCMA(B細胞成熟抗原)とCD3を標的とするテクベイリ(テクリスタマブ)で、2024年12月27日に承認され2025年3月19日に発売されました。次いで同じくBCMA標的のエルレフィオ(エルラナタマブ)が承認され、さらに2025年6月24日にはGPRC5D(Gタンパク質共役型受容体ファミリーCグループ5メンバーD)とCD3を標的とする世界初の二重特異性抗体タービー(トアルクエタマブ)が承認されました。 carenet(https://www.carenet.com/news/general/carenet/60446)
BCMA標的とGPRC5D標的という2つの系統が存在するということですね。
これらはいずれも、免疫調節薬、プロテアソーム阻害薬、抗CD38モノクローナル抗体を含む少なくとも3つの標準治療が無効または治療後に再発した再発・難治性多発性骨髄腫患者に使用されます。全奏効率(ORR)は60~65%と高く、その約半数が完全奏効以上を達成し、長期の奏効が期待できる画期的な治療です。 webview.isho(https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.32118/ayu290060492)
ケアネット:多発性骨髄腫に対する新たな二重特異性抗体テクリスタマブ
テクリスタマブの有効性と臨床試験データについて詳しく解説されています。
BCMA標的とGPRC5D標的では、標的抗原の発現パターンが大きく異なります。 bibgraph.hpcr(https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/38194680)
BCMAは多発性骨髄腫細胞に高発現していますが、正常なB細胞やT細胞、ナチュラルキラー細胞にも一定の発現があるため、BCMA標的の二重特異性抗体では感染症リスクが比較的高くなる傾向があります。一方、GPRC5Dは骨髄腫細胞と非悪性形質細胞の表面に高発現していますが、正常なB細胞、T細胞、ナチュラルキラー細胞にはほとんど発現していません。 jnj(https://www.jnj.com/innovativemedicine/japan/press-release/20250626)
つまり感染症リスクが異なるわけですね。
ただし、GPRC5Dは皮膚や舌の上皮細胞、毛包、口腔粘膜、爪床などの正常組織にも発現しているため、GPRC5D標的の薬剤では味覚障害(dysgeusia)、体重減少、皮膚・爪の変化、発疹といった特有の有害事象が見られます。この標的抗原の違いが副作用プロファイルの違いにつながるため、患者の状態や既往歴に応じた薬剤選択が重要です。 ascopost(https://ascopost.com/issues/september-10-2024/what-is-the-better-target-for-bispecific-antibodies-in-multiple-myeloma-bcma-or-gprc5d/)
免疫機能を活性化する仕組みですね。
臨床試験では、テクリスタマブのMajesTEC-1試験において、重度の前治療歴を持つ再発・難治性多発性骨髄腫患者で約2/3が奏効し、その半数は完全奏効以上の効果を達成しました。タービーについても同様に高い奏効率が報告されており、特に髄外性形質細胞腫を有する難治例においても深く持続的な奏効を示す可能性が示されています。 webview.isho(https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.32118/ayu290060492)
二重特異性抗体療法では、免疫を活性化する作用機序ゆえに特有の有害事象が生じます。 cir.nii.ac(https://cir.nii.ac.jp/crid/1390300379550457216)
最も注意が必要なのは感染症で、特にBCMA標的の二重特異性抗体では正常B細胞への影響により免疫グロブリン産生が低下し、感染症リスクが上昇します。そのため、治療中は定期的な免疫グロブリン値のモニタリングと、必要に応じた補充療法、予防的抗菌薬投与などの対策が推奨されます。サイトカイン放出症候群(CRS)も初回投与時を中心に発現する可能性があるため、投与初期は慎重な観察が必要です。 carenet(https://www.carenet.com/news/general/carenet/60446)
感染症対策は必須ということですね。
GPRC5D標的のタービーでは、感染症リスクは比較的低い一方で、味覚障害が高頻度に出現し、それに伴う体重減少が問題となることがあります。また、皮膚症状(発疹、爪の変化)も特徴的です。これらの有害事象に対しては、症状に応じた対症療法や栄養サポート、皮膚科的ケアが重要で、患者のQOL維持のために多職種連携での支援が求められます。 carenet(https://www.carenet.com/news/general/carenet/61403)
がん対策:再発・難治性多発性骨髄腫の標準治療
二重特異性抗体の投与スケジュールと副作用管理について詳細な情報があります。
二重特異性抗体治療後の再発や耐性獲得のメカニズムとして、標的抗原(BCMAまたはGPRC5D)の発現低下が報告されています。 bibgraph.hpcr(https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/38194680)
骨髄腫細胞集団は不均一で、治療により標的抗原を発現する細胞が減少すると、抗原陰性のクローンが優位になり耐性が生じます。この免疫逃避メカニズムに対処するため、異なる標的を持つ二重特異性抗体の併用療法が注目されています。実際に、GPRC5D標的のタービーとBCMA標的のテクベイリの併用療法(RedirecTT-1試験)では、2つの抗原を同時に標的とすることで標的抗原の免疫回避リスクを低減し、より高い奏効率とより深い奏効をもたらす可能性が示されています。 iyakutsushinsha(https://iyakutsushinsha.com/2025/11/04/%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%BC%E3%81%A8%E3%83%86%E3%82%AF%E3%83%99%E3%82%A4%E3%82%8A%E3%81%AE%E4%BD%B5%E7%94%A8%E7%99%82%E6%B3%95%E3%80%80%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%A7%E5%86%8D%E7%99%BA%E3%83%BB/)
2つの標的で攻めるわけですね。
今後の課題としては、最適な投与スケジュールと治療期間の設定、既存の抗骨髄腫治療薬との併用順序や統合方法の確立、そして耐性の生物学的・臨床的メディエーターの解明が挙げられます。さらに、CAR-T細胞療法との使い分けや、治療効果予測バイオマーカーの開発も重要な研究テーマです。 bibgraph.hpcr(https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/38194680)
テクベイリは体重に応じた投与が可能な皮下注製剤で、希釈せずに使用できる特徴があります。 jnj(https://www.jnj.com/innovativemedicine/japan/press-release/20240522)
投与スケジュールは、初回投与時にステップアップ方式(段階的増量)を採用し、サイトカイン放出症候群のリスクを軽減します。その後は週1回投与を行い、一定の奏効が得られた後は投与間隔を延長できる設計となっています。タービーも同様の皮下注製剤で、投与前の調製が不要であり、外来での投与が可能です。タービーは隔週投与も可能な設計で、患者の通院負担軽減に配慮されています。 jnj(https://www.jnj.com/innovativemedicine/japan/press-release/20250624-2)
通院負担が軽いのは使えそうです。
患者選択においては、3つ以上の標準治療が無効または再発していることが前提ですが、それ以外に全身状態、臓器機能、既存の感染症の有無、T細胞機能などを総合的に評価します。BCMA標的抗体では感染症リスクが高いため、易感染性宿主では特に注意が必要で、予防的抗菌薬や免疫グロブリン補充の計画が重要です。GPRC5D標的抗体では味覚障害や体重減少が問題となりうるため、栄養状態が不良な患者では栄養サポート体制の整備が望まれます。 c2h.niph.go(https://c2h.niph.go.jp/results/C2H2403/C2H2403_Background.pdf)