NNTが高いほど「その治療は効かない」と判断するのは間違いで、NNT=1でも害になるケースがあります。
NNTとは「Number Needed to Treat」の略で、日本語では治療必要数と訳されます。「1人の患者にベネフィット(アウトカムの改善)をもたらすために、何人に治療を行う必要があるか」を示す指標です。
例えばNNT=10なら、10人治療して初めて1人が恩恵を受けるということです。残りの9人は治療を受けても、その治療による直接的な恩恵は得られていません。これは小さい数字ほど効果が高いことを意味します。
NNTはランダム化比較試験(RCT)のエビデンスを臨床に「翻訳」するための橋渡し的な数値として、1988年にLaupacisらによって提唱されました。それ以来、EBM(根拠に基づく医療)の現場で広く用いられています。
つまり「何人に使えば1人助かるか」が一目でわかる数値です。
NNTの計算には、まずARR(Absolute Risk Reduction:絶対リスク減少)を求める必要があります。計算式は以下のとおりです。
| 指標 | 計算式 | 意味 |
|---|---|---|
| ARR | 対照群のリスク − 介入群のリスク | 絶対的なリスク差 |
| NNT | 1 ÷ ARR | 1人を助けるために必要な治療数 |
| RRR | ARR ÷ 対照群のリスク | 相対リスク減少(過大評価されやすい) |
具体例で考えてみましょう。ある降圧薬の試験で、対照群の5年間の脳卒中発症率が10%、介入群が6%だったとします。
ARR = 10% − 6% = 4%(0.04)
NNT = 1 ÷ 0.04 = 25
この場合、25人に5年間投与して初めて1人の脳卒中を防げる計算です。東京ドームの観客約5万人に置き換えると、2,000人の脳卒中を防ぐのに5万人に薬を使う規模感になります。
ARRが小さいほどNNTは大きくなります。ここが重要です。
一方でRRR(相対リスク減少)は「40%リスク減少!」といった印象的な数字になりやすく、製薬企業のプロモーションでも頻繁に使われます。しかしRRRだけを見ると効果を過大評価する危険があります。必ずARRとNNTをセットで確認する習慣が必要です。
NNT・ARR・RRRの違いと計算方法をわかりやすく解説(MinChir)
NNTを実際の臨床判断に活かすには、いくつかの前提を理解する必要があります。
まず「どのアウトカムに対するNNTか」を確認することが最重要です。同じ薬でも、「死亡」に対するNNTと「入院回避」に対するNNTは大きく異なります。例えばスタチン系薬剤の心筋梗塞一次予防におけるNNTは、研究によっては50〜200程度とされており、二次予防(既往あり)の場合よりも大幅に高い値になります。
次に「観察期間」です。NNT=25といっても、それが「1年間」なのか「5年間」なのかで意味が変わります。必ず試験の観察期間と一緒に読む必要があります。
さらに対象患者の背景リスクにも注意が必要です。ベースラインリスクが高い患者ほどARRが大きくなり、NNTは小さくなります。つまり同じ薬でも、ハイリスク患者へのNNTは低く(効率的)、ローリスク患者へのNNTは高くなります。
NNTが使えるのは介入研究に限られます。
NNTと対になる概念がNNH(Number Needed to Harm:害必要数)です。「1人に有害事象を引き起こすために何人に治療する必要があるか」を示します。計算式はNNTと同様で、1 ÷ ARI(絶対リスク増加)で求めます。
NNTとNNHを組み合わせることで、治療のベネフィット・リスクバランスを数値で比較できます。
一般的な目安として、次のような解釈が参考にされています。
| NNT/NNH | 解釈の目安 |
|---|---|
| NNT < 10 | 非常に効果的(多くの患者が恩恵を受ける) |
| NNT 10〜50 | 中程度の効果(患者背景を考慮して判断) |
| NNT > 100 | 効果は限定的(cost-benefitの検討が必要) |
| NNH < NNT | ⚠️ 害がベネフィットを上回る可能性あり |
例えばある鎮痛薬でNNT=5(5人に1人が痛み軽減)、NNH=10(10人に1人が消化管出血)だとすると、10人に使えば2人が痛み軽減で1人が消化管出血するリスクがあるということです。これは判断が難しいケースです。
NNHが小さいほど危険、これが基本です。
こうした比較を素早く行うために、「NNT.com」(thennt.com)という海外の医師向けデータベースが存在します。主要な薬剤・介入のNNT/NNHを集積しており、英語ですが視覚的に整理されていて参照しやすいリソースです。
The NNT – 主要薬剤・介入のNNT/NNHデータベース(英語)
NNTは非常に便利な指標ですが、使い方を誤ると臨床判断を歪める危険があります。医療従事者が特に注意すべき落とし穴が3つあります。
落とし穴①:「NNTが小さい=その患者に必ず効く」という誤解
NNTはあくまで集団レベルの確率です。NNT=5でも、目の前の患者がその「恩恵を受ける1人」に該当するかどうかはわかりません。個別化医療の観点では、NNTはあくまで参考値です。患者の背景リスクや価値観と照らし合わせることが必要です。
落とし穴②:相対リスク(RR)とNNTの混同
「この薬はリスクを50%減らします(RRR=50%)」という説明と「NNT=200」が同じ試験から出ることがあります。ベースラインリスクが0.1%の場合、50%減らしても0.05%にしかならず、NNT=2000になるからです。ARRが本当に意味のある数値かを確認することが重要です。
意外ですね。
落とし穴③:複合アウトカムによるNNTの操作
RCTでは「死亡+入院+再発」を複合アウトカムとして設定することがあります。この複合アウトカムに対するNNTは小さく見えやすいですが、内訳を見ると死亡や重篤なアウトカムへの効果は限定的なケースもあります。論文を読む際は必ず個別アウトカムのNNTを確認する習慣が重要です。
これが原則です。
EBMの基礎教育においてNNTの正しい解釈が重視されているのは、こうした誤用が実際の処方行動に影響するからです。日本でもEBMワークショップや薬剤師・医師の生涯学習プログラムでNNTが頻繁に取り上げられています。
Mindsガイドライン作成マニュアル – エビデンスの強さとNNTの活用(日本医療機能評価機構)
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