医療現場で「パレイドリアテスト 点数」と言うと、一般的な認知機能検査のような“総合点”を想像されがちですが、運用の核はむしろ「パレイドリア反応数(=存在しない顔や意味を“ある”と見誤った回数)」です。
特にノイズ版は、曖昧な刺激(白黒ノイズ)に対して「顔があるかどうか」を問うことで、視覚の誤認(錯視)を人為的に誘発し、幻視に近い現象を“その場で”可視化する意図を持ちます。
このとき点数が高い=単純に「悪い」ではなく、患者の訴え(幻視・誤認の頻度)や周辺症状(注意・遂行機能、睡眠、薬剤、視機能)とセットで意味が立ち上がります。
点数(反応数)の読み方で、臨床的に押さえたい軸は次の通りです。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/049cd1fb6c9d1db4ffe24680d5ee5d25626271a4
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/de1a1019d8dd8c34d2afe9a1270709b1ebaa1130
また意外と重要なのが、点数を「患者の失敗」ではなく「症状の表出」として扱う姿勢です。検査で不安・羞恥が強まると、以後の問診で幻視を話さなくなることもあります(特に“わかっているけど怖い”“恥ずかしい”タイプの訴え)。点数運用は、チームでの説明の仕方まで含めて設計した方が安全です。
標準化の議論では、パレイドリアテストを「風景版(風景叙述課題)」と「ノイズ版(ノイズ-顔課題)」の2系統として整理し、それぞれの採点方法を検討した報告があります。
この枠組みでは、風景版は刺激枚数を縮減し、採点は「パレイドリア反応のあった枚数」を反応として数える運用に改めた、と明記されています。
ノイズ版は、40枚のうち8枚が“顔入り”のプライマー刺激で、採点の母数はそれを除いた32枚(顔が入っていないのに“ある”と言った誤反応)を基本にする、という考え方が示されています。
さらに、両者の反応数合計を「パレイドリアスコア」として扱い、鑑別や妥当性検討に利用しています。
報告では、パレイドリアスコアの級内相関係数(ICC)が0.82とされ、検査としての再現性の一つの目安が提示されています。
また、ROC解析として「パレイドリアスコアのカットオフを5以上」とした場合にDLBとADの鑑別で感度84%、特異度84%という数字が示されています。
ここで現場向けに強調したいのは、点数の作り方が一通りではない点です。施設で使っている刺激セット、実施手順(呈示時間、練習、教示)、採点ルール(誤反応の定義、母数の扱い)が違うと、同じ「点数」でも臨床的意味がズレます。
したがって、運用導入の際は、①どの版を使うか、②「点数」を反応数で記録するか、合計スコアにするか、③プライマーや顔入り刺激をどう扱うか、を院内で固定し、記録様式(カルテ文言)まで合わせるのが事故予防になります。
参考:パレイドリアテストの標準化(風景版・ノイズ版・パレイドリアスコア、採点の母数やカットオフの考え方)
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2014/143091/201418005A_upload/201418005A0010.pdf
DLBは高齢者の認知症の約10~30%を占め、幻視は中核的特徴の一つで、70%以上に認められる頻度の高い症状とされています。
一方で、短い診察の場で医療者が“幻視が出ている瞬間”に立ち会うのは稀で、介護者への質問票は観察・判断に依存して過小評価につながることが指摘されています。
このギャップを埋める発想として、幻視に類似した特徴を持つ錯視(パレイドリア)を誘発し、患者から直接的に“幻視に近い現象”を引き出すのがパレイドリアテストの立ち位置です。
点数(反応数)を鑑別に使う場合、考え方は「診断の決定打」ではなく「赤旗(red flag)」「状況証拠」の積み上げです。
つまり「点数が高い=DLB確定」ではなく、①幻視や誤認妄想、②認知機能の変動、③パーキンソニズム、④RBDなどの臨床特徴、⑤画像やバイオマーカー、⑥薬剤過敏性などと、同じ文脈で点数を位置付けるのが安全です。
実務上のコツとして、点数を説明する言い回しを工夫すると問診の質が上がります。例えば「検査で“顔が見えやすい状態”が少し出ました。普段も、壁の模様やハンガーが人に見えることはありませんか?」のように、否定されやすい症状を“体験の言語化”に変換できます。
ノイズパレイドリアテスト(NPT)は日本で広く使われ、パレイドリア反応(誤って顔を見出す反応)を数として扱う形式が明確に記載されています。
PDとAPSを比較した研究では、PD群とAPS群のパレイドリア反応の中央値はいずれも0ですが、PD群の方が反応が多い傾向(p=0.077)があり、分散が大きい(最大20)ことが示されています。
また、NPTでPDとAPSを識別する際、最適カットオフを2/3とした場合の感度25.7%、特異度100%という数字が提示され、「APSを除外する赤旗」的な使い方が議論されています。
臨床で“意外に効く”のは、点数を単体で見るより、関連因子と束ねて読むことです。
参考)浅谈利用点云数据生产DEM的方法
このあたりは、DLB領域の文脈だけでなく、PD領域でも「点数=幻視の話題を立ち上げる検査」「点数が高いときはAPSよりLewy body病理を疑う補助線」として使える、という点が実務上のメリットです。
ただし同研究でも、感度が低いためPDの診断マーカーとしては不適で、薬剤影響やサンプルサイズなど限界が明記されています。
参考:NPTの実施手順(40枚、顔入り8枚、反応分類)と、点数(反応数)の臨床的読み方(カットオフ2/3、特異度など)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10986643/
検索上位の解説は「点数の意味」「DLB鑑別」「やり方」に寄りがちですが、実装で一番つまずくのは“点数の置き場所”です。ここでは、医療従事者向けに運用設計の観点で整理します(この章は現場実装の独自視点です)。
まず、記録フォーマットを固定します。おすすめは、自由記載だけにせず、最低限次を並べて残すことです。
次に、患者・家族への説明テンプレを作ります。DLBでは幻視が中核的特徴である一方、本人が話したがらない、家族が「そんなはずない」と否認する、というズレが起きます。
このとき「点数が高い=嘘をついている/間違えた」ではなく、「脳の情報処理のクセとして、曖昧な模様を“意味あるもの”に結び付けやすい状態が出ている」と説明すると受け入れられやすいです。
さらに、ケアの指針(否定・訂正しない等)に接続できると、検査が“診断のためだけ”で終わらず、対応改善に直結します。
最後に、多職種共有の観点です。DLBは全身病(自律神経症状など)としての側面も語られ、転倒リスクや薬剤過敏性など、点数以外の危険因子とセットで管理する必要があります。
パレイドリアテストの点数が高い患者は、①環境調整(照明、影、模様の多い壁紙など)、②夜間せん妄・睡眠の評価、③服薬調整の検討、④介護者教育、といったチーム課題を“見える化”するトリガーになり得ます。
点数を「神経心理のスコア」から「ケアプランの起点」へ翻訳できると、検査の費用対効果が一段上がります。
参考:ノイズパレイドリア・テストが“幻視の代用尺度”として客観的評価に使えること、DLBの症状整理(前駆症状や鑑別の要点)
https://mcd.akita-rehacen.jp/cms/wp-content/uploads/2020/05/ninchidayori_202001.pdf