DAS28で寛解と判定された患者の骨破壊が進行することがあります。
SDAI(Simplified Disease Activity Index)は、関節リウマチ(RA)の疾患活動性を数値化するための指標です。「エスダイ」と読み、DAS28より計算が単純で、かつDAS28より厳しい寛解基準として位置づけられています。
SDIAの計算式は以下のとおりです。
| 構成要素 | 内容・単位 | 備考 |
|---|---|---|
| 圧痛関節数(TJC) | 28関節を触診 | 押して痛い関節の数 |
| 腫脹関節数(SJC) | 28関節を触診 | 腫れている関節の数 |
| 患者VAS | 10cm のVASスケール(0〜10) | 患者の全般的体調評価 |
| 医師VAS | 10cm のVASスケール(0〜10) | 医師による全般評価 |
| CRP | mg/dL | 血液検査値 |
$$\text{SDAI} = \text{TJC} + \text{SJC} + \text{患者VAS} + \text{医師VAS} + \text{CRP(mg/dL)}$$
5つをそのまま足し算するだけです。DAS28のように平方根や自然対数は不要なので、暗算でも算出できます。これが使いやすい。
ただし、VASの単位はDAS28の「100mm VAS」ではなく「10cm VAS(0〜10)」です。ここが最も多いミスポイントで、100mm VASをそのまま入力すると数値が10倍に膨れ上がり、寛解どころか高疾患活動性と誤判定するリスクがあります。
CRPの単位はmg/dLで統一してください。mg/Lで誤入力すると数値が10分の1になり、実際より低い活動性と誤判定する恐れがあります。CRPとVASの単位確認が基本です。
参考:SDIAの算出方法と各評価基準の詳細(リウマチ専門医による解説)
DAS28、SDAI、CDAIの算出方法|東京のリウマチ専門医(湯川リウマチ内科クリニック)
「DAS28で寛解が出ているから大丈夫」と判断していませんか?これは注意が必要です。
2011年、ACR(米国リウマチ学会)とEULAR(欧州リウマチ学会)は共同で新しい寛解基準を発表しました。その際、DAS28の寛解基準は「甘すぎる」として正式な寛解基準から除外され、SDAI寛解(≦3.3)とBoolean寛解が採用されました。
理由は明確です。DAS28では腫脹関節が3〜4ヵ所あっても寛解(<2.6)と判定されることがあり、寛解と判定された症例でも骨破壊が進行するケースが複数報告されていました。
| 評価指標 | 寛解基準 | 寛解達成率の目安 |
|---|---|---|
| DAS28(CRP) | <2.3 | 40〜50%程度 |
| SDAI | ≦3.3 | 28〜40%程度 |
| CDAI | ≦2.8 | 28〜40%程度 |
| Boolean | 4項目すべて≦1 | 21〜31%程度 |
慶應義塾大学の金子先生の報告では、1,400人のRA患者において、DAS28寛解は48%に達したのに対し、SDAI・CDAI寛解は約40%と8ポイント低くなっていました。京都大学のKURAMAコホートでも、DAS28寛解50.0%に対してSDIA寛解は28.6%と、約半数近い差が生じています。
つまり、DAS28で「寛解」と評価されていた患者の一部が、SDAI基準では「寛解に達していない」ということです。骨破壊を防ぐにはSDIA/CDAI寛解以上が必要という見解も示されています。この差は大きいですね。
東大病院リウマチ内科でも「骨破壊を防ぐにはSDAI/CDAI寛解以上を要する」と明示されており、日常臨床においてSDIAを積極的に使う理由がここにあります。
参考:SDAI・CDAI寛解とDAS28寛解の位置づけを解説(東大病院)
関節リウマチの評価|東京大学医学部附属病院アレルギーリウマチ内科
「SDIAを使いたいが、当日の採血結果が間に合わない」という状況は、外来診療でよくある悩みです。これが条件になります。
SDIAの計算にはCRP値が必須のため、採血後の結果が診察中に参照できるかどうかが使い分けの鍵です。
CDAI(Clinical Disease Activity Index)はSDIAからCRPを除いた指標で、計算式は以下です。
$$\text{CDAI} = \text{TJC} + \text{SJC} + \text{患者VAS} + \text{医師VAS}$$
CDAIの寛解基準はCDAI≦2.8で、SDAI寛解(≦3.3)よりわずかに厳しい設定になっています。血液検査なしで診察室でその場で算出できるのが最大の利点です。これは使えそうです。
ただし注意すべき点があります。SDIAもCDAIも、低疾患活動性の判定においてはDAS28より緩くなる傾向があります。慶應大の金子先生のコメントにあるように、SDAI・CDAIは比較的容易に「低疾患活動性」を達成してしまいます。T2Tで「寛解が難しければ低疾患活動性を目標にする」とされている場合、DAS28の低疾患活動性(2.3≦DAS28<2.7)のほうが実際には厳しい基準となります。各評価法の特性を理解しておく必要があります。
施設の実情に合わせて、SDAI・CDAI・DAS28のうちどれかを継続的に使用することが重要で、複数指標を毎回変えることは避けるべきです。
参考:SDAI・CDAI・DAS28それぞれの寛解基準の比較と特性
DAS、SDAI、CDAI|関節リウマチの疾患活動性評価指標|ナース専科
SDIAは単なる数値確認ツールではありません。T2T(Treat to Target=目標達成に向けた治療)戦略の中心的ツールとして機能します。
T2Tとは、糖尿病でHbA1c 6.9%未満、高血圧で140mmHg未満という数値目標を設定して治療するのと同様に、RAでも具体的な数値目標(寛解または低疾患活動性)を定め、1〜3ヵ月ごとにSDIAなどの複合指標で評価し、未達成なら治療を変更していく戦略です。
T2Tにおける治療アルゴリズムの流れは以下のとおりです。
2001年当時、RAの寛解達成率はわずか7.8%でしたが、2021年には60.8%にまで急増しています(慶応大学研究)。この飛躍的な改善は、生物学的製剤の普及とT2T戦略の徹底によるものです。つまり、SDIAを含む疾患活動性評価が治療結果に直結しているということです。
また、医師と患者のVAS評価に乖離が生じやすい点も重要な知識です。患者VASは腰痛やシェーグレン症候群による口渇など、RA以外の症状が混入しやすいため、「今の関節の状態を評価してください」と明確に説明してから記入してもらう工夫が必要です。患者への説明方法の工夫が問われます。
参考:T2Tリコメンデーションの概念と実践ガイド
T2T|関節リウマチ治療(日本リウマチ財団)
SDIAの計算は足し算だけですが、28関節の触診記録とVASの記入をすべて手動でこなすのは、外来診療の中では意外に時間がかかります。計算ツールを使うと効率が上がります。
現在、医療従事者が活用できる計算ツールとしては以下が代表的です。
ツールを使う際にも、VASの単位(0〜10cmスケール)とCRPの単位(mg/dL)の確認は欠かせません。入力値が正しければ計算は一瞬です。
また、患者側にも活動性の変化を視覚的に見せることが重要です。「あなたのリウマチレポート」として経時的なSDIAグラフを渡している施設では、患者自身が治療の効果を実感しやすく、治療継続率の向上にもつながると報告されています。
さらに、SDIAが急に悪化した場合の確認ポイントとして、以下を看護師・コメディカルも共有しておくと実践的です。
SDIAの数値変化は、治療効果だけでなく患者の生活背景をアセスメントするきっかけになります。数値だけ見ていても不十分ですね。外来での短い問診でも「前回より悪化している場合、何かありましたか」と一言聞くことで、潜在的な問題を早期に拾えます。
参考:SDIAをはじめとする複合指標の計算ツールと電子カルテ連携
リウマチ計算機(BoneTech)|DAS28・SDAI・CDAI・Boolean寛解基準の算出