リーメンビューゲルで整復できなくても、牽引療法で97%が治ります。
乳児健診では、股関節の開排制限(両膝を立てた状態から足を開くと十分に開かない)や、股関節を動かしたときの「カクッ」というクリック感が脱臼を疑う重要なサインです。 これらは医師が診察で確認できますが、確定診断には画像検査が必要になります。 u-tokyo-ortho(http://www.u-tokyo-ortho.jp/outpatient/disease/children_01.php)
画像検査には超音波とレントゲンの2種類があり、使い分けが重要です。 生後4ヶ月頃までは股関節がほぼ軟骨でできているため、超音波検査が診断に適しています。一方、生後6ヶ月を過ぎると骨化が進むため、レントゲン検査が有効になります。 月齢に合わせた検査法を選ぶことが正確な診断につながります。 fuji-kodomo(https://www.fuji-kodomo.jp/chil-sick/ddh/)
その他、おむつ交換時に片側の足だけ開きにくい、太ももの皮膚のシワが左右非対称といった保護者からの訴えも見逃せません。こういうサインが複数重なるほど、脱臼の可能性は高まります。当院(滋賀県立小児保健医療センター)などでは確定診断を超音波断層像で行うことを標準としており、出生児全員に1ヶ月健診時の超音波検査を実施している病院もあります。 pref.shiga.lg(https://www.pref.shiga.lg.jp/mccs/shinryo/sekegeka/shikkan/107421.html)
参考:乳児健診における股関節脱臼二次検診の診断・治療指針(内閣府すこやか21)
乳児健康診査における股関節脱臼二次検診の手引き(PDF)
発見された月齢によって、治療の内容と負担はまったく異なります。これが基本です。 早ければ「おむつの当て方指導のみ」で対応できるケースもあり、月齢が上がるほど侵襲的な治療が必要になっていきます。 fuji-kodomo(https://www.fuji-kodomo.jp/chil-sick/ddh/)
以下の表は月齢別の治療方針の目安です。 jpoa(https://www.jpoa.org/news/topics/1585/)
| 発見月齢 | 主な治療法 | 整復率・特徴 |
|---|---|---|
| 〜2ヶ月 | おむつ・抱き方指導 | 骨頭が柔らかく自然整復しやすい |
| 3〜7ヶ月 | リーメンビューゲル装具(外来) | 整復率70〜85%、入院不要 |
| 1〜3歳 | 入院+牽引療法(OHT法など) | 整復率97%、入院3〜6週間+ギプス固定6〜8ヶ月 |
| 4歳以降 | 観血的整復術・骨切り術 | 骨盤・大腿骨の骨切りを要することも |
生後6ヶ月以内に発見できれば、入院を必要とする治療はほぼ回避できます。 逆に1歳以降になると、約2ヶ月の入院牽引療法が必要になり、赤ちゃんにとっても家族にとっても大きな負担となります。 早期発見の重要性は数字が示しています。 jpoa(https://www.jpoa.org/news/topics/1585/)
参考:日本整形外科学会・日本小児整形外科学会による先天性股関節脱臼の解説
赤ちゃんの股関節脱臼 —正しい知識と早期発見のために(日本小児整形外科学会)
リーメンビューゲルは、肩から足にかけて装着するベルト型の装具で、股関節をM字型(屈曲・外転位)に保持することで脱臼した骨頭を自然に整復させる治療器具です。 ドイツで開発され、日本では1970年代に鈴木良平先生が導入・普及させた歴史ある治療法です。 doctor-nabi(https://www.doctor-nabi.com/babydislocation-brace-therapy/)
装具装着中の主な管理ポイントは以下のとおりです。
tmhp(https://www.tmhp.jp/shouni/section/surgery/orthopedics-treatment.html)
また、装具のベルト調整が不適切な場合、骨頭への圧力が過剰になるリスクがあります。フォローアップのタイミングと画像評価を組み合わせた管理が、治療成績を左右します。これは必須です。
参考:リーメンビューゲル治療の詳細なプロトコル
リーメンビューゲル(Rb)治療マニュアル(日本小児整形外科学会 PDF)
リーメンビューゲルで整復できなかった場合、または発見が1歳以降になった場合には、入院での牽引療法が次のステップになります。 OHT法(開排位持続牽引整復法)は、まず下方・上方・外側の順に牽引を行い、固くなった股関節周囲の軟部組織を徐々にほぐしてから整復に持っていく方法です。整復率は約97%と高く、1〜3歳の時期なら手術を回避できることが多いです。 jpoa(https://www.jpoa.org/news/topics/1585/)
しかし、4歳以降まで発見が遅れた場合は、牽引のみでの整復が難しくなり、手術が必要になります。 主な術式として以下が挙げられます。 kcmc.kanagawa-pho(https://kcmc.kanagawa-pho.jp/diseases/kokansetsudakkyu.html)
risei-kai.or(https://risei-kai.or.jp/maehara-geka/disease/congenital-hip-dysplasia/)
kcmc.kanagawa-pho(https://kcmc.kanagawa-pho.jp/diseases/kokansetsudakkyu.html)
kcmc.kanagawa-pho(https://kcmc.kanagawa-pho.jp/diseases/kokansetsudakkyu.html)
ソルター術後は術後1〜2日で強い痛みが生じますが、1週間以内には和らぎ、入院期間は約2週間です。 痛みは一時的です。術後は股関節の発育・形成状態を長期にわたりフォローする必要があり、先天性股関節脱臼の既往を持つ患者は成人後に変形性股関節症を発症するリスクが約3〜5割あります。 これは見落とせないリスクです。 tokyo-ortho(https://www.tokyo-ortho.jp/blog/%E5%85%88%E5%A4%A9%E6%80%A7%E8%82%A1%E9%96%A2%E7%AF%80%E8%84%B1%E8%87%BC%E3%81%AF%E5%B0%86%E6%9D%A5%E3%81%AE%E5%A4%89%E5%BD%A2%E6%80%A7%E8%82%A1%E9%96%A2%E7%AF%80%E7%97%87%E3%81%AB%E3%81%A9%E3%81%86/)
参考:先天性股関節脱臼と将来の変形性股関節症リスクについて
先天性股関節脱臼は将来の変形性股関節症にどう影響するの?(東京整形外科クリニック)
先天性股関節脱臼の治療後に「整復できた=完治」と考えるのは、実は早計です。脱臼は整復されても、臼蓋(骨盤側のソケット部分)が十分に発育しない臼蓋形成不全が残存するケースがあるからです。 臼蓋形成不全は、骨頭が完全に覆われず関節への応力が集中し続けることで、成人後の変形性股関節症へと進展するリスクを高めます。 tokyo-ortho(https://www.tokyo-ortho.jp/blog/%E5%85%88%E5%A4%A9%E6%80%A7%E8%82%A1%E9%96%A2%E7%AF%80%E8%84%B1%E8%87%BC%E3%81%AF%E5%B0%86%E6%9D%A5%E3%81%AE%E5%A4%89%E5%BD%A2%E6%80%A7%E8%82%A1%E9%96%A2%E7%AF%80%E7%97%87%E3%81%AB%E3%81%A9%E3%81%86/)
リーメンビューゲル治療終了後も、臼蓋の発育が完了する2〜3歳ごろまでは定期的な画像フォローが必要です。 「装具が外れた=終わり」ではありません。発育状況によっては装具の再装着や、ソルター骨盤骨切り術などの追加手術を検討することになります。 fuji-kodomo(https://www.fuji-kodomo.jp/chil-sick/ddh/)
医療従事者が保護者に伝えるべき重要なポイントをまとめます。
また、先天性股関節脱臼の発生率はかつて約2%と高率でしたが、正しい抱き方(M字型を保つ)やおむつの当て方の普及により、現在は大幅に低下しています。 予防教育の継続が発生率をさらに下げる鍵となります。いい傾向ですね。 pref.shiga.lg(https://www.pref.shiga.lg.jp/mccs/shinryo/sekegeka/shikkan/107401.html)
参考:国立成育医療研究センターの小児整形外科の取り組み
整形外科 診療内容(国立成育医療研究センター)