心臓収縮期拡張期の基本機能解説

心臓の収縮期と拡張期の基本的なメカニズムから、血圧形成、心周期の詳細な仕組みまで、医療従事者向けに包括的に解説。心臓の効率的な機能を理解することで、より良い患者ケアが可能になるのでしょうか?

心臓収縮期拡張期の基本

心臓収縮期拡張期の核心要素
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収縮期の仕組み

心室が収縮し血液を全身に送り出す重要な期間

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拡張期の役割

心室が弛緩し血液を心房から受け入れる充満時期

心周期の調節

電気刺激による精密な心拍コントロールシステム

心臓収縮期の詳細メカニズム

心臓の収縮期は、心室が収縮して血液を心臓から送り出す重要な期間です。この収縮期は、等容性収縮期と駆出期の2つのフェーズに分けられます。
等容性収縮期では、心室圧が急激に上昇し、房室弁が閉鎖されますが、大動脈弁はまだ開放されていない状態が続きます。この時期は非常に短時間ですが、心室内圧力が大動脈圧を上回るまでの重要な準備段階となります。
駆出期は、心室圧が大動脈圧よりも高くなることで大動脈弁が開放し、心室から動脈系への血液駆出が始まる時期です。この期間中、左心室は約70mlの血液を一回の収縮で拍出します。これを一回拍出量(stroke volume)と呼び、心拍出量を計算する際の基本単位となります。
興味深いことに、個々の心筋細胞は約15%の短縮と約8%の直径増加しか示さないにも関わらず、左心室壁は30-40%まで厚くなります。これは心筋の複雑な構造的再配列によるもので、心臓の驚異的な効率性を示しています。

心臓拡張期の充満プロセス

拡張期は、心室の弛緩と充満が起こる期間で、大動脈弁の閉鎖とともに開始されます。この期間は等容性弛緩期と充満期に細分化されます。
等容性弛緩期では、心室が弛緩を開始しますが、心室圧がまだ心房圧よりも高いため、房室弁は閉鎖されたままの状態が続きます。心室圧が心房圧以下に下降すると房室弁が開放し、心室への充満が開始されます。
充満期は拡張期の大部分を占める重要な時期です。心房から心室への血液流入が円滑に行われるよう、心房収縮と心室収縮の間には適切な時間間隔が設けられています。心電図上のP-Q時間がこの関係を示しており、医療従事者にとって重要な指標となります。
心拍数が75/分の場合、収縮期は通常250-300msecですが、心周期の約3分の2(500-550msec)は拡張期充満時相です。これは心室への十分な血液充満を確保するために必要な時間配分と言えます。

心臓収縮期における血圧形成機序

収縮期血圧は、左心室の収縮期に一致してみられる最高血圧値を示します。心臓が収縮して血液を全身に送り出すときにかかる圧力のため、「上の血圧」とも呼ばれています。
心臓から送り出された血液により、肺以外の全身に酸素が運び届けられます。この血液拍出により動脈壁が押し広げられ、その圧力が収縮期血圧として測定されます。左心室の一回の収縮で、約70ml程度の血液が大動脈に拍出されることで、この圧力変化が生じます。
医療現場では、収縮期血圧の値は心臓の収縮機能を評価する重要な指標となります。心拍出量は一回拍出量×心拍数で計算され、正常な心機能では心拍数の増大に伴い心拍出量も増大します。

心臓拡張期における血圧維持システム

拡張期血圧は、心臓に血液をため込んでいるときの血圧で、最低の血圧値となり「下の血圧」と呼ばれます。この拡張期血圧の形成には、興味深いメカニズムが関与しています。
心臓が全身に送り出した血液は、最終的に肺を経由して再び心臓に戻ります。その際、心臓は一時的に血液をため込むため拡張します。この間、心臓から出てすぐの血管である大動脈が、押し広げられた状態からゆっくりと収縮することで全身の血圧が保たれます。
拡張期血圧を作り出しているのは、主に末梢血管の抵抗です。血管の弾性や血管壁の状態が拡張期血圧に大きく影響するため、動脈硬化などの血管疾患の評価において重要な指標となります。

心臓収縮期拡張期の病態生理学的意義

心周期における収縮期と拡張期のバランスは、心臓の効率的な機能維持において極めて重要です。しかし、病的状態では様々な異常が生じることがあります。

 

心拍数が極端に増加した場合(例:180/分)、全心周期は約330msecまで短縮します。このような頻拍状態では拡張期が著しく短縮し、心室充満が制約されるため、心拍出量が制限される結果となります。R-R間隔が極端に短くなると、拡張時間が極度に短くなり、左室への血液充満が不十分となって本来の血液拍出ができず、血圧低下を招くことがあります。
スターリングの心臓の法則によれば、拡張期に心室に流入する血液量が増加して心室が血液によって充満し、心室壁が伸されると、その充満度に応じて心室筋の収縮力も増大して拍出量を増します。しかし、拡張終期容積が過度に拡張したり、心筋の収縮力が低下した場合には、心拍出量は逆に低下してしまいます。
心室中部閉塞性肥大型心筋症のような稀な疾患では、心尖部心室瘤を合併し、時に心室性不整脈によって致命的になる場合があります。このような病態は、正常な心周期の維持に重大な影響を与えるため、医療従事者は詳細な病態理解が求められます。
心エコードプラ法による心不全診断では、収縮機能・拡張機能の両方を評価することが重要で、肺静脈血流心房収縮期逆流波による左室拡張末期圧の推定など、高度な診断技術が用いられています。
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