内反ストレステストだけで陰性と判断すると、後外側複合体(PLC)損傷を約40%見落とすリスクがあります。
内反ストレステストは、LCL(外側側副靱帯)損傷を評価する第一選択の徒手検査です。患者を仰臥位とし、膝関節を30度屈曲位に保持した状態で検査者が大腿骨を固定し、足関節に内反力(O脚方向への力)を加えます。 疼痛の再現や関節の異常な開大(ギャッピング)が認められれば陽性です。 oogaki.or(https://oogaki.or.jp/orthopedic-surgery/lower-limbs/lcl-injury/)
大切な手順があります。
屈曲30度と完全伸展位の2つのポジションで必ず実施することが原則です。 屈曲位のみで陽性の場合はLCL単独損傷を示唆しますが、完全伸展位でも陽性となった場合は後十字靱帯(PCL)や後外側支持機構(PLC)の合併損傷を強く疑う必要があります。 これが臨床推論における分岐点です。 fuelcells(https://fuelcells.org/topics/25697/)
テスト実施時のよくある失敗は、大腿骨の固定が不十分になることです。大腿部がぶれると、本来かかるべき内反力が分散し、偽陰性を生じさせます。「大腿骨を動かさない」という意識が条件です。
| 検査肢位 | 陽性の意味 | 疑う損傷 |
|---|---|---|
| 膝屈曲30度 | 外側ギャッピング・疼痛 | LCL単独損傷 |
| 完全伸展位 | 外側ギャッピング・疼痛 | LCL+PCL・PLC合併損傷 |
参考:内反ストレステストを含む膝外側側副靱帯の診断・評価について詳しく解説されています。
内反ストレステストは「陽性なら確定」と思われがちですが、実は感度が決して高くありません。急性期(受傷直後)の疼痛と筋緊張が強い状態では、患者が防御収縮を起こすためにテストが十分実施できず、偽陰性になりやすいという報告があります。 つまり、陰性でも損傷を否定できないということですね。 minds.jcqhc.or(https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00161_chapter3.pdf)
麻酔下で施行した徒手テストでは感度92%・特異度91%と高い値を示しましたが、新鮮損傷例では感度49%・特異度58%まで低下したという研究データがあります。 これは「受傷直後のテストは信頼性が低い」という意外な事実です。 minds.jcqhc.or(https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00161_chapter3.pdf)
実際の臨床では急性期は無理に実施しないことが基本です。 疼痛が強く検査困難な場合は、エコー検査でリアルタイムに靱帯の連続性を確認する方法が有用です。 「テストができないから分からない」ではなく、エコーで補完するという発想に切り替えることが重要です。 ozaki-s(https://ozaki-s.net/%E8%86%9D%E3%82%92%E6%8D%BB%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%81%A0%E3%81%91%E3%81%AA%E3%81%AE%E3%81%AB%E9%9D%AD%E5%B8%AF%E3%81%A0%E3%81%91%E3%81%AE%E6%90%8D%E5%82%B7%E3%81%98%E3%82%83%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%8B/)
>🔴 急性期:筋防御収縮で偽陰性リスクが高い(感度49%まで低下)
minds.jcqhc.or(https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00161_chapter3.pdf)
>🟡 亜急性期以降:テストの信頼性が向上する
>🟢 麻酔下テスト:感度92%・特異度91%と最も高精度
minds.jcqhc.or(https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00161_chapter3.pdf)
参考:ACL・MCL・LCLなど膝靱帯の徒手検査のエビデンス(感度・特異度)が整理されています。
LCL損傷で最も見逃しやすいのは、後外側支持機構(PLC)との複合損傷です。PLC損傷は交通事故などの高エネルギー外傷で生じやすく、腓骨神経麻痺を合併するケースも報告されています。 「外側の腫れ=LCL損傷だけ」という思い込みは危険です。 e-seikei(https://e-seikei.com/sports8/sports82/sports824/)
PLCの評価には、内反ストレステストに加えて以下の2つのテストが重要です。 oogaki.or(https://oogaki.or.jp/orthopedic-surgery/lower-limbs/lcl-injury/)
>🔎 External Rotation Recurvatum Test(ERRT):仰臥位で母趾を持ち上げ、外旋しながら膝蓋上部に下方向の力を加える。膝の過伸展・外旋が生じれば後外側回旋不安定性を示唆。
>🔎 後側方引き出しテスト:膝90度屈曲・外旋15度で大腿骨を固定し後方に力を加える。過剰な後側方移動が出れば後外側支持機構の損傷を示唆。
特にPCL損傷との合併は治療方針を大きく左右します。PLC損傷が単独であれば保存療法も選択肢に入りますが、十字靱帯損傷を合併した場合は一次修復術の検討が必要になります。 複合損傷のパターンを整理するために、徒手検査とMRIの組み合わせによる評価が重要です。 mol.medicalonline(https://mol.medicalonline.jp/newbunken?GoodsID=ap5orthe%2F2021%2F003402%2F004&name=0023-0031j)
参考:PLC損傷を含む複合膝靱帯損傷の評価・治療について専門的にまとめられています。
膝靱帯損傷の診かた(前十字靱帯以外)|Medical Online
テスト結果を治療に活かすためには、重症度(グレード分類)への落とし込みが必要です。LCL損傷はグレードⅠ〜Ⅲの3段階に分類されます。 fuelcells(https://fuelcells.org/topics/25697/)
| グレード | 靱帯の状態 | ストレステスト所見 | 主な治療 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ | 微細断裂(伸張のみ) | 疼痛あり・不安定性なし | 保存療法 |
| Ⅱ | 部分断裂 | 軽度の不安定性あり | 保存療法(装具) |
| Ⅲ | 完全断裂 | 著明な不安定性あり | 手術療法の検討 |
グレードⅢは見逃せません。
ストレステストで5mm以上の関節裂隙の開大が確認された場合はグレードⅢを疑い、MRI検査と合わせて合併損傷の精査が必要です。 また、外反ストレステスト(内側側副靱帯の評価)も同時に実施することで、内外側の安定性のバランスを把握できます。 これにより、複合損傷の有無と手術適応を迅速に判断できます。 apollohospitals(https://www.apollohospitals.com/ja/diagnostics-investigations/valgus-and-varus-stress-tests)
急性期の腫脹が強い場合は、エコーガイド下で靱帯の断裂部位を直接視認することも有効です。 テスト結果 → グレード分類 → MRI/エコーによる確定という流れが原則です。 yokoi-sports(https://yokoi-sports.clinic/lcl%E5%A4%96%E5%81%B4%E5%81%B4%E5%89%AF%E9%9D%B1%E5%B8%AF%E6%90%8D%E5%82%B7)
参考:LCL損傷の重症度分類と各グレードの治療方針が詳しく解説されています。
これは多くの記事では触れられていない視点です。LCL損傷の高エネルギー外傷例では、腓骨頭付近を走行する総腓骨神経の損傷が合併することがあります。 テストで靱帯の評価だけに集中してしまい、神経症状の確認を忘れるという状況は実臨床でも起こりえます。 e-seikei(https://e-seikei.com/sports8/sports82/sports824/)
具体的には、下記の神経学的所見のチェックが必要です。
>👣 足関節の背屈・足趾の伸展筋力(深腓骨神経支配)の低下
>👣 足背・第1〜2趾間の感覚障害(深腓骨神経支配域)
>👣 下腿外側の感覚障害(浅腓骨神経支配域)
腓骨神経麻痺を合併した場合、リハビリの経過や装具の選択が大きく変わります。痛いですね。
特に外側からの強打(コンタクトスポーツや交通事故)による受傷メカニズムであれば、第一診察時から神経学的評価を組み込むことが重要です。腓骨神経損傷を見逃すと、足関節の背屈障害が残存してQOLに大きく影響します。 徒手テストの後に「神経まで診た」と言えてはじめて完結した評価です。 e-seikei(https://e-seikei.com/sports8/sports82/sports824/)
参考:LCL損傷に合併する腓骨神経麻痺や後十字靱帯損傷について詳しく解説されています。