薬剤師法は昭和35年8月10日に公布された法律第146号で、薬剤師の資格や職務に関する基本的な規定を定めています。薬剤師法第1条では、薬剤師の任務を「調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するもの」と明確に規定しています。
薬剤師免許に関する規定は以下の通り分類されます。
免許取得の基本要件
絶対的欠格事由
相対的欠格事由(薬剤師法第5条)
薬剤師国家試験の受験資格は、学校教育法に基づく大学において薬学の正規の課程(6年制)を修めて卒業した者に限定されています。この6年制薬学部の要件は2006年の法改正により導入され、薬剤師の専門性向上を図っています。
厚生労働省の薬剤師法原文では、免許要件の詳細な条文を確認できます
薬剤師法では、薬剤師が遵守すべき様々な業務義務が詳細に規定されています。これらの義務は患者の安全確保と適切な薬物療法の実施を目的としています。
調剤に関する義務
薬剤師以外による調剤は原則として禁止されており、これは薬剤師法第19条に明記されています。ただし、病院・診療所においては一定の例外が認められています。
服薬指導・情報提供義務
2020年の薬剤師法改正により、継続的な服薬状況の把握と服薬指導が法的義務として明確化されました。これにより、薬剤師は調剤後も患者の薬物療法に継続的に関与することが求められています。
記録・保管義務
守秘義務
薬剤師には刑法第134条により守秘義務が課せられており、正当な理由なく業務上知り得た秘密を漏らした場合、6月以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられます。
薬剤師法違反に対する罰則は、違反の内容や重大性に応じて段階的に設定されています。これらの罰則規定は薬剤師法第5章(第29条~第33条)に詳細に規定されています。
重い罰則(1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金)
中程度の罰則(50万円以下の罰金)
軽い罰則(30万円以下の罰金)
行政処分
刑事処分とは別に、薬剤師法第8条に基づく行政処分も規定されています。
特に注目すべきは、薬剤師が麻薬中毒者となった場合や薬事に関する犯罪を犯した場合には、免許取消しの対象となる可能性があることです。
薬剤師法は社会情勢や医療技術の進歩に応じて継続的に改正されており、近年では特に対人業務の強化とデジタル化への対応が重点的に行われています。
2020年改正の主要内容
服薬フォローアップとは、調剤後も患者の薬物療法の状況を継続的に把握し、必要に応じて指導を行う業務です。これまで努力義務だったものが、法的義務として明確化されました。
オンライン服薬指導の詳細規定
2020年の改正により、テレビ電話等を使用した服薬指導が法的に認められました。ただし、以下の要件を満たす必要があります。
過去の重要な改正履歴
改正薬機法の詳細については、こちらで薬剤師が理解しておくべきポイントが解説されています
薬剤師法違反が発生した場合の処分内容は、違反の性質や重大性、再犯の有無などを総合的に判断して決定されます。この処分システムは薬剤師の職業的責任を明確化し、公衆衛生の確保を図る重要な機能を果たしています。
行政処分の種類と基準
厚生労働省の薬剤師法第8条に基づく処分は、以下の3段階に分かれています。
免許取消し
業務停止
戒告
処分による社会的影響
薬剤師法違反による処分は、当該薬剤師の職業生活に重大な影響を与えるだけでなく、所属する薬局や病院の経営にも深刻な影響を及ぼします。特に免許取消しとなった場合、薬剤師としての業務は一切行えなくなり、関連する医療機関では人員配置の見直しが必要となります。
再教育・復帰制度
業務停止処分を受けた薬剤師に対しては、処分期間中の再教育研修制度が設けられています。これにより、薬剤師としての知識・技能の向上と職業倫理の再確認が図られています。
予防策と組織的対応
薬剤師法違反を防ぐためには、個人レベルでの法令遵守意識の向上はもちろん、組織としてのチェック体制の整備が不可欠です。具体的には以下の取り組みが重要となります。
薬剤師法は薬剤師の職業的責任を明確化し、国民の健康と安全を守るための重要な法的基盤となっています。現在も医療技術の進歩や社会情勢の変化に応じて継続的に見直しが行われており、薬剤師には常に最新の法的要件を理解し、適切に業務を遂行することが求められています。