副腎腫瘍によるアルドステロン高値は、原発性アルドステロン症の約50-60%を占める主要な病型です。
副腎皮質に発生する良性腺腫(アルドステロン産生腺腫:APA)が、レニン-アンジオテンシン系の調節を受けずに自律的にアルドステロンを過剰分泌することが原因となります。腫瘍組織内では、アルドステロン合成酵素(CYP11B2)の発現が著明に増加し、正常な生理的調節機構から逸脱した状態でホルモン産生が継続されます。
腫瘍の特徴として以下が挙げられます。
済生会の原発性アルドステロン症解説 - 副腎腫瘍の詳細な病態について
副腎過形成による高値は、両側副腎皮質の球状層においてアルドステロン分泌細胞が増加する病態です。
この病型では、腫瘍形成ではなく、副腎皮質全体の機能亢進によりアルドステロン過剰分泌が生じます。過形成の発症機序には以下の要因が関与しています。
分子生物学的機序。
組織学的特徴。
過形成型の臨床的特徴として、腫瘍型と比較して高血圧は比較的軽度で、低カリウム血症の頻度も低いことが知られています。治療は薬物療法が中心となり、スピロノラクトンやエプレレノンなどのミネラルコルチコイド受容体拮抗薬が第一選択となります。
二次性アルドステロン症は、腎血流低下や体液量減少に対する生理的反応として生じるアルドステロン高値です。
原発性との重要な鑑別点は、レニン活性の動態にあります。二次性では腎血流低下により。
レニン-アンジオテンシン系の活性化。
薬剤による影響。
二次性では血中レニン活性が高値を示すため、アルドステロン/レニン比(ARR)は200未満となることが多く、原発性アルドステロン症との鑑別に有用です。
MSDマニュアル - 二次性アルドステロン症の詳細な病態と鑑別診断
アルドステロン高値の確定診断には段階的なアプローチが必要です。
スクリーニング検査。
ARR≧200(PAC:pg/ml、PRA:ng/ml/hr単位)でスクリーニング陽性と判定されます。ただし、検査前の注意点として。
検査条件の標準化。
確定診断のための機能検査。
これらの負荷試験でアルドステロンの自律性分泌が証明されれば、原発性アルドステロン症と確定診断されます。
日本内分泌学会 - 原発性アルドステロン症の診断基準と検査手順
個別化された治療戦略は、病型診断に基づいて決定されます。
片側性病変(手術適応)。
副腎静脈サンプリングで片側性が確認された場合。
両側性病変(薬物療法)。
ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬が第一選択。
治療効果の評価指標。
長期予後への影響。
適切な治療により以下の改善が期待されます。
未治療の場合、一般的な高血圧患者と比較して脳卒中、心房細動、冠動脈疾患の発症率が有意に高いことが報告されており、早期診断・治療の重要性が強調されています。