大腿四頭筋だけを毎日鍛えても、変形性膝関節症の痛みが悪化することがあります。
変形性膝関節症(以下、膝OA)は関節軟骨の変性・摩耗を主病態とし、滑膜炎・骨棘形成・軟骨下骨硬化が進行する慢性疾患です。国内の推定患者数はX線診断ベースで約2,530万人(ロコモ統計2024年)、自覚症状のある患者だけでも約1,000万人にのぼり、整形外科領域で最も遭遇頻度の高い疾患の一つです。40歳以上の有病率は55%に達するという報告もあり、理学療法士・作業療法士が日常臨床で膝OAを担当しない日はほぼないといえます。
大腿四頭筋は太ももの前面に位置する筋群(大腿直筋・外側広筋・内側広筋・中間広筋)で構成されており、膝関節を伸展させる主力筋です。膝OA患者ではこの筋力が健常者と比べて著明に低下しており、疼痛や機能障害の程度と強い相関を示すことが複数の研究で確認されています。Murakiらの研究では、男女ともに大腿四頭筋の筋力低下が膝痛と有意に相関すると報告されています。つまり、大腿四頭筋訓練は症状改善に直接つながるアプローチということです。
日本整形外科学会(JOA)の変形性膝関節症診療ガイドライン(2023年版)では、筋力強化を含む運動療法は推奨グレードA・エビデンスレベル1(高い)とされており、21件中21件の既存ガイドラインが大腿四頭筋強化訓練を推奨しています。臨床的な位置づけは非常に高いと言えます。
大腿四頭筋は膝蓋骨を安定させ、歩行・立ち上がり・階段昇降における膝折れを防ぎます。この筋が弱ると体重を支えきれず、関節面への衝撃吸収が低下し、軟骨のすり減りが進行しやすくなります。逆にいえば、適切な大腿四頭筋訓練を継続することで、疼痛軽減・歩行速度向上・ADL改善が期待できます。訓練は必須です。
参考:日本整形外科学会「変形性膝関節症診療ガイドライン(2023年版)」
日本整形外科学会:変形性膝関節症診療ガイドライン(2023年版PDF)
膝OAに対する大腿四頭筋訓練の第一歩として、等尺性収縮(関節を動かさない筋収縮)から開始するのが原則です。等尺性収縮は関節への機械的ストレスが最小限で済むため、炎症期・急性期にも適応しやすい訓練形態です。代表的な手技が「クアドセッティング」と「パテラセッティング」の2種類で、それぞれ特徴が異なります。
【クアドセッティング(Quad Setting)】
【パテラセッティング(Patella Setting)】
2つの違いを整理しましょう。クアドセッティングは膝窩にタオルを置いて「膝関節を伸ばしきる」ことに重点を置き、伸展ラグ(完全伸展困難)の改善に有効です。パテラセッティングは膝蓋骨のアライメント調整と内側広筋のVMO(Vastus Medialis Oblique)優位収縮を促す点が特徴です。どちらも痛みが強い急性期から導入できます。
段階的な負荷設定として、タオルの厚みを「バスタオル→フェイスタオル→タオルなし」と減らしていく方法が臨床的に有用です。タオルなしでクアドセッティングができれば、伸展角度の改善と筋力向上を視覚的に実感できます。これは使えそうです。
参考:パテラセッティングの実施方法とエビデンスについては以下が詳しい。
リハブクラウド:変形性膝関節症のリハビリテーション|パテラセッティングの実施法
等尺性収縮でのベースができたら、次は段階的に負荷を上げていきます。この段階的プログラムが理解できていると、患者の状態に応じた処方が格段にしやすくなります。
【フェーズ1:等尺性収縮(急性期〜亜急性期)】
クアドセッティング・パテラセッティングが中心です。関節を動かさないため滑液への刺激が最小限で、炎症を悪化させにくいのが最大のメリットです。1セット10〜15回、週2〜3回から開始します。
【フェーズ2:等張性収縮(亜急性期〜慢性期)】
SLR(Straight Leg Raise)をフェーズ2の導入として用います。仰臥位で片膝を90度に立て、もう一方の脚を股関節45度まで挙上し5秒保持→下ろすという動作です。大腿四頭筋全体を通じた収縮が得られ、股関節屈筋との協調収縮も期待できます。
【フェーズ3:荷重下訓練(慢性期・維持期)】
椅子からの立ち座り訓練(スクワット動作)が有効です。ただし、膝を深く曲げると関節面への圧迫が急増するため、屈曲角度は50〜60度以内に抑えることが重要です。膝がつま先より前に出ないフォームを必ず確認してください。深いスクワットはダメです。
訓練頻度の目安として、JOAガイドライン2023では筋力増強トレーニングと疼痛教育を「週4日・12週間」実施した群で有意な疼痛軽減と機能改善が確認されています。ただし「週4日」は目安であり、翌日に関節痛や筋肉痛が残る場合は量を減らすことが原則です。週2〜3回から始めれば十分です。
有酸素運動との組み合わせも重要です。ウォーキングなど低衝撃の有酸素運動を1回20〜30分・週2回以上行うと体重管理にもつながり、膝への荷重負担を間接的に軽減できます。体重1kg減量で膝関節への負担は歩行時に最大約4kg軽減されると言われています。荷重管理と筋力強化は両輪です。
参考:理学療法介入の詳しいプロトコルは以下が参考になります。
日本理学療法士協会:運動療法の種類と量が変形性膝関節症の疼痛と能力障害に与える影響(メタ回帰分析)
「大腿四頭筋を鍛えれば膝OAは改善する」という認識は、医療従事者の間でも根強くあります。ところが、大腿四頭筋を単独で過剰に強化することが、逆に膝蓋大腿関節(PFJ)への圧迫を増加させ、疼痛を悪化させるリスクがあることは、意外と知られていません。
大腿四頭筋が過剰に収縮すると、膝蓋骨が大腿骨に強く押し付けられます。膝蓋大腿関節の軟骨は加重に弱く、すでに変性が進んでいる膝OA患者ではこの圧迫が痛みの直接的なトリガーになることがあります。摩擦が増えて悪循環に入ります。
また、ハムストリングスが弱化していると、大腿四頭筋優位の状態となり、膝関節の前後バランスが崩れます。Neurosensorimotor controlの観点では、大腿四頭筋とハムストリングスの共同収縮(Co-contraction)が膝関節の動的安定性を担っており、そのバランスが崩れると関節面への非生理的な負荷が増大します。つまり、ハムストリングスの強化は単なるオプションではなく、必須の訓練です。
さらに見落とされやすいのが中臀筋・大臀筋の役割です。中臀筋が弱化すると歩行中に骨盤が患側に傾き(Trendelenburg徴候)、膝への内転モーメントが増大してO脚変形を助長します。中臀筋の強化は膝の外反ストレスを緩和し、O脚への悪化防止につながります。膝だけを見ていてはダメということです。
推奨する協調訓練メニュー(例)
これらは関節への負担が少なく、痛みのある患者でも取り組みやすい種目です。患者指導のツールとして積極的に活用してください。
Nピラティス:変形性膝関節症で大腿四頭筋ばかり鍛えていませんか?本当に鍛えるべき筋肉とは
臨床でしばしば見られる問題があります。それは、患者がクアドセッティングを「形だけやっている」状態になりやすいということです。手を太ももに当てて筋肉が硬くなる感覚を確認しながら行わなければ、訓練の質が大幅に落ちます。特に高齢の膝OA患者では、筋収縮の体性感覚が鈍化していることが多く、「太ももに力を入れる」という感覚そのものが薄れているケースがあります。感覚の再教育が条件です。
この問題への対策として有効なのが、「触覚バイオフィードバック」です。具体的には、患者自身の手または施術者の手を大腿前面に置き、収縮時に筋腹が硬くなる感覚をリアルタイムで確認しながら行わせます。膝蓋骨が近位方向に動くことも視覚的に確認させると、運動学習が促進されます。1回の訓練の質が10倍変わります。
また、内側広筋(VMO)の優位収縮を促すために、クアドセッティング実施中につま先をやや外側に向けた状態(股関節軽度外旋位)で行う方法もあります。内側広筋は膝蓋骨の内側安定性に特に重要であり、外側広筋のみが優位になる訓練では効果が半減します。外旋位でのセッティングが原則です。
ホームエクササイズとして定着させることも、長期的な疼痛管理に直結します。患者にとってわかりやすいのは「テレビを見ながら1回5秒×10回」という設定です。日常のルーティンに組み込む形で指導すると、アドヒアランスが高まります。継続が最も難しい課題ですが、短く・明確な目標設定が解決策になります。
訓練効果のモニタリングには、膝伸展筋力の定量的評価(ハンドヘルドダイナモメーター:HHD)が有用です。HHDで健側比80%以上を一つの目標値として設定することで、患者・医療者双方が進捗を共有しやすくなります。数値化すると患者のモチベーションも上がりますね。
足立慶友整形外科:変形性膝関節症の筋力トレーニング|効果的な方法とエビデンス
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