ステージ4の患者が「歩行可能」と記録されていても、介助なしでは5m歩けない場合があります。
機能障害度分類は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の運動機能が障害されていく過程を段階的に表した分類です。現在、国内で最も広く使われているのは厚生省筋ジストロフィー研究班が作成した「新分類」で、ステージ1からステージ8までの8段階で構成されています。 neurology-jp(https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/dmd_03.pdf)
各ステージの内容は以下の通りです。 neurology-jp(https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/dmd_03.pdf)
| ステージ | 内容 | サブ分類 |
|---|---|---|
| 1 | 階段昇降可能(手の介助なし・手の膝おさえ) | 1a:手の介助なし/1b:膝おさえ使用 |
| 2 | 階段昇降可能(手すり使用) | 2a:片手手すり/2b:片手手すり+膝おさえ/2c:両手手すり |
| 3 | 椅子からの起立可能 | サブ分類なし |
| 4 | 歩行可能 | 4a:独歩5m以上/4b:物につかまれば5m以上 |
| 5 | 四つ這い移動が可能 | サブ分類なし |
| 6 | ずり這いが可能 | サブ分類なし |
| 7 | 座位保持が可能 | サブ分類なし |
| 8 | 座位保持が不可能(臥床状態) | サブ分類なし |
ステージ1〜3は歩行が維持されており、ステージ4からは独立した歩行が困難になる移行期です。この分類は主に体幹と下肢の機能を評価するものである点が重要です。 海外で広く使われるVignos下肢機能評価スケール(10段階)と並列して理解しておくと、国際的な文献を読む際にも役立ちます。 neurology-jp(https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/dmd_03.pdf)
ステージが進むにつれて評価の難易度も上がります。関節拘縮や脊柱変形が生じると、決められた体位での評価が難しくなるためです。それが条件です。同一評価者が継続して担当することで、経時的な変化の追跡精度が高まります。 neurology-jp(https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/dmd_03.pdf)
参考:DMD診療ガイドライン2014(日本神経学会)による機能評価の推奨事項全文
日本神経学会:デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン2014 第3章「検査・機能評価」(PDF)
厚生省新分類はステージ8(臥床)で終わっています。つまり「寝たきりになった時点で評価終了」と思い込む医療従事者が少なくありません。これは大きな落とし穴です。
上肢機能障害度分類9段階の内容は以下の通りです。 neurology-jp(https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/dmd_03.pdf)
ステージ6以降はADL(日常生活動作)において食事動作やパソコン操作に直結する機能が評価対象になります。これは使えそうです。特に電動車椅子操作や書字動作の可否とも密接に関連するため、作業療法士と連携した評価が重要です。 neurology-jp(https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/dmd_03.pdf)
参考:上肢機能障害度分類の信頼性・本邦での活用に関する研究報告
医療学会誌:Duchenne型筋ジストロフィーの上肢機能障害度分類の信頼性と本邦での活用(PDF)
特に注意が必要なのは、DMDでは遠位筋力(たとえば握力)が保たれやすいという特性です。 握力検査はどの施設でも手軽に実施できますが、DMDでは進行度を反映しにくく、幼児では実際よりも低値になる傾向があります。つまり、握力だけで進行度を判断するのは危険です。 neurology-jp(https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/dmd_03.pdf)
ガイドラインでは6ヵ月ごとのMMT評価が望ましいとされています。 また、MMTが3以上の場合にはハンドヘルドダイナモメーターを用いた定量的筋力テスト(QMT)が、より客観的な評価として推奨されます。QMTは治験などの短期効果判定に特に優れていますが、機器が一般的に十分普及していないこと、進行例では測定不可となることが課題です。 neurology-jp(https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/dmd_03.pdf)
ROM(関節可動域)評価については、歩行可能期には股関節・膝関節・足関節の可動域を重点的に評価し、腸腰筋・ハムストリングス・腓腹筋の短縮度を把握することが基本です。 歩行機能喪失後は、下肢だけでなく肘・手関節・手指にも拘縮がみられ、頸部・体幹のROMも減少するため、全身的な評価の視点が必要です。自動運動と他動運動の両方を評価することが原則です。 neurology-jp(https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/dmd_03.pdf)
機能障害度分類のステージだけでは、日常生活での実際の困難度は見えてきません。そこで活用されるのが、厚生省筋ジストロフィー研究第4班PT・OT共同研究連絡会が作成した「ADL(身辺処理動作)検査表」です。 neurology-jp(https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/dmd_03.pdf)
この検査表では、排泄・更衣・入浴・整容・食事の5領域にわたって細かく評価します。たとえば食事動作では「食器を持ち上げる」「食物を細かくする」などの個別動作が評価対象です。 単に「食事自立」と記録するのでなく、代償動作の有無や環境設定の必要性まで把握できる点が大きなメリットです。 neurology-jp(https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/dmd_03.pdf)
機能障害度ステージとADL評価を組み合わせることで、住居改造の必要性・福祉用具の選定・介護量の見積もりが具体化できます。いいことですね。特にステージ7〜8(座位保持困難・臥床)の患者では、上肢機能障害度分類のステージと合わせてADL検査表を活用することで、残存機能を最大限に引き出す支援計画が立てられます。 neurology-jp(https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/dmd_03.pdf)
ステージの記録と同時にADL評価を蓄積することが、長期的なケアの質向上につながります。これが基本です。記録が連続的に残っている施設では、退行期の変化を早期に察知し、福祉用具や住環境の見直しタイミングを先手で準備できた例も報告されています。
機能障害度分類は運動機能の評価ですが、臨床ではそれ単独では全体像を把握できません。意外と知られていないのは、血清CK値がDMDでは発症初期に基準値の10〜25倍もの高値を示す一方、10歳以降は進行に伴って低下していき、末期にはほぼ正常値になるという点です。 末期に「CKが正常だから筋障害は軽い」と誤解するリスクがあります。厳しいところですね。 neurology-jp(https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/dmd_03.pdf)
また、進行例では筋量減少によりクレアチニン(Cr)が低下するため、血清Crは腎機能評価の指標として使えなくなります。 そのような場合は血清シスタチンCが腎機能マーカーとして有用で、保険上は3ヵ月に1回算定可能です。 neurology-jp(https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/dmd_03.pdf)
画像評価の面では、歩行不能となる時期から全脊柱のX線(座位・正面・側面)を定期撮影することが推奨されています。四肢や傍脊柱筋の脂肪置換が進行していると側弯が重症化しやすく、骨格筋CTやMRIを参考にすることで早期対応が可能になります。 骨折リスクの評価にはDXA(二重エネルギーX線吸収法)が用いられ、大腿骨遠位部のZ scoreが−5以下に低下すると骨折リスクが上昇するとされています。 neurology-jp(https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/dmd_03.pdf)
機能障害度分類のステージ評価は、このような全身的な検査と組み合わせることで初めて包括的なDMD管理が実現します。運動機能だけ見ていてはダメということですね。心機能については、中等度以上の進行例でBNP値が心機能障害の重症度と相関し予後予測因子となるため、定期的なモニタリングが推奨されています。 neurology-jp(https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/dmd_03.pdf)
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デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン 2014[本/雑誌] / 日本神経学会/監修 日本小児神経学会/監修 国立精神・神経医療研究センター/監修 「デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン」作成委員会/編集