エネーボ配合経腸用液は、性状が「淡褐色の懸濁液」、においが「特有の芳香」、そして味は添付文書情報として「甘い」と整理されています。
「甘い」と一言で言っても、医療者が確認すべきは“患者が感じる甘さ”と“製剤としての仕様”が一致しない場面がある点で、これは嗜好の問題というより、温度・口腔内乾燥・服薬状況など臨床側の条件で変動します。
また、添加剤として香料にバニリン、エチルバニリン、プロピレングリコールが含まれることが明示されており、香りの立ち方(結果として味の印象)に影響しうる情報として押さえておく価値があります。
味の話をする時にありがちな落とし穴は、「味が合わない」=「製剤変更」と短絡しやすいことです。
実際には、経口摂取が可能なケースでは“飲み方の設計”で改善する余地があり、例えば「1日1回」よりも「1日数回に分ける」ほうが、味覚疲労や食後のもたれ感の訴えを軽減することがあります(ただし投与計画は全身状態と総投与量の設計が前提)。
参考)http://www.hyread.com.tw/doi/10.53106/199875792022120030001
医療者向けの説明としては、次のような整理が実務的です。
エネーボは、熱量が1mLあたり1.2kcalで、1缶250mLが300kcalという設計です。
栄養成分(1缶250mL中)は、タンパク質13.5g、脂肪9.6g、炭水化物39.6gで、フラクトオリゴ糖1.7gや難消化性デキストリン3.5gなどの記載も確認できます。
さらに、タウリン45mg、L-カルニチン32mg、セレン20μg、クロム31μg、モリブデン34μgなどの微量成分が並び、一般的な“カロリーだけの栄養剤”という理解から一段深い設計であることが読み取れます。
ここで「味」と「成分」をつなぐ臨床的な観点は、患者の受け止めとして“甘さ”が気になる時、医療者側は糖質量だけでなく、総浸透圧や投与速度、下痢・悪心の背景要因も同時に考える必要がある点です。
エネーボの浸透圧は約350mOsm/Lとされており、味の印象(甘い、濃い)と「腸管の負担感」を患者が混同して訴えるケースでは、数字に基づいた切り分けが役に立ちます。
また、同じ“甘い”でも、たんぱく質の構成として分離牛乳タンパク質、濃縮乳清タンパク質、分離大豆タンパク質が含まれることが明示されています。
この手の情報は、アレルギー歴や食嗜好だけでなく、患者の「乳製品っぽい後味が苦手」といった訴えの背景推定にも使えます(最終判断は個別の臨床評価が必須)。
エネーボは「経管又は経口投与」が可能で、成人の標準量は1日1,000〜1,667mL(1,200〜2,000kcal)とされています。
経管投与の速度は、1時間に62.5〜104mL(75〜125kcal)の範囲で持続投与または分割投与が提示されています。
重要なのは投与初期で、初期量は333mL/日(400kcal/日)を目安にし、低速度(約41.7mL/時間(50kcal/時間)以下)で開始し、状態により徐々に増量する、と具体的に書かれています。
「エネーボ味が甘いから飲みにくい」という相談が来た時、経口なら“味の問題”として扱えますが、経管なら“味覚”の前に、投与速度や投与設計が症状(悪心、腹部膨満感、下痢)に影響していないかの確認が先になります。
添付文書上も、投与初期は水で希釈して投与することを考慮、とあり、味の調整というよりも、消化管の受容性を丁寧に見ながら立ち上げる思想が読み取れます。
術後投与に関しては、胃・腸管の運動機能の回復と水分摂取可能であることを確認するよう注意が書かれています。
この確認が不十分だと、患者は「味が合わない」ではなく「気持ち悪い」「お腹が張る」という体験として記憶し、結果的に(経口へ戻せる段階になっても)エネーボ味への抵抗感につながることがあります。
ここで現場向けのチェック項目を挙げます。
効能・効果としては「一般に、手術後患者の栄養保持に用いることができるが、特に長期にわたり、経口的食事摂取が困難な場合の経管栄養補給に使用する」と記載されています。
一方で、用法用量に関連する注意として「経口食により十分な栄養摂取が可能となった場合には、速やかに経口食にきりかえること」と明示されています。
さらに「臨床試験において2週間を超える時期での効果は確認されていない」という一文があり、“漫然投与を避ける”という医療安全・適正使用の観点で非常に重要です。
この「2週間」の記載は、エネーボ味の議論(飲みやすい、続けやすい)と相性が悪い情報に見えるかもしれません。
しかし、医療者向け記事としてはここが肝で、嗜好性が高く継続しやすいことは利点である一方、適応・評価・切り替え(経口食へ)を定期的に回す運用がないと、結果的に“続けられるがゆえに続けすぎる”という逆のリスクを作り得ます。
実務では、次のように「味(継続性)」と「適正使用(評価)」を並べて扱うと、チーム内で議論が噛み合いやすくなります。
検索上位の「味」記事は、どうしても「おいしい/まずい」「飲みやすい/飲みにくい」といった主観レビューに寄りがちです。
医療従事者向けに一段深掘りするなら、患者が感じるエネーボ味の“揺れ”を、温度・香料・粘度という物性と関連づけて説明できると、指導の説得力が増します。
まず香料です。エネーボには香料としてバニリン、エチルバニリン、プロピレングリコールが含まれることが明示されています。
バニラ系の香りは「甘い」と知覚されやすく、同じ糖質量でも“より甘く感じる”方向に働きやすいため、患者が「甘すぎる」と訴えた場合、糖質だけを減らす議論ではなく、飲用温度や口腔内の状態など“香りが立つ条件”の調整が先に効くことがあります。
次に粘度です。エネーボの粘度は約16mPa・s、比重は約1.1とされ、懸濁液としての性状が示されています。
粘度がある飲料は、口腔内に滞留しやすく、甘味の余韻が残りやすい一方、少量ずつ分けると受け止めやすいこともあります。
経口で摂取できる患者で「後味が残る」「口に膜が張る感じがする」といった表現が出たら、味の好き嫌いではなく、粘度と唾液量(口腔乾燥)の問題として再解釈することで、対応が具体化します。
最後に温度です。添付文書に温度の指定はありませんが、現場では“冷たいほうが甘さを感じにくい”といった一般的な体感則が患者教育として用いられることがあります(ただし嚥下機能・冷刺激の影響は個別評価が必要)。
ここでのポイントは、医療者が「味の訴え」を“栄養療法が破綻する前の早期アラート”として扱い、温度・タイミング・分割・口腔ケアなど、薬物治療以外の介入でアドヒアランスを守る設計に落とし込むことです。
臨床で使える提案例を箇条書きにします。
参考:エネーボの組成・性状(味、浸透圧、粘度)、用法用量、投与初期の注意、2週間超の効果未確認など「添付文書レベルの根拠」を確認できる
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med_product?id=00062732
参考:エネーボが1.2kcal/mLであること、BCAA強化や食物繊維・フラクトオリゴ糖配合、セレン・カルニチン配合など「製品概要」を確認できる
https://www.abbott.co.jp/our-products/enebo.html