エンシュアは「栄養を入れる」だけでなく、「腸が受け止められる形で入れる」ことが最優先です。添付文書上、経口投与は1日1回または数回に分けて投与(服用)できる設計であり、いきなり1缶を一気に飲むより、分割のほうが説明しやすい土台になります。
また開始時は、標準量の1/3〜1/2量から始め、水で約倍量に希釈(0.5kcal/mL)して投与し、状態を見て濃度と量を増やして標準量へ、という考え方が明記されています。
医療者が患者さん・家族に伝える際は、次のように“行動”に落とすと実施率が上がります。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/3a1639cc9d17877b856f8fc006f810295bfa5890
ここで意外と見落とされがちなのが、「1回量」より「単位時間あたりの負荷」です。本人は“少しずつ飲んでいるつもり”でも、10分で250mLを飲めば実質的には急速投与に近く、症状が出る人がいます(とろみや希釈が有効になる理由もここにあります)。下痢などが出たら、濃度を0.5kcal/mL程度へ下げ、改善後に速度→濃度の順で戻す、という手順も添付文書に沿って説明できます。
エンシュア・Hは高濃度タイプ(1.5kcal/mL)の経腸栄養剤で、下痢が問題になりやすい背景として「高浸透圧」「単位時間に多量」「流動性が高い」などが挙げられています。
実際、添付文書でも副作用として下痢が5%以上と記載され、下痢が出た場合は濃度を0.5kcal/mL程度に下げるなどの対応が示されています。
現場での対策は、原因に応じて“いじる変数”を分けると混乱しにくいです。
さらに、薬局系の情報では「経腸栄養剤の下痢」は組成(高浸透圧、脂質含有量)、乳糖不耐症・アレルギーなども原因となり得ると整理されています。
参考)公益社団法人 福岡県薬剤師会 |質疑応答
エンシュアは乳糖を含まない一方、牛乳たん白(カゼイン)アレルギーは禁忌であり、下痢が続く場合は“単に飲み方”だけでなく背景の見直し(既往・アレルギー・疾患)まで踏み込む必要があります。
参考:下痢の原因と対策(浸透圧・脂質・乳糖不耐症/アレルギーの整理)
公益社団法人 福岡県薬剤師会:経腸栄養剤で下痢が起こる原因と対策
「冷たいと飲めない」「甘みがつらい」など、味覚・温度の好みは継続率に直結します。エンシュアを加温する場合、未開缶のまま微温湯(30〜40℃)で行い、直火での加温は避ける、という点は公的なQ&Aでも明確です。
同じ内容は添付文書の適用上の注意にも記載されており、温める行為自体は否定されていませんが、方法と温度が重要です。
さらにメーカー説明として、未開缶でも60℃以上ではタンパク質・ビタミンの分解が考えられるため、電子レンジや直火での加温は避ける、とされています。
つまり、患者指導としては「温めてもよいが、30〜40℃の湯せん」「レンジでチンしない」「直火にかけない」をセットで伝えるのが安全です。
温度調整の工夫は、下痢対策とは別軸で効きます。
参考:加温温度と「レンジ・直火を避ける」根拠(調製法の注意点)
福岡県薬剤師会 Q&A:エンシュアリキッドを温めて飲んで良いか
飲み方の工夫で成果が出ても、保存が雑だと中断につながります(腹痛・下痢・「腐っていたかも」という不安)。添付文書では、開缶後は密閉して冷蔵庫内に保存し、48時間以内に使用すること、冷凍は避けることが示されています。
薬剤師会Q&Aでも同様に、開缶後は密閉・冷蔵し48時間以内、という基本が整理されています。
在宅ではさらに踏み込んだ運用が提案されており、家庭の冷蔵庫は開閉頻度が高いので24時間以内を目安にする、缶に口をつけたものは飲み切るか残りを廃棄する、といった現実的な注意が示されています。
この“口をつけた缶問題”は、患者さんにとっては当たり前の行動なので、説明しないと高確率で発生します。医療者は「飲み残しを取っておくなら、缶に直接口をつけずコップへ」「残りはラップ等で密閉して冷蔵」という具体策まで言語化すると事故が減ります。
実務で使える声かけ例(そのまま指導に使えます)。
検索上位の多くは「冷やす」「混ぜる」といった味の工夫に寄りがちですが、医療従事者が本当に困るのは“飲めない日が続いた時にどう立て直すか”です。添付文書には、開始時は低濃度・少量から入り、状態を見て濃度と量を増やす、という段階設計が明記されています。
これを応用すると、「飲めなかった翌日」にも使える“リセット手順”として説明できます(無理に標準へ戻さず、一段階前の濃度・量へ戻す)。
現場での行動設計(アドヒアランスの作り方)を、患者さんのタイプ別に整理します。
さらに意外に効くのが「記録の簡略化」です。1日総量だけを○×で記録し、下痢・腹痛が出た日だけメモする方式にすると、患者も家族も続きやすく、増量の判断材料にもなります(“全部記録”は続かず、結果として情報が残らない)。段階的増量という添付文書の枠組みに、生活の運用を重ねる発想です。
参考:禁忌・副作用・希釈開始など、指導で根拠として使える一次情報(添付文書)
アボット:エンシュア リキッド 添付文書(保存・加温・希釈・下痢対応など)

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