「ファンギゾンシロップをうがいで使う」という相談の多くは、実態として“含嗽(がんそう)っぽく口腔内に行き渡らせる運用”を指します。口腔内カンジダ症に対しては、交付時の注意として「舌で患部に広くゆきわたらせ、できるだけ長く含んだ後、嚥下する」よう指導する、と明確に記載されています。
ここでのキモは「ガラガラうがいで即吐き出す」よりも、「口腔内に保持して接触時間を稼ぐ」ことです。嚥下まで含めた指導が明記されている点は、患者説明で誤解が起きやすいので、医療者側で言い回しを揃えておくと混乱が減ります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11583998/
実務的には、次のように説明すると伝わりやすいです。
・🗣️「口に含んだら、舌で患部(頬の内側・舌・口蓋など)に塗り広げる」
・⏱️「できるだけ長く口の中にとどめる(数秒で吐かない)」
・🥤「最後は飲み込む(嚥下する)」
なお、本剤の承認効能は「消化管におけるカンジダ異常増殖」で、消化管からはほとんど吸収されないため「全身性真菌感染症には無効」とされています。つまり、口腔内での局所接触と、消化管内での局所作用を狙う薬という位置づけを、医療者側が押さえておくのが安全です。
参考)http://ijoir.gov.iq/ijoir/index.php/jou/article/download/193/115
ファンギゾンシロップは「うすい橙色の濃ちょうな懸濁液」とされ、使用前に十分振盪して均等な懸濁液として使用するよう指導することが明記されています。
懸濁薬は、振り方が弱いと上澄み・沈殿で濃度がぶれやすく、初回と終盤で実質投与量が変動し得ます。特に「うがい的に使う」運用では、1回量が少量になりやすく、ムラがそのまま“効きにくい体験”につながるため、服薬指導で振盪を強調する価値があります。
現場で起きがちなミスと対策を並べます。
・🌀「振ったつもり」問題:ボトル底の沈殿が残る→“音が変わるまで”しっかり振る、と具体化する。
・🥄計量スプーン/シリンジの取り違え→薬剤ごとに専用化、1回量表示を大きくする(病棟/外来ルール化)。
・🍊味・においの先入観→オレンジ様芳香・甘味の記載があるため、苦味を想定して拒否する患者には「意外と甘い」など事前情報を添える。
ちなみに、1mL中にアムホテリシンB 100mg(力価)を含有する規格であることは、他剤(ナイスタチン製剤等)と混同されやすいポイントです。薬歴や持参薬鑑別で「成分=アムホテリシンB」である点を明示すると、用量設計や相互比較がスムーズになります。
禁忌は「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」です。
副作用としては、悪心・嘔吐・食欲不振・腹痛・下痢・口内炎などの消化器症状、過敏症状(発熱、発疹、そう痒等)などが挙げられています。
医療従事者向けに強調したいのは、頻度不明ながら重大な副作用としてTEN(中毒性表皮壊死融解症)やStevens-Johnson症候群が報告されている点です。外来で「口の薬だから軽い」と見られがちな一方、皮膚粘膜障害を見逃さない説明(発疹、目の充血、口唇びらんなどで早期受診)をセットで行うと安全性が上がります。
妊婦については「有益性が危険性を上回る場合のみ投与」、授乳婦は「授乳継続/中止を検討」「ヒト母乳中への移行は不明」とされています。
吸収がほとんどない薬とはいえ、添付文書上の扱いはこの通りなので、患者背景(妊娠可能性・授乳)を確認し、疑義照会や説明文言を統一することが大切です。
参考リンク(添付文書:禁忌、副作用、適用上の注意、口腔内カンジダ症での「舌で広くゆきわたらせ、長く含んだ後に嚥下」などの根拠)
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00052579.pdf
意外とクレームにつながりやすいのが「歯の黄変」です。添付文書/IFの適用上の注意に、「一過性の歯の黄変が認められることがあるが、ブラッシングで簡単に除去できる旨指導する」と明記されています。
ここは“薬効とは別の体験価値”を左右します。特に小児や、審美意識の高い患者、矯正装置・義歯がある患者では、不安が増幅されやすいので、最初から説明しておくと中断を防げます。
説明のテンプレ例(医療者向けにそのまま使える形)。
・🦷「歯が一時的に黄色っぽく見えることがあります」
・🪥「ただし、歯みがきで簡単に落ちます」
・📆「気になる場合は、使用タイミング(就寝前など)と歯みがきの順番を調整しましょう」
また、口腔内カンジダ症の背景には、口腔乾燥、義歯、ステロイド吸入、抗菌薬、免疫低下などが絡むことが多く、再発予防として“口腔衛生の継続”が重要です。歯の黄変の説明をきっかけに、ブラッシング・清掃の話題へ自然につなげられるのは、現場では地味に便利な導線です。
検索上位では「その場でうがいして終わり」の説明が多い一方、病棟・施設・訪問の現場では「希釈してボトルに作り置きできるか」「いつまで使えるか」が実務上の重要論点です。インタビューフォームには、滅菌精製水で希釈した場合の安定性データがあり、室温(褐色バイアル瓶)保存で50倍希釈液は2週間、100倍希釈液は1週間安定と記載されています。
これは、たとえば嚥下が難しい患者、手技が不安定な患者で“含ませる/塗布する/少量頻回にする”など運用を工夫したいとき、調製・保管ルールを作る根拠になります。ただし光条件で力価が低下し得るデータも示されており、遮光容器の選択や保管環境(散乱光・強制光)に注意が必要です。
院内手順に落とすときの例(入れ子なし)。
・🧴容器:褐色容器を優先、ラベルに「遮光」「調製日」「期限」を明記する。
・🗓️期限:希釈倍率と保存条件に合わせ、50倍は最大2週間、100倍は最大1週間など、IFの範囲で設定する。
・🚫運用:作り置き前提にするなら、調製者・確認者のダブルチェック、振盪手順の明文化をセットにする。
さらに原末レベルの情報ですが、有効成分アムホテリシンBは「溶液pH3.0~5.0(30mg/mL懸濁液)」「pH3~11で少なくとも24時間安定」など、pHと安定性に関する記載があります。口腔内での使用感や他の含嗽剤との併用を検討する際に、pHが一つの論点になり得る点は、現場で“意外と役に立つ”視点です(ただし配合変化は個別評価が必要です)。
参考リンク(インタビューフォーム:希釈液の安定性、開封後の変化、遮光や光条件による変化、使用前振盪など運用設計の根拠)
https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1&yjcode=6173001Q1047