うがいは単純な洗浄行為に見えますが、実際には複数の重要な効果を持つ健康習慣です 。最も基本的な効果は、物理的な洗浄作用により、喉や口の中に付着したウイルス、細菌、ほこり、花粉、食べかす、粘液などを洗い流すことです 。
参考)https://www.tomi-dent.com/column/post-241/
うがいの最も重要な効果の一つは、のど本来が持つ防御機能の向上です 。気道の内壁を覆う粘膜には線毛と呼ばれる微細な毛があり、これが1分間に約0.5~1センチメートルの速さで異物を外へ向かって移動させています 。線毛は直径1000分の1ミリという毛髪よりもはるかに細い構造で、1秒間に15~17回程度の速さで波打つように動いています 。
参考)https://pro.saraya.com/kansen-yobo/infectious-diseases/gargle.html
うがいを行うことで、この線毛運動が活性化され、粘液の分泌や血行が盛んになります 。適度な刺激がのどに潤いを与え、粘膜の働きが弱まるのを防ぐとともに、ホコリなどを粘液とともに上気道から洗い流す効果があります 。
口腔ケアの観点からも、うがいは重要な役割を果たします。口腔粘膜への細菌の付着を抑え、定着しにくくすることで、むし歯や歯周病の予防にも効果的です 。また、口臭の元となる汚れを除去し、口臭の発生を防ぐ効果も期待できます 。
参考)https://sillha.com/column/231027321
効果的なうがいを行うためには、正しい手順を理解することが重要です。うがいには「ぶくぶくうがい」と「ガラガラうがい」の2種類があり、それぞれ異なる目的と効果があります 。
参考)https://kakecommu.com/archives/mame/%E9%A2%A8%E9%82%AA%E3%81%AE%E4%BA%88%E9%98%B2%E3%81%AB%E5%8A%B9%E6%9E%9C%E7%9A%84%E3%81%AA%E3%81%86%E3%81%8C%E3%81%84%E3%81%AE%E6%96%B9%E6%B3%95%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F
ぶくぶくうがいは、口に水を含んで軽く口を閉じ、頬を膨らませたり凹ませたりして口腔内全体を洗浄する方法です 。水を口の中で転がすように動かすことで、食べかすや細菌を除去し、口の中をきれいに保つことができます。特に口腔内の細菌が原因である口臭の予防や風邪の予防に効果的です。
ガラガラうがいは、水を口に含んで上を向き、ガラガラと音を立てながら喉の奥を洗浄する方法です 。喉や気管の入口を洗浄し、のどに付着したウイルスや細菌を取り除きます。
参考)https://hoiclue.jp/800002595.html
正しい順番は以下の通りです。
参考)https://kuroiwa-dc.com/blog_articles/1663767905.html
この順番を守ることが重要な理由は、ガラガラうがいから始めてしまうと、口の中に溜まった菌やウイルスを喉の奥に流してしまうからです 。ぶくぶくうがいでは7秒間程度、全力でブクブクさせることが推奨されています 。
10~15秒のうがいを最低3回行うことが基本的な回数とされています 。「お~」と発声しながらうがいをすると、水がこぼれにくく、声を出すことで喉の奥まで水分を届けることができます 。
参考)https://www.kenei-pharm.com/kabakun-series/column/05/
うがい薬には複数の種類があり、それぞれ異なる成分と効果を持っています。主要な分類として、「消炎薬」と「消毒薬」の2種類があります 。消炎薬は口やのどの炎症をしずめる効果があり、消毒薬は口やのどの雑菌を退治する効果があります。
参考)https://www.wakunaga.co.jp/medicine/%E6%AD%A3%E3%81%97%E3%81%84%E3%81%86%E3%81%8C%E3%81%84%E8%96%AC%E3%81%AE%E4%BD%BF%E3%81%84%E6%96%B9
塩水うがいは最もシンプルで手軽な方法です 。塩には自然な抗菌作用があり、のどの炎症を和らげる効果があります 。食塩水には炎症した喉の痛みを和らげる効果もあり、薬局で販売されているうがい薬ほど強力ではありませんが、喉の粘膜を傷つける心配がありません 。
参考)https://www.chayamachi-clover.com/faq/2877.html
ポビドンヨード系うがい薬(イソジンなど)は、ヨウ素化合物を主成分とし、細菌の抑制や口腔内感染予防に効果的です 。しかし、興味深い研究結果として、京都大学の研究では水うがいの方がポビドンヨードよりも風邪予防効果が高いことが示されています 。
参考)https://www.yamaji-dental.net/news/1316/
歯科用洗口剤には、クロルヘキシジンを含むものと塩化セチルピリジニウムを含むものがあります 。クロルヘキシジンは強力な抗菌作用があり、虫歯や歯周病予防に効果的です。塩化セチルピリジニウムは低濃度でも細菌に結合し作用し、毒性や刺激を少なくできる特徴があります 。
参考)https://yamanouchi-dc.com/column/tooth-004-2/
生理食塩水は最もしみないうがい薬として知られており、痛みが強く他のうがいがしみて使えない時に使用されます 。沸騰したお湯500mlに5gの塩(小さじ1杯)を溶かし、40℃くらいまで冷ますと濃度1%の生理食塩水を作ることができます 。
参考)https://www.hosoda-cl.com/column/4915/
うがいの効果に関する最も重要な科学的研究は、2005年に京都大学の川村孝先生らによって実施された世界初の無作為化試験です 。この研究では387名のボランティアを「水うがい群」「ヨード液うがい群」「特にうがいをしない群」の3群に分け、2ヶ月間にわたって風邪の発症を追跡しました。
参考)https://www.hoken.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2015/03/gargle2007.pdf
研究結果は驚くべきものでした。発症率はうがいをしない群の1ヶ月あたり100人中26.4人に対して、水うがい群は17.0人と約36%の減少を示しました 。一方、ヨード液うがい群は23.6人で、明らかな効果は見られませんでした。
参考)https://medicalprime-shinkawa.com/column/445
この結果について、論文では興味深い考察がなされています。ポビドンヨードが口の中の常在菌を殺してしまったために、病原体の侵入を防げなくなったのではないかと推測されています 。つまり、単純にウイルスを殺せばよいというものではなく、口腔内の細菌バランスも重要な要素であることが示唆されています。
線毛機能の観点から見ると、うがいは生体の自然な防御機能を支援する役割を果たします。空気の乾燥する冬場は線毛運動が低下しやすく 、うがいによる適度な湿潤環境の維持が重要になります。線毛は気道内の異物を運搬・排除する重要な機能を持っており、この機能の維持がウイルス感染予防に直結します 。
参考)https://www.lion.co.jp/ja/rd/topics/128
医学的には、うがいは「口腔」を介する感染の予防効果が実証されており 、特に上気道感染症に対する効果が認められています。ただし、効果的なうがいのためには、正しい手順と適切なタイミングが重要であることも研究から明らかになっています。
効果的なうがいを行うためには、適切なタイミングを理解することが重要です。うがいをする最も重要なタイミングは、外出先から帰宅したときです 。外出すると外気や他人から細菌、ウイルス、ホコリなどの異物を受け取ってしまうため、帰宅時は特に習慣づけることが推奨されています。
参考)https://www.happiness-direct.com/shop/pg/1h-vol313/
人込みに出かけた後も重要なタイミングの一つです 。多くの人が集まる場所では、飛沫感染のリスクが高まるため、うがいによる予防効果が期待できます。
起床後と就寝前のうがいも効果的です 。起床時のうがいは、寝ている間に口腔内で増殖した細菌の除去に役立ちます。就寝前のうがいは、一日の汚れを洗い流し、夜間の口腔環境を整える効果があります。
食事の前後も推奨されるタイミングです 。食前のうがいは食べ物と一緒に異物を飲み込まないようにする効果があり、食後のうがいは食べかすの除去と口腔内の清浄化に役立ちます。
口腔内や喉の乾燥を感じたときも適切なタイミングです 。乾燥は線毛運動の低下を招き、防御機能を弱めるため、うがいによる湿潤環境の維持が重要になります。
のどの痛みや不快感があるとき、口のニオイが気になるときも、症状の緩和と予防の観点からうがいが有効です 。
うがいの回数については、一般的に3回繰り返すことが推奨されています 。のどに痛みがある場合は、1回目がぶくぶくうがい、2回目と3回目はガラガラうがいを行います。口が乾燥している場合は、1回目と2回目はぶくぶくうがい、3回目はガラガラうがいを行うとよいでしょう。
ただし、歯磨き後のうがいは例外で、少量の水で1~2回に留めることが重要です 。歯磨き粉に配合されたフッ素などの歯を保護する成分が流れてしまうため、うがいのしすぎには注意が必要です。
日常生活でのうがいを習慣化するためには、洗面所に専用のコップを置く、外出から帰ったら手洗いと一緒に行う、起床時の歯磨きと組み合わせるなど、既存の習慣と関連付けることが効果的です。また、家族全員でうがいの習慣を共有することで、継続しやすい環境を作ることができます。