フェルビナク外用(スチック軟膏を含む)は、痛みや炎症を抑える「対症療法」の位置づけで、原因疾患そのものを治す薬ではありません。したがって「効かない」は、薬が無効というより、疼痛の原因がNSAIDs外用で十分にカバーできない状態に変化している可能性をまず疑います(例:神経障害性疼痛、明らかな構造損傷、感染、全身性炎症疾患など)。「鎮痛が弱い」ではなく「痛みのタイプが違う」ことを言語化できると、患者説明もチーム内連携も一段ラクになります。
医療従事者向けの整理として、次の“ズレ”が典型です。
「フェルビナクを塗っても大丈夫か」という文脈で、リウマチ領域でも“局所は塗ってよいが、まず全身治療が前提”という趣旨が示されており、効かない時は病態の再評価が重要だと再確認できます。
治療・薬(関節リウマチのQ&Aで、局所外用の位置づけが分かる)
https://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/faq-list/therapy/
また、OTC解説でも「一時的に痛みが和らいでも根本原因が改善されなければ痛みはぶり返す」「感染の可能性がある部位は医師と相談」といった注意が明確に書かれており、“効かない=塗り方の問題”に短絡しない視点が裏打ちされます。
(フェルビナクスチック相当の解説:対症療法・感染の注意)
https://www.kusurinomadoguchi.com/column/articles/sumilustick-over-the-counter-drugs
スチック軟膏は「手が汚れにくい」「外出先で塗りやすい」という強みがある一方、塗布条件の差が体感効果に直結します。薬理は同じでも、実際の“患部に届いている量”がブレると、患者は「効かない」と判断しやすいからです。ここは医療者が介入しやすい改善ポイントです。
実務的には次をチェックします(患者教育で使えるチェックリスト形式)。
OTCフェルビナクスチックの解説では、用法の目安として「1日数回」、回数が気になる場合は「1日5回程度まで」といった運用コメントが示されており、患者が自己流で増量しすぎないための“上限感”を渡す材料になります。
さらに同解説は「おふろ上がりが効果的と言われることもあるが、実証されているわけではない」とも触れているため、タイミングを“魔法の正解”として押し付けず、生活導線に合わせる方針が現場的です。
そして「効かない」と言われたとき、使い方の再指導で終わらせないのが医療者の腕の見せ所です。塗布指導と並行して、疼痛評価(NRS、動作時痛・安静時痛、夜間痛、しびれ、熱感・腫脹)を取り直すと、原因のズレが見つかります。
「スチックで効かない」ケースの一定数は、成分の問題というより剤形ミスマッチです。外用NSAIDsは、貼付剤(テープ/パップ)、ゲル、クリーム、スチックなどで使用感と皮膚滞留の仕方が変わり、患者のアドヒアランスも変わります。患者が“効き目”として感じているものの中には、「持続している感じ」「動作時に剥がれない」「塗り直しの手間が少ない」といった体験価値が混ざります。
OTCの解説でも、スチックと貼付剤の違いとして、貼付剤は「1日1回貼り替えれば効果が持続する」点がメリットになり得る一方、貼付剤は塗布剤よりかぶれ等が起こりやすくなり得るという注意が述べられています。
つまり、スチックで無効感が強い患者には「同成分でも貼付剤へ」「皮膚が弱ければゲルへ」など、成分変更より先に剤形変更を提案する価値があります。
また、患者は“温湿布・冷湿布で効き目が違う”と思い込みがちですが、温冷の違いは体感刺激(温感・冷感成分)で、鎮痛成分自体は同じケースが多いという説明も一般向け記事で整理されています。温めて楽になる慢性痛なら温感、熱感・腫れがある急性なら冷感、といった使い分けが臨床の会話としては有用です(ただし薬効差の誇張は避ける)。
参考)温かい湿布と冷たい湿布の違いと効果的な使い分けについて|NE…
臨床での提案例(患者の納得を取りやすい言い方)。
なお、類似薬の選択肢(フェルビナク含有や他成分)を提示して比較する資料としても、OTC解説ページの一覧は患者指導に転用しやすい構成です(品名や剤形の話をしやすい)。
「効かない」相談に紛れて、実は副作用で中断しているケースがあります。皮膚症状(発赤、かゆみ、接触皮膚炎)で使用回数が落ちれば、当然“効かない”という結論になりますし、症状が悪化しているのに鎮痛で見えにくくなるリスクもあります。
PMDAの安全対策資料(フェルビナク含有製剤)では、使用後に副作用が疑われる症状が出た場合は中止して相談すること、まれにショック(アナフィラキシー)が起こり得て、皮膚のかゆみ・じんましん・息苦しさ・動悸・意識の混濁等が出る旨が明記されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10243057/
ここは医療者が必ず押さえたいポイントで、「効かないから塗る回数を増やす」は最も避けたい行動の一つです。
患者説明用に、危険サインを短く提示します(絵文字は患者配布物で視認性が上がります)。
「皮膚の副作用が出やすい人」を見分ける実務として、貼付剤でかぶれ歴がある患者は、貼付剤回避+ゲル/スチック+短期使用+部位ローテーション、といった現実的な落としどころを用意すると、結果として“効かない”の訴えも減ります。
ここは検索上位で語られがちな一般論(塗り方、受診目安)から一歩踏み込み、医療従事者が患者へ説明すると説得力が上がる「剤形設計」の話です。フェルビナクは外用で皮膚から吸収される薬ですが、皮膚は強いバリアなので、同じ有効成分でも“どうやって角層バリアを越えるか”の工夫で到達が変わり得ます。
例えば、フェルビナクの皮膚吸収に関して、l-メントール(清涼感成分)を含むゲル製剤での皮膚吸収・浸透に関する研究報告があり、外用設計の観点が議論されています。
この知識は、患者の「スーッとする=効いてる」「スーッとしない=効かない」という誤解も整えられます。清涼感は“感覚”としての満足度に寄与しますが、鎮痛の本体はCOX阻害→プロスタグランジン産生抑制であり、感覚刺激と鎮痛は同一ではありません(ただし製剤として同時に設計されることはあります)。
参考)フェルビナクはどんな働きで痛みを軽くするの?|肩こり・腰痛に…
臨床の言い換え例(患者の誤解をほどくフレーズ)。
この“設計”の話を入れると、単なる使用法記事から、医療従事者向けらしい深度になります。現場では、患者が求めているのが「即時の体感」なのか「夜間痛の軽減」なのかを先に言語化し、それに合わせて剤形や使用計画を最適化すると、結果的に「効かない」の再相談が減ります。
(重大な副作用・アナフィラキシーの注意が確認できる:PMDA資料)
https://www.pmda.go.jp/files/000147152.pdf