腹膜透析において、カテーテル出口部の感染は最も注意すべき合併症の一つです。初期は出口部のみの限局感染でも、適切な管理を怠ると皮下トンネル感染から腹膜炎へと進展する可能性があります。
感染の主な原因として以下が挙げられます。
出口部ケアの具体的手順:
腹膜透析患者の皮膚は特殊な環境下にあり、通常の患者とは異なるアプローチが必要です。透析による除水や水分摂取制限により角層内の水分が減少し、皮脂腺や汗腺の萎縮が進行します。
主要な皮膚問題:
スキンケアの要点:
✅ 保湿剤の適切な選択:テープ貼付可能な製剤を選択
✅ 低刺激性製品:アレルギー反応を最小限に抑制
✅ 定期的な皮膚評価:炎症や感染徴候の早期発見
意外にも、腹膜透析患者では血液透析患者と比較して全感染症リスクが必ずしも高くないという報告があります。適切な管理により、感染リスクは十分にコントロール可能です。
腹膜透析では腹腔内に1,500-2,000mlの透析液を貯留するため、多くの患者で腹部膨満感を経験します。この症状は患者のQOLに大きく影響し、治療継続の阻害因子となることがあります。
膨満感の原因:
管理アプローチ:
多発性嚢胞腎(ADPKD)患者での特殊事項:
大きな嚢胞により腹腔内圧がさらに上昇しやすく、時には腹壁ヘルニアや呼吸困難を来すことがあります。このような症例では透析液量の慎重な調整が必要です。
腹膜透析の継続には、腹膜機能の定期的な評価が不可欠です。腹膜の透過性変化は透析効率に直結し、患者の予後に大きく影響します。
主要な評価法:
腹膜機能の変化パターン:
🔍 High transporter:溶質クリアランス良好だが除水能低下
🔍 Low transporter:除水能良好だが溶質除去不良
🔍 Average transporter:バランスの取れた状態
長期管理の課題:
腹膜透析では時間経過とともに腹膜の劣化が進行します。通常、開始後数年で腹膜機能が低下し、残存腎機能の減少と相まって十分な血液浄化が困難となります。
この段階では以下の選択肢を検討します。
**被嚢性腹膜硬化症(EPS)**のような重篤な合併症も存在し、長期透析患者では特に注意深い観察が必要です。
腹膜透析は患者自身が治療を実施する在宅療法であり、技術的な習得とともに心理的な負担も大きいことが知られています。医療従事者には患者の技術面だけでなく、精神面でのサポートも求められます。
患者が「つらい」と感じる要因:
効果的なサポート戦略:
遠隔医療の活用:
COVID-19パンデミックを機に、腹膜透析における遠隔患者管理プログラムの重要性が再認識されました。情報通信技術を活用することで、患者の不安軽減と医療の質向上の両立が可能です。
興味深いことに、災害時やパンデミック時において腹膜透析は血液透析よりも継続しやすいという利点があります。電力を必要とせず、自宅で実施可能な腹膜透析の価値は、今後ますます重要になると予想されます。
患者教育のポイント:
医療従事者は患者一人ひとりの状況を総合的に評価し、最適な治療継続のための包括的なサポートを提供することが求められます。