血液透析の基本知識と治療について

血液透析は腎機能が低下した患者の生命を支える重要な治療法です。治療の仕組みや合併症、適応基準、費用などの基本知識を詳しく解説し、患者やその家族が透析治療を理解するための包括的な情報をお届けします。血液透析について正しく理解できているでしょうか?

血液透析の基本知識

血液透析の基本知識
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治療の仕組み

血液を体外に取り出し、ダイアライザーで浄化して体内に戻す治療

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適応基準

腎機能が正常の10-15%以下、または尿毒症症状がある場合

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治療頻度

週3回、1回約4時間の透析を継続的に実施

血液透析は、腎不全が進行し腎機能が正常の10-15%以下に低下した患者に対して行われる腎代替療法の一つです。この治療法では、血液を体外に取り出し、ダイアライザー(人工腎臓)と呼ばれる透析器を通すことで血液を浄化し、再び体内に戻します。日本では324,986人の方が透析治療を受けており、そのうち96.5%が血液透析を選択している最も普及した治療法です。
参考)https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000405/

 

血液透析の適応は、腎機能の低下だけでなく、尿毒症の症状や高カリウム血症心不全などの臨床症状も考慮されます。腎機能が正常の15%以上あっても、適切な治療で改善しない場合は透析が必要と判断されます。透析導入基準では、末期腎不全による臨床症状、腎機能障害、日常生活の障害のうち2項目以上の条件が存在する場合に透析療法導入を検討します。
参考)https://www.twmu.ac.jp/NEP/touseki.html

 

通常の治療スケジュールは週3回、1回約4時間の通院透析です。この治療により、体内に蓄積した尿毒症の原因物質や老廃物の除去、電解質バランスの維持、体液量の調節を行います。日本の血液透析の成績は世界でも群を抜いて良く、30年以上の長期透析を受けている患者が3万人以上存在します。
参考)https://www.obara-clinic.jp/blood/

 

血液透析の治療メカニズム

血液透析では、バスキュラーアクセス(シャント)から血液を取り出し、ダイアライザーに通すことで血液浄化を行います。ダイアライザーは中空糸という細いストローを数千から1万本程度束ね合わせた構造で、中空糸の中に血液を流し、表面の小さな穴を通して老廃物を除去します。
老廃物は拡散および濾過の原理により、中空糸の外側を循環する透析液側へ移行します。濃度差を利用して血液から老廃物を持続的に除去し、同時に血液中に不足する重炭酸イオンなどの必要な物質を透析液から血液中へ補給します。ダイアライザーの膜の孔径は、赤血球、白血球、血小板、アルブミンなどの重要な成分は通過させないよう設計されています。
血液透析を行うためには大量の血液を体外に取り出す必要があるため、バスキュラーアクセス(シャント)の作製が不可欠です。シャントは手術により腕の静脈と動脈をつなぎ合わせて作製し、静脈の血管を拡張させて透析に必要な血流量を確保します。

血液透析の適応基準と導入時期

血液透析の導入は、慢性腎不全患者に保存的治療を行っても腎不全症状の改善が望めない場合に検討されます。具体的な導入基準には、末期腎不全に基づく臨床症状(体液異常、神経症状、消化器症状、血液異常、循環器症状、体液貯留、視力障害)、腎機能障害(血清クレアチニン値8mg/dl以上が持続、またはクレアチニン・クリアランス10ml/min以下)、日常生活の障害があります。
参考)https://www.sudaclinic.jp/dialysis/42

 

これらの条件のうち2項目以上が存在する場合に透析療法導入を検討します。腎機能が正常の15%以上あっても、尿毒症の症状や高カリウム血症、心不全などがあり、適切な治療によって改善しない場合は透析が必要と判断されます。透析導入により活動力の改善が期待できる場合も重要な判断要素となります。
日本では血液透析を選ぶ患者が圧倒的に多く、2012年末の調査で全透析患者の96.9%を占めており、末期腎不全の治療法として主流となっています。透析療法は腎臓を治療する方法ではなく、腎臓の機能を代行する治療法であるため、原則的に一生涯続けることになります。
参考)https://www.zjk.or.jp/kidney-disease/cure/hemodialysis/

 

血液透析における合併症と感染対策

血液透析患者は様々な合併症のリスクを抱えており、特に感染症に対して脆弱な状態にあります。主な感染症合併症として、シャント感染、尿路感染、肺炎・結核、ウイルス性肝炎が挙げられます。シャント感染は穿刺部から細菌が侵入することで発生し、穿刺部の発赤、腫脹、疼痛、発熱を伴います。
参考)https://www.inokuchi-hp.or.jp/blog/dialysis-complication/

 

シャント感染の予防には、シャント部分を清潔に保ち、穿刺前の手洗い、透析日の入浴を避けることが重要です。尿路感染は尿量減少と免疫力低下により発生しやすく、排尿障害や発熱、疼痛などの症状が現れます。透析患者は免疫力が低下しているため、風邪が悪化して肺炎や結核を発症することがあり、手洗い・うがいの励行、マスク着用などの感染予防対策が必要です。
輸血によるウイルス性肝炎(B型・C型)のリスクもあり、倦怠感、食欲不振、吐き気などの症状が出る場合があります。その他の重要な合併症として、心血管疾患(心不全、心筋梗塞、脳出血など)、かゆみ、貧血、電解質異常(特に高カリウム血症)があり、これらは生命に関わる可能性があるため十分な注意が必要です。
参考)https://hirose-yourankai.jp/blog/%E8%A1%80%E6%B6%B2%E9%80%8F%E6%9E%90%E3%81%AE%E5%90%88%E4%BD%B5%E7%97%87

 

血液透析治療の医療費と助成制度

血液透析の医療費は1回あたり約3万円で、週3回の標準的な治療では1か月あたり約40万円、年間では約480万円の高額な費用がかかります。これは医療費総額であり、実際の自己負担額は加入している医療保険や医療費助成制度により大幅に軽減されます。
参考)https://www.seijinkai.jp/mihama/department/dialysis/hiyou/

 

透析治療には特別な医療費助成制度があり、高額療養費の特例として保険給付され、透析治療の自己負担は1か月1万円が上限となります(一定以上の所得のある人は2万円が上限)。この制度により、年間約500万円の医療費がかかる透析治療でも、患者の経済的負担を大幅に軽減することができます。
参考)https://www.gh.opho.jp/org/kidney/alternative-therapy/med-exp-asst.php

 

医療費には透析治療そのものにかかる費用に加え、透析に必要な薬剤費や検査費用、合併症の治療費なども含まれます。透析患者は合併症を起こしやすく、透析が適切に行われているかを確認するための定期的な検査が必要であり、場合によっては透析の原因となった疾患の治療も同時に行う必要があります。
参考)https://www.touzan.or.jp/dialysis-subsidy/

 

血液透析導入期の不均衡症候群について

不均衡症候群は血液透析導入期にみられる特有の合併症で、身体が透析にまだ慣れていない時期に発生します。血液透析により体内の血液中の水分や老廃物は急激に除去されますが、脳内や細胞内の老廃物は除去されにくく、血液と細胞内との間に濃度差が生じることが原因です。
参考)https://www.toseki.tokyo/blog/hukinkou-shoukougun/

 

主な症状として、全身症状では血圧変動、筋けいれん、こむらがえり、身体のだるさ、脱力感があり、中枢神経症状では頭痛、吐き気、嘔吐、不安感、焦燥感が現れます。これらの症状は透析中から透析終了後12時間以内に発生し、通常は血液透析を数回経験して身体が慣れてくると症状は軽減されます。
不均衡症候群の予防には、水分や塩分、たんぱく質の摂取を控え、ゆっくりと時間をかけて緩やかで無理のない透析を行うことが重要です。頭痛や吐き気などは身体が透析に慣れれば徐々に起こりにくくなりますが、血圧低下や筋肉のけいれんは透析維持期になっても起こりやすく、継続的な注意が必要です。
参考)https://www.kissei.co.jp/dialysis/complications/index.html