筋力トレーニングを積極的に指導しているのに、介入後に転倒リスクが約1.6倍に上がった患者が報告されています。
「フレイル」「サルコペニア」「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」は、高齢者医療の現場で頻繁に登場する三つのキーワードです。しかし実際の臨床現場では、これらを混同して使ってしまっているケースが少なくありません。概念の違いを整理することが、まず最初のステップです。
フレイル(Frailty)は、2001年にLinda Friedらが提唱したCHS(Cardiovascular Health Study)基準が世界的な標準となっています。「加齢に伴うさまざまな機能低下により、ストレスに対する脆弱性が増した状態」と定義され、身体的側面だけでなく精神・心理的、社会的な側面も含む広義の概念です。日本では2020年に日本版のJ-CHS基準が策定され、握力の基準値が男性28kg未満・女性18kg未満と設定されました。
サルコペニアは、ギリシャ語の「sarx(筋肉)」と「penia(喪失)」を合わせた造語で、2010年にEWGSOP(欧州老年医学会等の共同ワーキンググループ)が初めて国際的なコンセンサス基準を発表しました。その後アジア版としてAWGS(Asian Working Group for Sarcopenia)が2014年に基準を策定し、2019年に改訂されたAWGS2019が現在の標準です。つまりサルコペニアは「筋肉量の減少+筋力低下または身体機能低下」に焦点を当てた概念です。
ロコモティブシンドローム(ロコモ)は、2007年に日本整形外科学会が提唱した日本独自の概念である点が特徴的です。「運動器の障害によって移動機能が低下した状態」と定義され、骨・関節・筋肉・神経といった運動器全体を対象としています。筋肉量だけでなく、骨粗鬆症・変形性関節症・脊柱管狭窄症なども含まれる点がサルコペニアとの大きな違いです。
三者の関係性を整理するとこうなります。ロコモは「運動器障害による