イソジンシュガー(精製白糖・ポビドンヨード配合剤)の「砂糖」は、甘味目的ではなく、創部の水分(滲出液)を“引き寄せる”浸透圧の働きを期待して入っています。
とくに局所の滲出液がある程度ある局面では、白糖が滲出液を吸収しながら、ポビドンヨードを放出して抗菌環境を作る、という説明がされています。
一方で「乾燥させれば良い」という単純な話ではなく、創面が乾燥傾向なら別剤に切り替える、といった運用が現実的です。
現場の誤解として多いのが、「砂糖=感染の栄養になるのでは?」という直感です。
ここは“全身栄養としての糖”と“局所外用としての白糖の物性(浸透圧)”を切り分けて考えるのがポイントで、製剤としては褥瘡・皮膚潰瘍治療剤に分類されています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/9071f8dfb8e1f53caff4c02d6fe88e105f8379e3
つまり、狙いは「細菌に餌を与える」ではなく「水分環境を動かして、抗菌成分を働かせやすくする」という設計思想にあります。
参考)第09回 感染した褥創の局所療法 – 高岡駅南ク…
イソジンシュガー軟膏では、白糖が滲出液を吸収するときに、ポビドンヨードが比較的“徐放的”に放出される、という解説があります。
ただし滲出液が多すぎると、短時間(例:30分程度)で放出され切る可能性がある一方、量によっては6時間以上の低濃度持続放出が期待できる、という整理も提示されています。
つまり「ヨードの効き方」は一定ではなく、創の水分条件に強く依存します。
この“水分条件依存”を理解すると、使い分けの説明が腑に落ちます。
感染極期で滲出液が最も多い時期には別剤を選び、滲出液が減ってきた段階でイソジンシュガーへ、さらに乾燥傾向ならまた変更する、という考え方が具体例として示されています。
医療者側がこのロジックを共有できると、「なぜ今日はこの外用で、次は変えるのか」をチームで説明しやすくなります。
臨床では、褥瘡面を清潔にした後に1日1~2回、ガーゼにのばして貼付する、または患部に直接塗布してガーゼで保護する、といった用い方が紹介されています。
同じ資料内で「他の薬と混ぜないで下さい」「長期の使用は避ける」といった注意も明記されており、漫然使用を避ける姿勢が求められます。
また、ヨウ素に過敏症のある人は使用しない、という注意も記載されています。
「なぜ砂糖か」の理解は、適応(向いている創)を考える材料にもなります。
滲出液の量や感染徴候の有無で薬剤の役割が変わるため、創の評価(湿潤、ポケット、臭気、疼痛、周囲皮膚の浸軟など)とセットで判断するのが現実的です。
さらに、ポケットのある創では洗浄と残存軟膏の除去に注意が必要、という指摘もあり、「塗る」より前の基本手技が結果を左右します。
ここで、医療従事者向けに最低限押さえたい“運用メモ”を置きます。
「白糖を創に塗るなら血糖が上がるのでは?」という不安は、糖尿病性潰瘍や褥瘡を扱う現場ほど出やすい論点です。
この点について、外用された白糖(スクロース)の吸収や血糖影響は臨床的に問題になりにくい、という趣旨の解説があり、ヒトでも血糖値やHbA1cに影響しないと考えられる、という整理が提示されています。
ただし、これは「全例で絶対に影響しない」と断言する話ではなく、少なくとも“血糖上昇を恐れて必要な局所治療を避ける”前に根拠を確認しよう、というスタンスが安全です。
一方で、禁忌や注意は血糖よりも“ヨウ素関連”が前面に出ます。
PMDAの医療用医薬品情報では、イソジンシュガーパスタ軟膏が「精製白糖・ポビドンヨード」であること、添付文書等へアクセスできることが示されています。
参考)https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdSearch/02/2699801V1114?user=1
実運用では、添付文書で禁忌・慎重投与・相互作用・長期使用の扱いを必ず最終確認し、院内プロトコルに合わせて使うべきです。
参考(添付文書・公式情報の入口、禁忌や使用上の注意の確認に有用)
PMDA 医療用医薬品情報:イソジンシュガーパスタ軟膏
検索上位には「イソジンと砂糖を混ぜたもの」という説明が多く、実際に“混ぜて作る”イメージが独り歩きしがちです。
しかし、医療用としては「精製白糖・ポビドンヨード」という一般名で規格化された製剤が存在し、成分量も明示された製品があります(例:100g中 精製白糖70g、ポビドンヨード3g)。
この差は大きく、院外や病棟での“自己流ブレンド”は、濃度の再現性、無菌性、基剤、皮膚刺激、ヨード量、塗布量評価などが崩れ、事故の温床になり得ます。
さらに重要なのは、イソジンシュガーが「すべてのキズに良い」わけではない点です。
創傷治療の立場からは、イソジンシュガー使用で浸出液(=治癒に関わる成分を含むことがある)が吸われすぎ、状態が悪化し得る、という強い批判的見解も提示されています。
参考)http://www.wound-treatment.jp/wound079.htm
つまり“砂糖が入っている理由”を理解するほど、「この創にその機序を当てはめてよいか?」を毎回問い直す必要が出てきます。
医療従事者として患者・家族に伝えるなら、次のように整理すると誤解が減ります。