ivhとcvは医療現場で頻繁に使われる用語ですが、多くの医療従事者が混同しています。最も重要な違いは、ivh(またはTPN)が「栄養を補給する手段(治療法)」であるのに対し、cvは「その手段を行うために使う道具(カテーテル)」という点です。ivhはintravenous hyperalimentationの略で、現在は国際的にTPN(Total Parenteral Nutrition:中心静脈栄養)という呼称が推奨されています。一方、cvはcentral venous catheter(中心静脈カテーテル)の略で、心臓近くの中心静脈にカテーテルを留置する医療器具を指します。
参考)【比較表で解決】IVHとCVの違いは?TPN、CVポートの区…
この混同が生じる理由は、日本では歴史的にivhという用語が広く使われてきたことと、現場でカテーテル自体を「ivh」と呼ぶ誤った使用法が定着してしまったためです。しかし、ivhという用語にはcatheter(カテーテル)という意味は含まれておらず、完全に誤った使用法とされています。
参考)[1] 中心静脈カテーテルの呼称[central venou…
ivh(現在はTPNと呼ぶのが適切)は、口から栄養を摂取できない患者に対して、中心静脈から高カロリーの栄養輸液を投与する治療法です。心臓に近い太い血管である上大静脈は血液量が多く血流も速いため、糖濃度の高い輸液を投与しても血管痛や静脈炎のリスクが軽減されます。末梢静脈からの点滴と比較して3~6倍程度の濃度の輸液を投与でき、1日1000~2500kcal程度までの栄養補給が可能です。
参考)中心静脈栄養(IVH)とは|特徴や種類・自宅で行う際の注意点…
TPNは炭水化物、タンパク質、アミノ酸、脂質、ミネラル、ビタミンといった生命活動や成長に必要な5大栄養素すべてを静脈から点滴により注入します。消化管を利用せずに水分・栄養などを補給でき、末梢静脈栄養に比べて長期間にわたる利用が可能という特徴があります。
参考)静脈栄養の適応と管理
TPNの適応は、消化管を使用できない、あるいは使用すべきでない状態にある場合です。代表的な絶対的適応には短腸症候群、腸閉塞(イレウス)、高度の腸管麻痺、消化管瘻、難治性の下痢や嘔吐などがあります。また、栄養管理をする期間が7~14日以上と長期にわたるときにTPNが適応されます。
参考)中心静脈栄養とは|適応・禁忌やメリット・デメリットを解説│看…
cvカテーテル(central venous catheter:CVC)は、中心静脈に留置するカテーテルの総称であり、TPNだけでなく多目的に使用される医療器具です。鎖骨下静脈、内頸静脈、大腿静脈から挿入され、心臓近くの中心静脈にカテーテル先端を留置します。
参考)https://kango-oshigoto.jp/hatenurse/article/1143/
cvカテーテルの主な目的は、薬剤・輸液の投与、採血、CVP(中心静脈圧)測定など多岐にわたります。高カロリー輸液や抗がん剤の投与が可能であり、緊急時の大量輸液や多剤同時投与が必要なケースでは第一選択となることが多いです。
参考)中心静脈カテーテル(CVカテーテル・CVC)とは?カテーテル…
cvカテーテルにはルーメン(カテーテル内腔)の数によって種類があり、シングル(1本)、ダブル(2本)、トリプル(3本)、クワッド(4本)に分類されます。臨床ではダブルかトリプルが使われることが多く、それぞれのルーメンは内腔の広さや開口位置が異なります。メインルーメン(DISTAL)が最も内腔が広く、カテーテルの先端から薬液が出るのに対し、サブルーメン(MIDDLE、PROXIMAL)はメインルーメンよりも内腔が狭く、先端から約1~4cm離れた側孔から薬液が出る仕様になっています。
参考)CVカテーテルのダブルルーメンやトリプルルーメンはどういう構…
現場で飛び交う用語を整理すると、以下のようになります。特にivhは「中心静脈栄養」を指す言葉として定着していますが、現在はより包括的な「TPN」という呼称が推奨されています。
| 用語 | 正式名称・意味 | 分類 | 主な目的 |
|---|---|---|---|
| CV | Central Venous Catheter(中心静脈カテーテル) | 道具(カテーテル) | 薬剤・輸液の投与、採血、CVP測定など多目的 |
| TPN | Total Parenteral Nutrition(中心静脈栄養) | 手段・治療(栄養法) | 生命維持に必要なすべての栄養素を静脈から投与すること |
| IVH | Intravenous Hyperalimentation(中心静脈栄養) | 手段・治療(栄養法) | TPNの旧称として現場ではまだ多く使われている |
この表からわかるように、cvは「道具」であり、ivh(TPN)は「治療法」です。cvカテーテルを使ってivh(TPN)を行うという関係性を理解することが重要です。
ivh(TPN)を実施する際には、様々な種類のcvカテーテルから適切なものを選択します。cvカテーテルは短期留置用と長期留置用に分けられ、さらに挿入部位や構造によっても分類されます。
参考)第1回 カテーテルの種類(中心静脈カテーテル、末梢静脈カテー…
PICC(peripherally inserted central venous catheter:末梢挿入型中心静脈カテーテル)は、上腕または肘の末梢静脈から挿入する中心静脈カテーテルで、先端は中心静脈に位置します。PICCはcvカテーテルと比較して重篤な機械的合併症のリスクが少なく安全性が高いと言われており、腕から比較的簡単に挿入でき、挿入後の感染などのリスクも少ないのが特徴です。
参考)静脈内注射の各種ライン(CV、末梢静脈)の ポイント|輸液ラ…
CVポート(totally implantable central venous access port)は、カテーテルの端を皮膚の下に埋め込むタイプです。体外に管が出ないため、入浴などの日常生活がしやすく、長期の化学療法や在宅療養に適しています。皮下に埋め込まれているCVポートが体内のカテーテルとつながっているので入浴が可能で、点滴を行う時間を夜にして昼間は外出もできます。
参考)ivh(中心静脈栄養)とは?在宅や介護施設でのケアについて解…
中心静脈カテーテルの呼称と種類について詳しい解説があります(株式会社ニュートリー)
ivh(TPN)とcvカテーテルでは、管理における合併症のリスクが異なります。TPN施行中の合併症はカテーテルによる機械的合併症と代謝的合併症、そして感染に大別されます。機械的合併症はカテーテルの長期間留置に起因し、代謝的合併症は高浸透圧かつ大量の栄養素が静脈内に直接投与されるために生じます。
参考)Chapter3 静脈栄養 2.14 TPNの合併症|PDN…
代謝的合併症には高血糖、高浸透圧性非ケトン性昏睡、低血糖(インスリン併用時は要注意)、電解質異常、微量元素欠乏、脂肪酸欠乏などがあります。TPNによる高濃度糖質の投与で容易に血糖が上昇するため、開始前に患者の耐糖能を評価し、開始時に徐々に輸液の糖質濃度を調整する必要があります。また、TPN施行中は相対的高インスリン状態にあり、TPNを急に中止すると低血糖状態を惹起しやすくなります。
参考)https://peg.or.jp/lecture/parenteral_nutrition/02-13.pdf
カテーテル関連血流感染症(CRBSI)は、ivh(TPN)における最も重篤な合併症の一つです。カテーテルの挿入部や輸液ルートの接続部から細菌が体内に侵入し、血液中で増殖することで全身に感染が広がります。感染症を防ぐためには、訪問看護師による専門的な管理と、患者・家族の協力による日々の徹底した管理が重要です。
参考)在宅中心静脈栄養法(IVH)管理と訪問看護|ケア内容と注意点…
血栓によるカテーテル閉塞も合併症のひとつです。血管内に留置したカテーテルの先端にはフィブリンが付着しやすく、そこで血栓が作られることがあります。CVC挿入による機械的合併症は5~19%、感染性合併症は5~26%、血栓性合併症は2~26%という報告があります。
参考)中心静脈栄養(TPN)の看護|目的、適応・禁忌、手順・介助、…
臨床現場では、ivh(TPN)とcvカテーテルを正しく使い分けることが重要です。栄養療法が必要な場合は可能な限り経腸栄養を選択し、静脈栄養は経腸栄養または経口摂取が不可能または不十分な場合に用います。
参考)Chapter3 静脈栄養 2.13 TPN の実際の投与方…
静脈栄養には末梢静脈栄養(PPN)と中心静脈栄養(TPN)があり、2週間以内の絶食は末梢静脈栄養、2週間以上腸が使えなければ中心静脈栄養の適応となります。末梢静脈栄養とは、腕や足などの末梢静脈から可能な限り多くの栄養素を補給する点滴方法で、糖質・アミノ酸・脂肪などを投与することでタンパクの消耗を抑制でき、中心静脈栄養よりも手技や管理が簡単である点が特徴です。
cvカテーテルの種類選択においては、症例や投与薬剤によって適切なカテーテルを選択することが大切です。PICCは安全性が高く長期留置可能ですが、カテーテル径が細いため、緊急時の大量輸液や多剤同時投与が必要なケースにおいてはcvカテーテルが第一選択となることが多いです。
トリプルルーメンの使い分けでは、メインルーメン(DISTAL)に最も重要な薬剤や高カロリー輸液を投与し、サブルーメン(MIDDLE、PROXIMAL)には配合変化のリスクが低い薬剤や生理食塩水を投与するのが一般的です。ハブの色で識別でき、SMACプラス(標準タイプ)では白・青・緑色の組み合わせで、枝管の最も短いものがメインルーメンとなります。
中心静脈栄養の導入時には、可能であれば経腸栄養を併用し、腸粘膜萎縮を防ぐことが推奨されています。腸が使える(消化吸収ができる)なら腸を使うことが基本原則です。
中心静脈カテーテルの種類と構造の詳細(Cardinal Health)