ジセレカ錠(フィルゴチニブマレイン酸塩)は、JAK阻害薬として関節リウマチと潰瘍性大腸炎の治療に使用されているが、免疫抑制作用により感染症リスクが著明に増加する。臨床試験において、上気道感染が最も頻繁に報告される副作用であり、発現率は10%未満となっている。
特に注意すべきは帯状疱疹の発症で、通常患者の0.2%に認められ、体の左右どちらか片側に痛みを伴う赤い発疹や水疱として現れる。臨床症状として、チクチク・ピリピリした痛み、しびれ、かゆみが先行することが多く、これらの前駆症状を見逃さないことが重要である。
肺炎をはじめとする重篤な感染症の発現率は0.3%と報告されており、発熱、咳、痰、全身倦怠感などの症状が持続する場合は、日和見感染症も含めた精査が必要となる。
感染症予防対策。
ジセレカ錠服用により、好中球減少症(0.1%以上1%未満)、リンパ球減少、ヘモグロビン値減少などの血液学的副作用が発現する可能性がある。これらの変化は感染症リスクの増大や貧血症状の出現に直結するため、継続的な監視が必要である。
好中球・リンパ球減少症では、発熱、寒気、のどの痛みなど感染を疑う症状が現れやすくなる。正常値を下回った場合は、減薬または休薬を検討し、感染症の早期発見・治療に努める必要がある。
ヘモグロビン値減少による貧血症状には以下が含まれる。
血中クレアチンホスホキナーゼ(CPK)の増加も0.1%以上1%未満の頻度で報告されており、横紋筋融解症やミオパチーの初期兆候として注意深く観察する必要がある。
肝機能障害は、ジセレカ錠服用患者において重要な監視項目である。AST上昇(0.5%)、ALT上昇(0.6%)が認められ、稀ではあるがB型肝炎ウイルスの再活性化も報告されている。
臨床症状として以下に注意する。
肝機能検査は投与開始前、投与開始後4週間は2週間ごと、その後は定期的に実施することが推奨される。特にB型肝炎ウイルスキャリアやC型肝炎患者では、ウイルス量の監視も併せて行う必要がある。
肝機能異常が認められた場合は、薬剤性肝障害との鑑別を行い、必要に応じて休薬または中止を検討する。肝庇護薬の併用や栄養管理も重要な支持療法となる。
ジセレカ錠では生命に関わる重篤な副作用が報告されており、早期発見と適切な対応が患者の予後を左右する。
消化管穿孔(頻度不明)は、特に憩室炎の既往がある患者でリスクが高く、激しい腹痛、下血、発熱などの症状が現れる。症状出現時は直ちに腹部X線、CT検査を実施し、外科的治療を含めた緊急対応が必要となる。
静脈血栓塞栓症(0.1%未満)として肺塞栓症や深部静脈血栓症が報告されている。下肢の痛み、腫脹、突然の呼吸困難、胸痛などの症状に注意し、D-ダイマー、造影CT等による精査を行う。
間質性肺炎(頻度不明)では、発熱、乾性咳嗽、呼吸困難が主な症状となる。胸部X線、HRCT、血液ガス分析による迅速な診断が重要で、ニューモシスチス肺炎との鑑別にはβ-Dグルカン測定が有用である。
悪性腫瘍のリスクも指摘されており、ジセレカ錠との因果関係は明確でないものの、定期的ながん検診の受診を患者に推奨する必要がある。
高齢者、腎機能障害患者、肝機能障害患者など特殊集団では、副作用の発現頻度や重症度が異なる可能性があり、より慎重な監視が必要である。
高齢者では免疫機能の低下により感染症リスクがさらに増大し、薬物代謝能力の低下により副作用が遷延する可能性がある。また、併存疾患や併用薬剤の影響も考慮する必要がある。
腎機能障害患者では、薬物排泄の遅延により血中濃度が上昇し、副作用が強く現れる可能性がある。クレアチニンクリアランスに応じた用量調整が必要で、定期的な腎機能検査による監視が重要となる。
妊娠可能年齢の女性では、胎児への影響を考慮し、適切な避妊指導を行うとともに、妊娠判明時は直ちに服薬を中止する必要がある。
併用禁忌薬や相互作用のある薬剤との組み合わせにも注意が必要で、特に免疫抑制剤や生物学的製剤との併用は感染症リスクを著明に増加させる可能性がある。
定期的な血液検査、画像検査、患者への適切な服薬指導と症状観察の重要性を十分に理解し、多職種連携による包括的な管理体制を構築することが、ジセレカ錠の安全な使用には不可欠である。