生ワクチンは、病原体となるウイルスや細菌の毒性を弱めて病原性をなくしたものを原材料として作られています 。このワクチンでは、弱毒化というプロセスが重要で、ウイルスの増殖能力を維持しながらも本来の病気が発生しないように人為的に手を加えています 。
参考)https://www.wakuchin.net/about/type.html
弱毒化された病原体は、接種後に体内で増殖して免疫を高めていくため、実際にその病気にかかったときと同じような免疫システムが働きます 。このプロセスにより、自然感染による免疫とほぼ同等の強固な免疫を獲得することができます 。
参考)https://www.tokyo-hospital.com/archives/18542/
生ワクチンは以下のような感染症に対して使用されています。
参考)https://www.pfizervaccines.jp/about/vaccine
生ワクチンの最大の特徴は、細胞性免疫と液性免疫の両方を強力に誘導できることです 。弱毒化されたウイルスが体内に侵入すると、まず樹状細胞などの抗原提示細胞がこれを認識し、T細胞を活性化させます 。
参考)https://www.kachikukansen.org/kaiho/PDF/4-2-39.pdf
この過程で、CD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞)とCD8陽性T細胞(細胞傷害性T細胞)の両方が活性化されます 。B細胞も同時に刺激され、病原体特異的な抗体を産生する形質細胞へと分化します 。
参考)https://www.jsi-men-eki.org/immunology-system/
さらに重要なのは、免疫記憶の成立です。生ワクチン接種後には、メモリーB細胞とメモリーT細胞が形成され、同じ病原体に再度遭遇した際に迅速で強力な免疫応答を示すことができます 。このような免疫記憶により、多くの生ワクチンでは子どものころに1回接種すると効果がほぼ一生続くとされています 。
参考)https://www2.hosp.med.tottori-u.ac.jp/kanijiru/backnumber/vol8/special/31186.html
生ワクチンと不活化ワクチンには、それぞれ明確な利点と欠点があります。以下に主な違いをまとめました。
項目 | 生ワクチン | 不活化ワクチン |
---|---|---|
免疫効果 | 強固で長期持続 | 弱く短期間 |
接種回数 | 1〜2回 | 複数回必要 |
細胞性免疫 | 強く誘導される | 誘導されにくい |
安全性 | 軽い症状が出る可能性 | より安全 |
免疫不全者への使用 | 禁忌 | 使用可能 |
生ワクチンは免疫持続期間が長く、細胞性免疫が成立し、局所免疫も可能という利点があります 。一方で、移行抗体の干渉を受けやすく、病原性の復帰や変異の可能性があるという欠点もあります。
参考)https://www.hosp.jihs.go.jp/isc/080/FY2020/03.Immunology.pdf
不活化ワクチンは、移行抗体の干渉を受けにくく、免疫不全者や妊婦にも安全に投与できます 。しかし、細胞性免疫が誘導されにくく、単回投与では免疫効果が弱いため、数回接種して免疫を獲得する必要があります 。
参考)https://www.kenei-pharm.com/general/column/vol22/
生ワクチンには特有の注意点があります。最も重要なのは接種間隔で、注射生ワクチンを接種した後、別の注射生ワクチンを接種する場合は27日以上の間隔をあけることが必要です 。
参考)https://www.vaccine4all.jp/news-detail.php?npage=1amp;nid=41
これは異なる注射生ワクチン同士の干渉を防止し、ワクチンの有効性を維持するためです 。不活化ワクチンや経口生ワクチン(ロタウイルスワクチンなど)との接種間隔には制限はありません 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000590724.pdf
生ワクチンによる副反応には以下のようなものがあります。
参考)https://www.aj-clinic.com/column/3057/
これらの副反応は、ワクチンによる弱い感染状態によって生じるものです 。生ワクチンは体内でウイルスが増殖するため、発疹や発熱など何らかの症状がみられることがありますが、これは免疫が正常に機能している証拠でもあります 。
参考)https://www.vaccine4all.jp/news-detail.php?npage=3amp;nid=105
生ワクチンには絶対的な禁忌があります。妊婦や免疫が低下した人に投与すると、感染症を発症し重篤化することがあるため、これらの方への接種はできません 。
免疫不全状態には以下のような場合が含まれます。
移行抗体の影響も考慮すべき点です。特に生ワクチンでは、生体内で増えることが前提なので、母親から受け継いだ移行抗体によって容易に中和されやすく、その結果、中和されたワクチンでは十分な免疫が誘導されない可能性があります 。
帯状疱疹ワクチンを例にとると、生ワクチンは1回の接種で5年程度の効果が持続し、4〜6割程度の予防効果があります 。一方、不活化ワクチンでは9年以上90%くらいの効果が認められており、効果の持続期間と強度に違いがあることがわかります 。
参考)https://ikegaki-hifuka.com/blog/%E5%B8%AF%E7%8A%B6%E7%96%B1%E7%96%B9%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B32%E7%A8%AE%E9%A1%9E
生ワクチンの理解には、これらの特性を総合的に把握し、個々の患者の状況に応じた適切な選択と管理が重要です。