カデックス軟膏とユーパスタの違いと褥瘡と皮膚潰瘍

カデックス軟膏とユーパスタの違いを、褥瘡・皮膚潰瘍の視点で「成分」「作用機序」「使い分け」「注意点」まで整理します。あなたの現場では、滲出液や感染・ポケットにどう合わせて選びますか?

カデックス軟膏とユーパスタの違い

カデックス軟膏とユーパスタの違い(要点)
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有効成分と基剤が違う

カデックスは「ヨウ素+カデキソマー(ポリマー粒子)」、ユーパスタは「精製白糖+ポビドンヨード」。この違いが吸水・清浄化・肉芽への寄与を分けます。

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滲出液の多寡で選び方が変わる

どちらも滲出液が多い創で候補だが、吸水の“癖”が異なるため、創面が乾いてきた後の継続は注意が必要です。

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甲状腺・腎機能など全身リスクに注意

両剤ともヨウ素を含むため、甲状腺機能異常や腎機能障害、妊娠・授乳、新生児などでは添付文書に沿った慎重運用が重要です。

カデックス軟膏とユーパスタの違い:成分(ヨウ素・ポビドンヨード・精製白糖)


カデックス軟膏0.9%は「1g中ヨウ素9mg」を含有し、基剤としてカデキソマー(デキストリンポリマー)を用いる設計です。創面の滲出液を吸収しつつ、ヨウ素を徐々に放出して持続的な殺菌作用を狙う“ポリマー系ヨード外用”という位置づけになります。
一方、ユーパスタ(代表的な「精製白糖・ポビドンヨード配合軟膏」)は、一般に「精製白糖70%+ポビドンヨード3%」という配合で、白糖が占める割合が大きい点が特徴です。白糖は局所浸透圧を上げて浮腫軽減や線維芽細胞活性化に関与するとされ、ここが“ヨード単独系”と発想が異なります。


参考)https://www.semanticscholar.org/paper/b019078c909b46dc03f133724dcebeec6b425013

両者とも「ヨウ素」を創面に供給して抗菌性に寄与しますが、カデックスは“カデキソマー粒子が吸う→ヨウ素を出す”という機構が前面に出やすく、ユーパスタは“白糖の浸透圧効果+ポビドンヨードの殺菌”という二枚看板で理解すると整理しやすいです。

参考:褥瘡診療ガイドライン(外用薬の選択、滲出液が過剰な褥瘡での選択肢、TIME概念の整理)
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/zyokusou2023.pdf

カデックス軟膏とユーパスタの違い:作用機序(滲出液・創面清拭・殺菌作用)

カデックス軟膏は、滲出液等の吸収による創面の清浄化と、徐々に放出されるヨウ素による持続的な殺菌作用によって、潰瘍治癒促進を示すと添付文書内で説明されています。言い換えると「汚れを吸って、ヨードをじわじわ効かせる」ことで、感染・炎症やスラフが絡む局面に合わせやすい設計です。
また、適用上の注意として「患部を生理食塩液等で洗浄」「交換時には本剤を生理食塩液等で十分に洗浄除去」と明記されており、“塗って終わり”ではなく、洗浄・除去を含む運用設計である点が現場では重要です。ここを雑にすると、残存薬剤が評価を紛らわせたり、局所刺激の原因になり得ます。


ユーパスタ側(精製白糖・ポビドンヨード配合)は、ポビドンヨードが殺菌作用を持つことに加えて、白糖の創傷治癒作用は「局所的浸透圧の上昇による浮腫軽減」「線維芽細胞の活性化」に基づくとされています。さらに非臨床では、肉芽新生や表皮再生の促進、治癒日数短縮などが報告されています。

このため、同じ“ヨード系”でも、カデックスは「吸水・清浄化の強さ+持続放出」、ユーパスタは「浸透圧(浮腫・肉芽)+殺菌」という、効かせ方の重心が違うと説明できます。

カデックス軟膏とユーパスタの違い:適応(褥瘡・皮膚潰瘍・熱傷潰瘍)

適応(効能又は効果)は、両者とも大枠で重なります。カデックス軟膏は「褥瘡、皮膚潰瘍(熱傷潰瘍、下腿潰瘍)」とされ、ユーパスタ(精製白糖・ポビドンヨード配合)も同様に「褥瘡、皮膚潰瘍(熱傷潰瘍、下腿潰瘍)」が記載されています。
ただし、添付文書レベルで見ても「熱傷潰瘍の対象は“潰瘍”であり、新鮮熱傷(潰瘍が臨床的にみられない熱傷等)は別療法を考慮」という注意があり、適応疾患名が同じでも“今が潰瘍局面か”の判断が前提になります。創の時期(黒色期〜黄色期、赤色期〜白色期)を見立てる基本がズレると、薬剤選択以前に治療戦略が崩れます。

また、褥瘡診療ガイドライン(日本皮膚科学会)では、ステージIII以上の褥瘡に対する外用薬として「カデキソマー・ヨウ素」や「ポビドンヨード・シュガー」が挙げられており、どちらも“使われる土俵が同じ”ことが分かります。つまり「どちらが万能か」より「創面のTIME(T/I/M/E)と滲出液、ポケット、感染兆候にどう合わせるか」が現実解になります。


参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1416577/

カデックス軟膏とユーパスタの違い:用法用量(1日1回・1日1~2回・3mm)

カデックス軟膏は、潰瘍面を清拭後「通常1日1回、患部に約3mmの厚さに塗布(直径4cmあたり3g目安)」で、滲出液が多い場合は「1日2回」と具体的に書かれています。厚み(3mm)と面積あたりの目安(直径4cmあたり3g)が明記されている外用は意外と多くないため、教育ツールとしても使いやすい記載です。
ユーパスタ(精製白糖・ポビドンヨード配合軟膏)は「症状及び病巣の広さに応じて適量」を基本にしつつ、潰瘍面清拭後「1日1~2回ガーゼにのばして貼付、又は患部に直接塗布しその上をガーゼで保護」と、運用イメージ(ガーゼ展延・貼付)がセットで書かれています。実務的には“ガーゼにのばす”指示があることで、ポケットや辺縁保護を意識したドレッシング設計に入りやすいメリットがあります。

ここが「違い」として効いてくるのは、①塗布の再現性(厚さ指定の有無)、②ガーゼ運用を前提にした設計、③交換タイミングの考え方です。現場でありがちな失敗は、カデックスを“何となく厚めに盛る”、ユーパスタを“とりあえず直塗りしてガーゼだけ当てる”など、製剤が想定する使い方からズレることなので、チーム内の手技統一は地味にアウトカムへ効きます。

カデックス軟膏とユーパスタの違い:独自視点(ヨウ素吸収・尿中排泄・評価の落とし穴)

「どちらも局所薬」と捉えがちですが、添付文書を読むと“吸収され得る薬”として扱うべき場面が見えます。カデックスでは、皮膚潰瘍患者で1日1回2週間使用した際に「尿中ヨウ素排泄量が投与期間中有意に上昇」し、投与終了後3~7日でほぼ前値へ戻ったという記載があり、創面からのヨウ素吸収と排泄が具体的に示されています。つまり、広範囲・長期・高頻度の運用は「局所」では済まない可能性がある、ということです。
同様に、ユーパスタ側でも甲状腺機能異常の注意、腎不全等で血清中総ヨウ素濃度が著しく高くなる報告への注意が明記され、さらに“白糖”ですらラットで血中濃度データが記載されるなど、吸収・体内動態への視線が置かれています。現場の「とにかく滲出液が多いからヨード系を広く厚く」の発想は、患者背景によってはリスクを上げます。

もう一つの“落とし穴”は、創評価(DESIGN-R等)を回すときに「薬剤が残っている」「洗浄が不十分」「ガーゼ交換で創面がこすれている」といった運用由来のノイズが入ることです。カデックス添付文書に「交換時に十分に洗浄除去」と書かれているのは、単なる注意ではなく、評価・安全性・有効性の前提条件でもあります。忙しい現場ほど、ここをルール化(誰が、何で、どこまで洗う)しておくと、薬剤選択の議論が“薬の好み”から“創面管理の品質”へ進みやすくなります。


最後に、ガイドラインの記載は「滲出液が過剰な場合はカデキソマー・ヨウ素、ポビドンヨード・シュガー等から選択」と整理しており、結局はTIMEのM(滲出液)とI(感染・炎症)をどう見立てるかが選択の核です。意外に効くのは、創の“乾き始め”のタイミングで、吸水性の強い外用を漫然と継続しないこと(乾燥で自己融解や細胞増殖に不利になる)で、これは薬剤選択の問題というより、創のフェーズを読み替える力の問題です。




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