腎不全の症状と治療方法
腎不全の基本知識
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腎不全とは
腎臓の機能が30%以下に低下した状態で、急性と慢性に分類されます。
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主な症状
むくみ、尿異常、疲労感、貧血、高血圧など、進行に伴い症状が変化します。
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治療アプローチ
食事療法、薬物療法、透析、腎移植など、ステージに応じた治療が必要です。
腎不全の初期症状から末期までの進行ステージ
腎不全は腎臓の機能が正常の30%以下に低下した状態を指し、進行度によって複数のステージに分類されます。慢性腎臓病(CKD)の進行度は主にGFR(糸球体ろ過量)の値を基準に評価され、G1からG5までの6つのステージに分けられています。
ステージG1(GFR 90以上)とG2(GFR 60~89)では、腎臓に障害が見られるものの、機能はまだ比較的保たれています。この段階では自覚症状はほとんどなく、尿検査や血液検査で異常が見つかることが多いのが特徴です。ただし、たんぱく尿が多い場合には、むくみが現れることがあります。
ステージG3になると腎機能の低下がより顕著になります。G3aは(GFR 45~59)、G3bは(GFR 30~44)で、以下のような症状が現れ始めます。
- むくみ(浮腫)
- 手足がつる感覚
- 夜間頻尿
- 疲れやすさ(腎性貧血による)
- 顔色の悪さ
これらの症状は、電解質バランスの崩れや造血ホルモンの産生低下によるものです。
ステージG4(GFR 15~29)になると、腎機能は高度に低下し、症状も重篤化します。
- むくみの悪化
- 尿量の減少
- 高血圧
- 体のだるさ
- 頭痛
- 吐き気
- 食欲低下
- 睡眠障害
これらは尿毒素が血液中に蓄積することによる尿毒症の症状です。
最後のステージG5(GFR 15未満)は末期腎不全と呼ばれ、腎機能がほぼ失われた状態です。尿毒症の症状が進行し、以下のような命に関わる症状が現れます。
この段階では、人工透析や腎移植などの腎代替療法が必要となります。
腎不全の主な原因と発症メカニズム
腎不全は急性と慢性の二つに大別され、それぞれ異なる原因によって引き起こされます。
慢性腎不全の主な原因:
- 糖尿病:長期的な高血糖が腎臓の血管を傷つけ、腎機能低下を招きます
- 高血圧:腎臓の血管に負担をかけ、徐々に腎機能を低下させます
- 免疫系の異常:特に腎炎などの自己免疫疾患が原因となることがあります
- 薬剤アレルギー:特定の薬剤によって腎機能が損なわれることがあります
- 生活習慣:運動不足や肥満も慢性腎臓病のリスク要因となります
急性腎不全の主な原因:
- 出血による急激な血圧低下:腎臓への血流が不足し、急速に機能が低下します
- 脱水症状:体内の水分不足によって腎機能が急激に悪化します
- 感染症:重度の感染症によって腎臓の血流が阻害されることがあります
発症メカニズム:
腎臓は主に以下の7つの重要な機能を担っており、腎不全はこれらの機能低下によって様々な症状を引き起こします。
- 尿毒素の排出: 腎臓が老廃物を排出できなくなると、尿毒素が蓄積し、消化器、精神・神経、皮膚、呼吸器、眼などに多様な症状が現れます。
- 水分調節: 腎機能低下により体内の水分バランスが崩れ、循環血液量の増加、血圧上昇、心臓肥大、肺水腫などを引き起こします。これにより、むくみ、動悸、息切れなどの症状が現れます。
- 電解質調節: ナトリウム、カリウム、リン、マグネシウムなどの電解質バランスが崩れ、それぞれ特有の症状を引き起こします。例えば、カリウムの蓄積は手指のしびれや胸の苦しさを招きます。
- 酸塩基平衡の維持: 腎臓はアルカリ性物質を作り出し、血液のpHを調整しています。この機能が低下すると、血液が酸性に傾き、呼吸や電解質の異常が生じます。
- 造血機能: 腎臓はエリスロポエチンというホルモンを分泌し、赤血球の生成を促しています。この機能が低下すると貧血が生じ、立ちくらみや息切れなどの症状が現れます。
- カルシウム代謝: 腎臓はビタミンDを活性化し、カルシウムとリンのバランスを調整しています。この機能が低下すると、骨がもろくなり、骨折のリスクが高まります。
- 血圧調節: 腎臓は水分・塩分の排出を通じて血圧を調節しています。機能低下によって高血圧が生じることがあります。
腎不全が進行すると、これらの機能が次第に損なわれ、様々な症状が段階的に現れるようになります。初期段階では自覚症状がほとんどないため、定期的な健康診断による早期発見が重要です。
ステージ別の腎不全の治療法と食事制限
腎不全の治療法と食事制限は、病状のステージによって異なります。各ステージに応じた適切な治療を行うことで、腎機能の低下を遅らせ、QOL(生活の質)を維持することができます。
ステージG1・G2(初期段階)の治療:
この段階では、腎機能の低下を引き起こしている原因疾患の治療が中心となります。
- 原因疾患の治療: 糸球体腎炎の場合は精密検査を受け、専門的な治療が必要です。
- 生活習慣の改善:
- 塩分制限:一日の塩分摂取量を6g未満に抑える
- カロリー制限:特に肥満がある場合は重要
- 禁煙
- 適度な運動
- 体重管理
- たんぱく質制限: たんぱく尿がみられる場合は、たんぱく質の摂取を制限します。
- 薬物療法: 生活習慣の改善だけでは効果が不十分な場合、高血圧や脂質異常、糖尿病などに対する薬物療法を行います。
ステージG3(中期)の治療:
腎機能が約半分以下まで低下している段階で、腎不全に伴う合併症の治療も必要になります[