医療従事者向けに「甘草を含む漢方薬一覧」を作るとき、最初に揃えたいのは“処方名”だけでなく“1日あたりの甘草量”です。甘草は医療用・一般用を問わず頻用され、含有量が多いほど偽アルドステロン症(低カリウム血症、浮腫、高血圧など)を見落としにくくする必要があるためです。特に外来では「どれに入っているか」より「どれだけ入っているか」が指導内容を左右します。
以下は、公開されている表データに基づく“例”として、臨床で遭遇しやすい代表処方を抜粋し、含有量帯ごとに並べ替えたものです(全処方を網羅する場合は、同じ形式で追記していく運用が扱いやすいです)。含有量は資料の表記に準拠し、同一処方でもメーカー差・剤形差がある点は別途IF等で確認します。
✅ 含有量が多い(注意喚起を強めたい)
| 甘草量(g/日) | 識別番号 | 漢方製剤名 | 臨床メモ |
|---|---|---|---|
| 6.0 | 68 | 芍薬甘草湯 | 短期で効かせやすい一方、甘草高含有で低Kや浮腫に注意。 |
| 5.0 | 72 | 甘麦大棗湯 | 鎮静・不眠等で使われることがあり、長期化で重複に注意。 |
| 3.0 | 19 | 小青竜湯 | アレルギー・鼻症状で処方されやすく、市販薬でも遭遇。 |
(出典:漢方薬表データ) https://pha.medicalonline.jp/img/cat_desc/MPa_table3.html
✅ 中等量(併用で総量が増えやすい)
| 甘草量(g/日) | 識別番号 | 漢方製剤名 | 臨床メモ |
|---|---|---|---|
| 2.5 | 14 | 半夏瀉心湯 | 消化器で継続処方になりやすく、総量評価が重要。 |
| 2.0 | 1 | 葛根湯 | “かぜ”で短期でも、他剤併用で重複しやすい。 |
| 2.0 | 9 | 小柴胡湯 | 長期投与になり得る領域で、定期的な症状確認が必要。 |
| 2.0 | 114 | 柴苓湯 | 内科で使われやすく、複数診療科での重複に注意。 |
(出典:漢方薬表データ) https://pha.medicalonline.jp/img/cat_desc/MPa_table3.html
✅ 少量でも「数で増える」ゾーン(重複チェックが主役)
| 甘草量(g/日) | 識別番号 | 漢方製剤名 | 臨床メモ |
|---|---|---|---|
| 1.5 | 24 | 加味逍遙散 | 継続例が多く、他の漢方・市販薬との合算が盲点。 |
| 1.5 | 54 | 抑肝散 | 高齢者で使われることがあり、低Kや血圧変動を拾う。 |
| 1.0 | 43 | 六君子湯 | 胃部不快で継続しやすい。複数処方の“足し算”に注意。 |
(出典:漢方薬表データ) https://pha.medicalonline.jp/img/cat_desc/MPa_table3.html
このように「甘草を含む漢方薬一覧」を含有量で分けておくと、薬歴を見た瞬間に“重点的に聞くべき患者”が浮かびます。例えば、芍薬甘草湯(6.0g/日)に加えて、かぜの自己治療で葛根湯(2.0g/日)を買い足していた、という構図は現場で起きやすい典型です。
甘草の代表的な安全性テーマは、偽アルドステロン症(pseudoaldosteronism)です。原因の中心は甘草の主成分グリチルリチンで、体内で代謝されて生理活性を示す過程で、腎尿細管でのステロイド代謝酵素(11β-HSD2)阻害を介し、ナトリウム貯留・カリウム喪失を引き起こしやすくなると説明されています。結果として、浮腫、高血圧、低カリウム血症、筋力低下、ミオパチー、重い場合は横紋筋融解などが問題になります。
ここで重要なのは、患者の訴えが「むくんできた」「最近血圧が上がる」「足がつる」など非特異的で、しかも“元の症状”と混ざりやすい点です。たとえば、こむら返りで芍薬甘草湯を使っている患者が、低カリウム血症でさらに筋症状を自覚し、「効かなくなった」と受け取るケースもあり得ます。医療従事者側が“症状の方向性”として、副作用の可能性を常に差し込む必要があります。
【意外に見落とされるポイント】
参考:甘草と偽アルドステロン症の機序・安全使用(医療従事者向けの解説)
甘草配合処方と偽アルドステロン症(機序、グリチルリチン量、pH影響、JADER解析の考え方)
「甘草を含む漢方薬一覧」を記事にする目的が医療従事者の実務支援であるなら、一覧の次に置くべきは“何を聞き、何を観察するか”のテンプレ化です。特に高齢者・長期投与・複数処方は、甘草関連有害事象の温床になりやすく、診察間隔が空くほど発見が遅れます。
服薬指導での実用フレーズ(例)
モニタリングの現場Tips
検索上位の一般的な「甘草を含む漢方薬一覧」記事では、“甘草量=リスク”で単純化されがちです。けれど、臨床での安全性の肌感に近づけるなら、「同じ甘草量でもグリチルリチン(GL)としてどれだけ抽出されるか」が一段深い視点になります。
研究報告では、甘草配合処方の多くで「甘草配合量とGL含量は概ね比例」する一方で、小青竜湯はその相関を大きく下回り、その理由として五味子が煎じ液のpHを低下させ、GLの抽出効率を下げた可能性が示されています。さらに、GL抽出効率はpHと相関し、pHが低い条件ではGLが抽出されにくい(酸性条件で低下)というデータが示されています。つまり、処方構成が“甘草成分の実質量”を動かし得る、ということです。
この視点を記事に入れるメリットは2つあります。1つ目は、単なる丸暗記の一覧から、患者ごとの安全性評価(処方の意図・構成・総量)へ読者の思考を誘導できることです。2つ目は、患者が複数の漢方を併用しているときに、「甘草量の足し算」だけでなく“処方の性格”も含めて説明しやすくなることです(ただし実務ではまず総量チェックが最優先で、抽出効率は次の視点として扱うのが安全です)。
参考:甘草配合処方のGL含量、pH、五味子の影響(医療従事者向けの詳細)
甘草配合処方のグリチルリチン含量とpH・五味子の関係(小青竜湯が例外になり得る理由)
最後に、一覧記事の価値を一段上げるのが「現場で起きる重複パターン」を具体化することです。医療用漢方薬を処方していても、患者はドラッグストアで“かぜ薬”“鼻炎対策”“胃腸対策”として漢方製剤を追加購入することがあります。ここに甘草が含まれていると、本人の自覚がないまま総量が上がります。
重複が起きやすい典型例
薬剤部・外来での実装アイデア
「甘草を含む漢方薬一覧」は、単なる羅列で終わらせず、こうした重複の“起こり方”まで書くことで、読者(医療従事者)が明日からの確認行動に移しやすくなります。