抑肝散の副作用として最も頻繁に報告されるのは、消化器系症状と皮膚症状です。
消化器系症状:
皮膚症状:
その他の症状:
これらの症状は一般的に軽度であり、服用を中止するか継続するうちに軽減することが多いとされています。しかし、患者が症状の継続や悪化を感じた場合は、速やかに医療機関への相談を促すことが重要です。
抑肝散には稀ながら重篤な副作用が報告されており、医療従事者は初期症状を正確に把握し、患者指導に活かす必要があります。
間質性肺炎:
間質性肺炎は肺の炎症による重篤な副作用で、早期発見が予後に大きく影響します。特に高齢者では症状が軽微でも進行が早い可能性があるため、定期的な問診が重要です。
肝機能障害・黄疸:
肝機能障害は自覚症状がない場合もあり、定期的な肝機能検査の実施を検討する必要があります。AST、ALT、Al-P、γ-GTPの著しい上昇を確認することで早期発見が可能です。
偽アルドステロン症:
偽アルドステロン症は抑肝散に含まれる甘草成分によるもので、低カリウム血症を伴う深刻な合併症につながる可能性があります。
抑肝散に含まれる甘草(1日1.5g)は、他の漢方薬と比較して量は多くないものの、偽アルドステロン症の報告が芍薬甘草湯に次いで多いという特徴があります。
甘草に含まれるグリチルリチンは、ミネラルコルチコイド様作用により以下の症状を引き起こします。
偽アルドステロン症の病態:
重症化すると以下の合併症が生じる危険性があります。
特に高齢者や心臓・腎臓機能が低下している患者では、甘草による副作用のリスクが高まるため、より慎重な監視が必要です。
認知症のBPSD(行動・心理症状)改善目的で抑肝散を処方される高齢者では、特有のリスクファクターを考慮した服薬指導が求められます。
高齢者における危険因子:
長期投与時の注意点:
認知症患者では症状の訴えが困難な場合があるため、介護者や家族への副作用説明も重要な服薬指導の一環となります。また、抑肝散の甘草含有量が少量であることが、副作用初期症状の発見を遅らせる要因となることも理解しておく必要があります。
効果的な副作用監視のためには、系統的な服薬指導プロトコールの確立が重要です。
初回処方時の指導内容:
📋 副作用チェックリスト
定期的なモニタリング項目:
🩺 身体所見の確認
検査値による監視:
🔬 推奨検査項目
特に長期服用患者では、3ヶ月毎の検査実施を検討し、異常値が認められた場合は速やかな処方見直しを行うことが推奨されます。
患者・家族への教育ポイント:
抑肝散の副作用管理には、軽微な症状から重篤な合併症まで幅広い知識と継続的な監視体制が不可欠です。医療従事者は患者の安全性確保のため、個別の背景因子を考慮した適切な服薬指導を実践することが求められます。
参考リンク(薬剤師向け抑肝散の副作用詳細)。
【抑肝散のリスク】副作用と初期症状を知ろう - 薬剤師
参考リンク(医療用抑肝散の添付文書情報)。
ツムラ抑肝散エキス顆粒(医療用) | くすりのしおり