葛根湯の副作用症状と注意点解説医療従事者

医療従事者向けに葛根湯の副作用について詳しく解説。偽アルドステロン症から薬疹まで、知っておくべき症状と対処法は?

葛根湯副作用症状注意点

葛根湯の主要副作用と発症機序
🫀
循環器系副作用

動悸・頻脈・血圧上昇などのマオウによる交感神経刺激症状

💊
偽アルドステロン症

カンゾウ成分によるむくみ・脱力感・筋肉痛の重篤副作用

🎯
皮膚・過敏症反応

発疹・かゆみ・薬剤性肺障害などのアレルギー関連症状

葛根湯は風邪の初期症状に広く処方される代表的な漢方薬ですが、近年副作用報告が増加しており、医療従事者として適切な知識が必要です。厚生労働省の副作用情報では、一般用漢方製剤において葛根湯は防風通聖散に次いで2番目に多い副作用報告数を記録しています。

葛根湯薬疹過敏症状メカニズム

葛根湯の副作用で最も頻度が高いのが薬疹・過敏症です。一般用漢方製剤の調査では、葛根湯の副作用の約46.7%が薬疹・過敏症であったと報告されています。これらの症状は以下のような特徴を示します:
主要症状

  • 発疹、発赤、かゆみ 🔴
  • 蕁麻疹様症状
  • 皮膚の紅斑
  • 掻痒感

発症機序と診断
薬疹の診断には好塩基球活性化試験(BAT)が有用とされており、葛根湯による薬剤性肺障害の診断でも効果が報告されています。BATは好塩基球の活性化により細胞表面のCD203c発現量が増加することを利用した検査法で、従来のDLSTより特異度が高いことが期待されています。
対処法

葛根湯偽アルドステロン症重篤副作用

カンゾウ(甘草)に含まれるグリチルリチン酸による偽アルドステロン症は、葛根湯の最も重篤な副作用の一つです。葛根湯7.5g中にカンゾウが2g含まれており、長期服用や大量摂取により発症リスクが高まります。
病態生理
偽アルドステロン症は、グリチルリチン酸が11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素2型を阻害することで、コルチゾールがミネラルコルチコイド受容体を活性化することにより発症します。これにより以下の症状が出現。
臨床症状

検査所見

  • 血清カリウム値の低下(3.5mEq/L未満)
  • 血清ナトリウム値の上昇
  • レニン活性の低下
  • アルドステロン値の低下

ハイリスク患者

  • 高齢者
  • 腎機能低下例
  • 他のカンゾウ含有製剤併用例
  • 利尿薬服用例

葛根湯マオウ由来交感神経刺激症状

マオウ(麻黄)に含まれるエフェドリン類は強力な交感神経刺激作用を有し、様々な副作用を引き起こします。これらの症状は特に体力が中等度以上の患者で発現しやすいとされています。
循環器系症状

  • 動悸・頻脈 ❤️‍🔥
  • 血圧上昇
  • 不整脈
  • 胸部不快感

中枢神経系症状

  • 不眠・睡眠障害 😴
  • 精神興奮・イライラ感
  • 頭痛
  • めまい

その他の症状

  • 発汗過多
  • 手の震え
  • 全身脱力感
  • 排尿障害(特に前立腺肥大患者)

作用機序
エフェドリンはアドレナリン受容体を直接刺激するとともに、ノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで交感神経系を活性化します。これにより心拍数増加、血管収縮、気管支拡張などの作用が現れます。

 

葛根湯消化器副作用胃腸障害

葛根湯は体力中等度以上の患者に適応される処方のため、胃腸の弱い患者では消化器症状が出現しやすくなります。
主要症状

  • 食欲不振 🍽️
  • 胃部不快感
  • 悪心・嘔吐
  • 腹部膨満感
  • 下痢

発症要因

  • 生薬の刺激作用
  • 体質不適合
  • 空腹時服用
  • 過量摂取

予防策

  • 食後服用の推奨
  • 適量での服用
  • 体質評価の重要性
  • 症状観察の徹底

葛根湯稀有副作用間質性肺炎

葛根湯による間質性肺炎は稀な副作用ですが、重篤な転帰を辿る可能性があり注意が必要です。これまでに複数の症例報告があり、好塩基球活性化試験による診断の有用性も示されています。
臨床症状

  • 乾性咳嗽 🫁
  • 労作時息切れ
  • 発熱
  • 全身倦怠感

画像所見

  • 胸部CT:すりガラス状陰影
  • 両肺下葉優位の病変
  • 器質化肺炎様変化

診断と治療

  • 薬剤リンパ球刺激試験(DLST)
  • 好塩基球活性化試験(BAT)
  • 気管支鏡検査(必要時)
  • ステロイド療法の適応

注意すべき患者背景

  • 高齢者
  • 既存の肺疾患
  • 喫煙歴
  • 過去の薬剤性肺障害歴

葛根湯による間質性肺炎は、服用開始から数日から数週間で発症することが多く、早期の診断と治療介入が予後を左右します。特に咳嗽や息切れなどの呼吸器症状を訴える患者では、胸部画像検査を含めた精査を行う必要があります。

 

漢方薬に対する好塩基球活性化試験の偽陽性回避に関する研究
また、医療従事者として理解すべき重要な点は、これらの副作用が必ずしも用量依存性ではなく、個人の体質や併用薬、基礎疾患によって発症リスクが大きく異なることです。特に一般用医薬品として市販されている葛根湯では、患者の自己判断による不適切な使用により副作用リスクが高まる可能性があるため、適切な服薬指導が重要になります。