臨床的に「寛解」と判断したリウマチ患者の30〜40%で、エコーを当てると滑膜炎が残存しています。
関節リウマチの早期診断では、2010年ACR/EULAR分類基準をベースにした点数評価が標準です。腫れている関節の数・症状持続期間・血液検査・炎症マーカーの4項目を点数化し、6点以上でリウマチと診断します。 medicalnote(https://medicalnote.jp/diseases/%E9%96%A2%E7%AF%80%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%9E%E3%83%81/contents/231013-001-TH)
しかしこの分類基準だけでは、診察所見のみによる感度は58.5%にとどまるという報告があります。関節エコー所見を組み合わせると、グレースケール(GS≥1)基準で感度が78.0%まで向上します。 innervision.co(https://www.innervision.co.jp/sp/ad/suite/canonmedical/seminarreport/1308)
意外ですね。
特異度を優先したい場面では、エコーの基準を中等度(GS≥2またはPDシグナル≥1)に上げると、特異度が93.7%と非常に高くなります。これは「診断を確定したい」場面と「見落としを減らしたい」場面で、エコー基準の閾値を使い分けられるということです。感度・特異度のトレードオフを制御できるのが基本です。 innervision.co(https://www.innervision.co.jp/sp/ad/suite/canonmedical/seminarreport/1308)
実際の診療では、診察で腫れの有無が判断しにくい手関節・膝関節・MTP関節(中足趾節関節)で、診察では捉えられない滑膜炎がエコーで検出されるケースが多数あります。小関節(指関節)の評価には10〜13MHzの高周波プローブ、大・中関節には7.5〜10MHzのプローブを使い分けるのが原則です。 hakatara(http://www.hakatara.net/images/no12/12-4.pdf)
| 評価方法 | 感度 | 特異度 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 診察所見のみ | 58.5% | 79.4% | 初期スクリーニング |
| エコー(GS≥1)追加 | 78.0% | 79.4% | 見落とし防止・早期診断 |
| エコー(GS≥2/PD≥1)追加 | 56.1% | 93.7% | 診断確定・除外診断 |
参考:千葉大学 池田啓氏による関節エコーの診断精度に関する講演内容
超音波画像診断が創るリウマチ診療の最前線(INNERVISION)
「RF・抗CCP抗体が陰性ならリウマチではない」という判断は、臨床の現場でも起きやすい思い込みです。実際には、リウマチ患者の約20%はRF・抗CCP抗体ともに陰性という報告があります。 yukawa-clinic(https://yukawa-clinic.jp/knowledge/diagnosis/rf_acpa-none.html)
つまり陰性=否定、ではありません。
血清陰性例では分類基準を満たしにくく、診断が遅れる傾向があります。特に大関節(肩・膝)で発症する場合や、高齢発症例に多いとされています。発症半年以内では、RFも抗CCP抗体も感度が50%程度に下がるため、症状経過の追跡と組み合わせた評価が必須です。 ompu.ac(https://www.ompu.ac.jp/u-deps/in4/riu/patient/magazine_vol09.pdf)
こういったケースで関節エコーは特に威力を発揮します。エコーで手関節・指MCP関節・第5足趾MTP関節といった、リウマチに特異的な関節部位の滑膜炎・腱鞘炎の有無を確認することで、血液検査だけでは取りこぼす症例を拾い上げられます。 jseikei(https://www.jseikei.com/rheumatoid-arthritis/ra-us-echo.html)
痛みが広範囲にある場合は、これらリウマチの好発部位を優先的にスキャンし、必要に応じて足趾関節を追加するプロトコルが現実的です。これが鑑別の基本です。 jseikei(https://www.jseikei.com/rheumatoid-arthritis/ra-us-echo.html)
参考:血清反応陰性リウマチの診断フローと関節エコーの役割
実は関節リウマチかも?血液検査は陰性なのに関節が痛い(城東整形外科)
DAS28・SDAI・CDAIなどの臨床スコアで寛解を達成しても、関節破壊が進行し続ける患者が存在することが分かっています。そういった患者を関節エコーで評価すると、関節炎が残存していることが多いです。 medical-b(https://medical-b.jp/b02-01-034/book035-05/)
ここが盲点です。
実際、CRPが0で臨床的寛解と判断されたリウマチ患者に関節エコーを施行すると、30〜40%の患者で滑膜炎が残存しているという報告があります。この「画像的残存炎症」を放置すると、骨破壊のリスクが上がります。 seasons-kanagawa(https://seasons-kanagawa.jp/ra/ra-pocus.html)
関節エコーで滑膜炎を評価する際、グレースケール(GS)とパワードプラ(PD)の2つの指標を組み合わせるのが標準です。
注意点として、プローブで関節を圧迫しすぎると、わずかなPDシグナルが消えてしまうことがあります。ゼリーを多めに使い、プローブを押さえつけないのが基本手技の原則です。 hiroringi.or(https://hiroringi.or.jp/wp/wp-content/uploads/2024/06/93e251e24c236501e24ece9d86dbc1fb.pdf)
寛解判定に使われる7-joint ultrasound scoreでは、手関節・MCP関節・PIP関節・膝関節・MTP関節を含む7関節を評価します。この7関節すべてで滑膜炎がない状態(USスコア=0)が、再発しにくい「真の寛解」の目安とされています。 rheumatology.co(https://rheumatology.co.jp/7-joint-ultrasound-score/)
参考:リウマチ診療の関節エコー評価プロトコル(7-joint ultrasound score)
関節リウマチの関節エコーで、どの関節を評価するか【7-joint ultrasound scoreについて】(豊田土橋リウマチクリニック)
レントゲン検査は関節リウマチの標準的な画像評価ですが、骨破壊(骨びらん)をレントゲンで確認できるようになる頃には、すでにある程度の骨破壊が進行しています。これが従来のリウマチ画像診断の限界でした。 jseikei(https://www.jseikei.com/rheumatoid-arthritis/ra-us-echo.html)
早期に見つけないと手遅れです。
関節エコーを使うと、レントゲンでは見えない極早期の骨びらんを検出できます。これはリウマチの難治化を防ぐうえで非常に重要です。横浜市立大学附属市民総合医療センターのように、初診時から全例で関節エコーを施行する施設もあります。 youtube(https://www.youtube.com/watch?v=6cYZkwaDNpQ)
また、深い関節(肩関節・股関節)は診察で腫れを確認しにくいのですが、エコーで滑液貯留や滑膜肥厚を評価できます。ただし、肩・股関節はエコーでも評価が難しいケースがあるため、必要に応じてMRI検査を追加するのが現実的な対応です。 jseikei(https://www.jseikei.com/rheumatoid-arthritis/ra-us-echo.html)
| 検査 | 骨びらん検出 | 滑膜炎評価 | コスト・簡便性 |
|---|---|---|---|
| レントゲン | 中等度以降のみ | × | 低コスト・簡便 |
| 関節エコー | 極早期から可能 | ◎(GS+PD) | 低コスト・ベッドサイド可 |
| MRI | ◎ | ◎ | 高コスト・時間がかかる |
骨びらんの早期検出という点では、PDUSスコアの感度92.3%・特異度91.7%という報告もあり、診断ツールとして高い精度が示されています。 ra-hp(https://ra-hp.jp/wp-ra-hp/wp-content/uploads/2022/10/ultrasonography.pdf)
参考:リウマチ診療における超音波の総合的な役割
実際に関節エコーを臨床導入する際、「どの関節を・どの順番で・どのように撮像するか」の標準化が重要です。日本リウマチ学会は2025年に「リウマチ診療のための関節エコー撮像法の手引き 改訂版」を公表しており、各関節の撮像法が詳細に規定されています。 ryumachi-jp(https://www.ryumachi-jp.com/publish/others/echo2025/)
手引きの活用が近道です。
この手引きでは、手指(MCP関節・背側縦断)、手関節(背側・橈側寄り縦断)、肘関節(屈側縦断)、膝関節(膝蓋上嚢縦断)、足趾関節など主要関節の撮像ポジションが細かく規定されています。施設内でプロトコルを統一する際の基準として直接活用できます。 ryumachi-jp(https://www.ryumachi-jp.com/publish/others/echo2025/)
撮像時のポイントをまとめると以下の通りです。
エコー所見を治療強化の判断に組み込むことで、活動性滑膜炎が残存しているかどうかを客観的に評価でき、治療強化決定に明らかな影響を与えるという実臨床データもあります。臨床スコアとエコーの両方を組み合わせた意思決定が、関節破壊の抑制につながります。 congress.jamt.or(http://congress.jamt.or.jp/j67/pdf/join.php?f%5B%5D=general%2F0257.pdf&f%5B%5D=general%2F0258.pdf&f%5B%5D=general%2F0259.pdf&f%5B%5D=general%2F0260.pdf)
参考:日本リウマチ学会による公式撮像プロトコル
リウマチ診療のための関節エコー撮像法の手引き 改訂版(日本リウマチ学会)