骨吸収を抑えるビスフォスフォネートを長期投与すると、むしろ顎骨が壊死して骨が脆くなることがあります。 tosu-motomachishika(https://www.tosu-motomachishika.com/blog/post-12/)

骨吸収の期間は約40日間、一方で骨形成の期間は約140日間とされています。 骨は「壊す」より「造る」ほうが3倍以上の時間がかかります。 成人の骨格全体では、常時3〜5%がリモデリング中という計算になります。 physioapproach(https://physioapproach.com/kotuhakai-kotusinsei.html)
| フェーズ | 担当細胞 | 期間(目安) | 主なシグナル |
|---|---|---|---|
| 骨吸収 | 破骨細胞 | 約40日 | RANKL → RANK |
| 骨形成 | 骨芽細胞 | 約140日 | TGF-β、IGF-1など |
健常な骨組織では、RANKL量とOPG量がほぼ均衡しています。 しかし歯周炎組織では、OPGよりもRANKLが優位となり歯槽骨吸収が亢進することが研究で示されています。 RANKLとOPGの比率(RANKL/OPG比)が、骨の健康状態を反映する指標になるということですね。 kaken.nii.ac(https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-20592425/20592425seika.pdf)
歯周病は「口腔細菌に対する炎症応答」と「それに続発する歯の支持骨破壊」を特徴とする疾患です。 炎症環境下では、歯肉線維芽細胞・骨芽細胞・Tリンパ球などがRANKLを過剰産生し、破骨細胞を集中的に活性化します。 骨吸収が加速するということです。 nagasaki-u.ac(http://www.nagasaki-u.ac.jp/zaigaku/ronbun/ronbun0503/shigaku0503/shigkau_kou139ronbun.pdf)
さらに2022年の東京農工大学の研究では、これまでLPS(細菌由来)が主因とされていた歯周病の骨吸収に、二本鎖RNA(dsRNA)を介する自然免疫応答の新たな経路があることが示されました。 細菌だけでなく、ウイルスや自己細胞由来のRNAも炎症性骨破壊に関与するという知見です。 これまでの「歯周病=細菌性」という単純な構図に再考を迫る研究です。 tuat.ac(https://www.tuat.ac.jp/outline/disclosure/pressrelease/2021/20220215_01.html)
臨床的には、歯槽骨吸収が進行すると歯を支える骨(歯槽骨)が消失し、最終的に歯の喪失につながります。 歯科医師・歯科衛生士の立場では、骨吸収の抑制が歯の保存に直結します。 RANKL/OPG比を意識した歯周治療の設計が重要です。 sakai-dent(https://www.sakai-dent.com/osteoporosis-dental-health/)
ビスフォスフォネート(BP)製剤は、骨のハイドロキシアパタイトと結合し破骨細胞に取り込まれてアポトーシスを誘導することで、骨吸収を強力に抑制します。 骨粗鬆症・悪性腫瘍の骨転移・多発性骨髄腫などの治療に広く使われています。 ここが重要なポイントです。 webview.isho(https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1542101575)
しかし、BP製剤を長期投与すると破骨細胞が不活化され、骨のリモデリングが過度に抑制される副作用が現れます。 骨に微小骨折が蓄積し、血管新生まで抑えられた結果、骨細胞が壊死するBRONJ(ビスフォスフォネート関連顎骨壊死)を発症するリスクがあります。 骨吸収を抑えすぎると骨が脆くなる、という逆説的な病態です。 osakadent-dousou(https://www.osakadent-dousou.jp/wp-content/uploads/2022/03/rep191_1.pdf)
顎骨は他の骨と比べて骨代謝回転が速く、口腔内細菌にさらされ続ける特殊な環境にあります。 そのため、BPを服用中の患者に抜歯などの侵襲的歯科処置を行う際は、事前に休薬期間を設けるなどのリスク管理が必要です。 処置前に服薬歴を必ず確認することが原則です。 osakadent-dousou(https://www.osakadent-dousou.jp/wp-content/uploads/2022/03/rep191_1.pdf)
BRONJリスクの評価には、投与期間・投与経路(経口か注射か)・ステロイドの併用・糖尿病の有無などが重要な因子となります。 リスクが高いと判断した場合、歯科・医科が連携して治療計画を立てることが強く推奨されています。 tosu-motomachishika(https://www.tosu-motomachishika.com/blog/post-12/)
歯科処置前のBP服薬確認フローや休薬ガイドラインの最新情報については、日本骨代謝学会や日本口腔外科学会のガイドラインを参照することをお勧めします。
ビスフォスフォネート製剤使用患者に対する顎骨壊死と対策(大阪歯科同窓会PDF)
BRONJ発生機序・骨リモデリング抑制とリスク因子の整理に活用できます。
がん細胞が骨に転移すると、がん細胞と破骨細胞・骨芽細胞が互いに影響し合い「悪循環(tumor vicious cycle)」を形成します。 がんが骨破壊を促し、骨破壊で放出された増殖因子がさらにがん細胞を増殖させるという負の連鎖です。 この悪循環を断つことが、骨転移治療の核心となります。 ganken.cri.kanazawa-u.ac(https://ganken.cri.kanazawa-u.ac.jp/newsletter/11625/)
骨転移の悪循環と最新の治療アプローチについては、金沢大学がん進展制御研究所のニュースレターに詳細な解説があります。
金沢大学がん進展制御研究所 News Letter Vol.23(骨転移の基礎・臨床・研究)
骨転移における悪循環(tumor vicious cycle)の図解と最新研究の概要が掲載されています。
骨吸収と全身疾患の関係で見落とされやすいのが、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)による骨粗鬆症です。 甲状腺ホルモンが過剰になるとカルシトニンの効果が相対的に低下し、骨吸収が亢進します。 甲状腺疾患と骨密度低下は、切り離せない関係です。 physioapproach(https://physioapproach.com/kotuhakai-kotusinsei.html)
副甲状腺ホルモン(PTH)も骨吸収に深く関わります。 PTHは破骨細胞を活性化して骨からカルシウムを血中に遊離させますが、間欠的投与ではむしろ骨形成を促す骨粗鬆症治療薬(テリパラチド)として使われます。 同じホルモンが、「持続投与→骨破壊促進」「間欠投与→骨形成促進」と正反対の効果を示すということです。 lab.toho-u.ac(https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/kensa/column2/2024/column_121.html)
副腎皮質ホルモン(ステロイド)の長期投与は骨形成を抑制し、骨吸収との不均衡から「ステロイド性骨粗鬆症」を引き起こします。 長期ステロイド使用患者では、骨折リスクが健常者の数倍にのぼるとされており、骨密度モニタリングと適切な骨粗鬆症予防薬の投与が推奨されます。 リスクを見逃さないことが条件です。 kango-roo(https://www.kango-roo.com/learning/3755/)
医療従事者が現場で使えるRANKL/OPGや骨代謝マーカーの解釈、骨粗鬆症治療薬の作用機序については、以下の参考文献も確認しておくことをお勧めします。
看護roo!「骨は生まれ変わっているの?|骨の再生」
骨代謝の基礎(骨吸収・骨形成・関連ホルモン)を看護師向けにわかりやすく整理しています。骨吸収促進因子と抑制因子の一覧として活用できます。
骨新生・骨破壊・骨溶解・骨吸収(PhysioApproach)
「骨吸収とは骨からCaを溶解する作用」という誤解しやすい用語の整理と、バセドウ病・骨粗鬆症との関係が解説されています。