あなたの経験的治療、3割で耐性菌を増やして医療費を倍増させます
経験的治療では、培養結果が出る前に抗菌薬を開始する必要がありますが、その判断は重症度と感染巣で大きく変わります。例えば市中肺炎では、CURB-65スコアが2以上で入院適応とされ、抗菌薬の選択も広域寄りになります。重症敗血症では、初回1時間以内の投与が死亡率を約8%低下させるとされており、時間も重要です。つまり時間と重症度の勝負です。
一方で、軽症感染症に広域抗菌薬を使うと耐性菌選択圧が上がり、院内全体のリスクになります。これは個人だけでなく施設全体の問題です。結論は適正使用です。
経験的治療で見落とされがちなのが施設ごとの耐性率です。例えば同じ大腸菌でも、ESBL産生率が10%の施設と40%の施設では初期抗菌薬は全く異なります。アンチバイオグラムを確認せずにセフトリアキソンを選択すると、約3〜4割で無効になるケースもあります。これは痛いですね。
院内データを使うことで、無効治療による再入院や治療遅延を防げます。抗菌薬選択は経験ではなくデータに基づくべきです。つまり根拠重視です。
参考:院内アンチバイオグラムの読み方と活用例
https://www.niid.go.jp/niid/ja/antibiogram.html
広域抗菌薬は安心感がありますが、実際にはコスト増大の原因になります。カルバペネム系は1日あたり数千円〜1万円程度になることもあり、狭域薬と比べて数倍です。さらに耐性菌感染に移行すると、入院期間が平均7〜10日延長されるという報告もあります。これは長期的損失です。
広域薬の乱用は、Clostridioides difficile感染症のリスクも約2倍に上昇させます。短期的な安心が長期的な不利益になります。結論は使い分けです。
経験的治療の本質は「後で修正する前提」です。培養結果が出たら、48〜72時間以内に抗菌薬を狭域化するのが基本です。これをデエスカレーションと呼びますが、実施率は施設によって50%未満というデータもあります。意外ですね。
デエスカレーションを行わないと、不要な広域投与が続き副作用や耐性菌リスクが増えます。逆に適切に行えば、死亡率は維持しつつ副作用を減らせます。つまり修正が前提です。
見落とされがちなポイントが「投与量」です。同じ抗菌薬でも、腎機能や体重によって血中濃度が大きく変わります。例えばバンコマイシンではトラフ濃度15〜20μg/mLを維持しないと、治療失敗率が上がるとされています。これは基本です。
特に高齢者や腎機能低下患者では、過小投与と過量投与の両方が起こりやすいです。投与量調整を怠ると、治療失敗または腎障害のリスクがあります。ここは盲点です。
このリスクへの対策として、TDM(治療薬物モニタリング)を活用することで、適正濃度を維持できます。場面は血中濃度管理、狙いは安全性確保、候補は院内TDM確認です。これだけ覚えておけばOKです。