腱鞘切開の点数を「手術料だけ」で計算していると、取れるはずの加算が丸ごと消えます。

腱鞘切開術は診療報酬上、K034 腱鞘切開術(関節鏡下によるものを除く)として区分されており、基本点数は820点です。
1点=10円換算なので、手術料だけで8,200円が基本報酬となります。
これは保険点数表の「第10部 手術」に収載されており、整形外科・形成外科・一般外科を問わず、保険医療機関であれば算定できます。
対象となる主な疾患は以下の通りです。
ばね指の場合、保存療法(ステロイド腱鞘内注射)が2〜3回無効であれば手術適応となることが多く、外来手術として日帰りで実施されるケースが大半です。
つまり「外来手術=820点」が実務上の標準的な算定パターンということですね。
外来で実施した場合、入院手術と異なり「入院基本料」が加算されないぶん、算定できる関連項目をしっかり拾うことが収益管理の観点から重要になります。
820点という数字だけ覚えておけばOKです。
手術料の820点に加え、以下の項目が別途算定できる可能性があります。
見落としが多い項目ばかりなので、レセプト担当者と術者が連携して確認することをおすすめします。
| 項目 | 点数の目安 | 算定条件 |
|---|---|---|
| 局所麻酔(浸潤麻酔) | 薬剤料のみ | 使用薬剤を記録・記載 |
| 手術時手袋(滅菌) | 施設により包括 | 材料費算定ルールに従う |
| 処置に伴う薬剤料 | 実費換算 | 生食・消毒薬など使用分 |
| 外来管理加算 | 52点 | 同日に処置・手術がない診察に限る |
| 再診料 | 73点 | 外来受診時に算定 |
| 初・再診時に行う検査 | 各検査点数 | 術前の血液検査・凝固など |
注意が必要なのは、外来管理加算です。
手術を実施した同日には算定できません。これは初心者が最も間違えやすいポイントのひとつです。
また、局所麻酔薬(例:1%リドカイン注射液)の薬剤料は少額ですが、使用量・薬剤名の記録がないと算定自体が認められないため、術中の記録が必須です。
記録がなければ算定できない、が原則です。
参考として、術前に凝固機能検査(PT・APTT)を実施している施設では、D006 出血凝固検査として別途算定できます。
ただし「手術前の検査として医学的必要性がある」という記載が求められることがあるため、カルテへの根拠記載を忘れないようにしましょう。
ばね指は複数指に同時発症するケースが珍しくなく、「同日に2本・3本まとめて手術した」という状況は日常的に起こります。
この場合の算定ルールを誤解している施設が多く、査定の原因になりやすい部分です。
複数部位を同日に施術した場合の原則は次の通りです。
「同一手術野」の解釈が実務上のポイントです。
右手第1指と第3指を同日に切開した場合、同一手術野として扱われるのか、別々に算定できるのか——この判断は審査機関によって異なることがあります。
厳しいところですね。
実務では「複数指の手術を実施した理由」「各指の術前状態(弾発症状の程度・ステロイド注射歴)」をカルテに明記し、医学的必要性を担保することが返戻対策として有効です。
審査支払機関への照会や、レセプトへの摘要記載も積極的に活用しましょう。
なお、両手に及ぶ場合(右手と左手)は「別の手術野」として扱われるため、それぞれ820点の算定が認められることが一般的です。
左右は別算定が基本です。
医科点数算定において、腱鞘切開術に関する査定・返戻が発生するケースには共通したパターンがあります。
以下に主な原因と、それぞれの対処法をまとめます。
これらの多くは、カルテ記載の充実とレセプト点検のダブルチェック体制で防ぐことができます。
対策は記録の習慣化です。
特に「保存療法を2回以上実施したが効果不十分のため手術に移行」という流れをカルテに明記することは、審査対策として非常に有効です。
診療の流れが時系列で追えるカルテほど、査定リスクが低くなる傾向があります。
施設によっては、手術前にチェックリスト形式の術前評価シートを導入しているところもあります。
「ステロイド注射歴・回数・最終実施日・効果判定」などを記録する標準フォームを作成しておくと、記載漏れが大幅に減ります。
これは使えそうです。
レセプト担当者が算定漏れを発見しやすくするため、手術実施時に術者が「使用薬剤・複数部位の有無・特記事項」を術後即座にカルテへ記載するルール化も効果的です。
腱鞘切開術後の外来フォローアップで行われる「術後創処置」の算定は、意外と見落とされています。
手術自体の算定は意識していても、術後の処置料・材料費が算定されていないケースが散見されます。
術後処置として算定できる可能性があるものを確認しましょう。
術後1〜2週間の抜糸までの期間に、週2〜3回の処置来院があるとすると、処置料・薬剤料・再診料を合算すると1患者あたり数千円規模の算定漏れが生じている可能性があります。
小さな積み重ねが、施設全体の収益に影響します。
なお、J000創傷処置は「手術後の創傷に対するもの」として術後14日以内を目安に算定するケースが多いですが、感染や遷延治癒の場合は医学的根拠を記載した上でそれ以降も算定できることがあります。
状況による判断が必要です。
術後処置の算定をルール化するには、「処置実施→薬剤使用量記録→当日レセ入力確認」という3ステップのフローを診療補助スタッフと共有することが実用的です。
電子カルテを使用している施設では、術後処置のオーダーセットに薬剤・処置料をセット登録しておくと、入力漏れを防ぎやすくなります。
診療報酬の算定ルールは定期的に改定されるため、点数表の最新版(2年ごとの改定)を確認する習慣が大切です。
改定のたびに点数や算定要件が変わることがあり、旧ルールのまま運用していると査定につながるリスクがあります。
改定情報は厚生労働省の公式サイトや、日本医師会・日本整形外科学会の通知をこまめにチェックしましょう。
参考情報として、厚生労働省の診療報酬情報提供サービスでは、現行の点数表・算定要件を無料で検索できます。
厚生労働省:診療報酬・調剤報酬の改定について(最新改定情報・点数表)
手術点数・算定要件の詳細は、この公式ページから告示・通知を確認することができます。K034の算定根拠を確認したい場面で役立ちます。
また、レセプト審査の考え方や査定事例については、各都道府県の社会保険診療報酬支払基金が提供する情報も参考になります。
査定・返戻の実例や、審査上の判断基準を知ることができるため、算定担当者が一度目を通しておくことをおすすめします。