甘草を含む漢方を2剤以上重ねると、偽アルドステロン症のリスクが11%以上に跳ね上がります。
ツムラ黄耆建中湯エキス顆粒(医療用)は、漢方の古典『金匱要略』に記載される「黄耆建中湯」を、ツムラ独自の乾式造粒法で服用しやすい顆粒剤にした医療用漢方エキス製剤(品番98番)です。 小建中湯(ツムラ99番)に黄耆を加えた処方であり、表と裏の両方の気を補うことで、より虚弱な状態に対応できる構成となっています。medical.tsumura+1
生薬は7種類で構成されています。
参考)黄耆建中湯
参考)黄耆建中湯 (おうぎけんちゅうとう) - 小太郎漢方製薬株式…
参考)https://www.philkampo.com/pdf/phil39/phil39-09.pdf
「建中」という名前の「中」は消化吸収に関わる腹部全体を指し、この働きを建て直すという意味を持ちます。 つまり消化管から気を補い、全身に供給する処方です。
参考)302 Found
用法・用量は以下のとおりです。
参考)https://medical.tsumura.co.jp/products/098/pdf/098-tenbun.pdf
| 対象 | 1日投与量 | 服用回数 | 服用タイミング |
|---|---|---|---|
| 成人 | 18.0g | 2~3回に分割 | 食前または食間 |
| 小児・高齢者 | 年齢・体重・症状により適宜減量 | 同上 | 同上 |
成人の1日量18.0gという量は建中湯類の特徴で、通常の漢方(7.5g/日)の約2.4倍に相当します。 量が多いことを事前に患者へ説明しておくと服薬コンプライアンスが向上します。
証の判断が処方選択の決め手になります。
効能・効果の公式記載は「身体虚弱で疲労しやすいものの次の諸症:虚弱体質・病後の衰弱・ねあせ」ですが、実際の使用目標はもう少し詳細です。 腹壁が薄く腹直筋が緊張している、発疹・びらんなどの皮膚症状がある、創傷治癒の遷延化・慢性化膿巣があるケースも使用目標に含まれます。
実際の診療で証の判断に使える4つのチェックポイントを整理します。
証の判断には注意が必要です。陰虚や実熱など適応でない証では効果が出にくいため、専門家による証の見立てが重要になります。 体力が一定以上ある実証の患者への投与は避け、あくまで虚弱・虚証の患者が対象です。
参考)黄耆建中湯(ツムラ98番):オウギケンチュウトウの効果、適応…
また、小建中湯無効時に黄耆建中湯に変更して有効だった事例が小児外科領域の研究でも報告されており、小建中湯で反応が不十分な場合の次の一手としても価値があります。 疲労感より腹部症状が中心なら小建中湯、盗汗・息切れ・皮膚症状を伴うより虚弱な状態なら黄耆建中湯、というイメージです。ngskclinic+1
甘草が入っている以上、偽アルドステロン症は常に頭に置く必要があります。
偽アルドステロン症は、甘草に含まれるグリチルリチン酸がミネラルコルチコイド作用を持つことで引き起こされます。 血圧上昇・浮腫・低カリウム血症が主な症状で、進行すると脱力を招きます。 顔や下肢のむくみ、血圧上昇に気づいたら即座に投与を中止することが原則です。medical.tsumura+1
見落とされがちな落とし穴が、複数の漢方薬を併用した際の甘草の重複摂取です。 たとえば、以下のような組み合わせは危険です。
痩せ型・高齢・高血圧薬服用中の患者では、甘草が1.5g/日程度でも偽アルドステロン症が起こりえます。 これはリスクが高い患者です。
| リスク因子 | 注意レベル |
|---|---|
| 痩せ型 | ⚠️ 高 |
| 高齢者 | ⚠️ 高 |
| 低カリウム血症の傾向あり | ⚠️ 高 |
| 高血圧薬服用中 | ⚠️ 高 |
| 複数の漢方を併用 | ⚠️ 要甘草総量計算 |
リスクへの対応策として、他の漢方製剤との併用時は血清カリウム値と血圧値に十分留意し、定期的にモニタリングすることが添付文書で求められています。 甘草の1日総摂取量を処方時に計算する習慣が最大のリスク管理です。
参考)https://medical.tsumura.co.jp/products/020/pdf/020-info030101.pdf
高齢者のフレイル対策で黄耆建中湯が選ばれる条件は、「消化管機能の低下」という点に絞られます。
フレイル予防に用いられる漢方には、補中益気湯・人参養栄湯・十全大補湯などの「参耆剤」が知られていますが、使い分けには注意が必要です。 消化管機能が正常な場合は八味丸・牛車腎気丸、消化管機能が低下している場合には黄耆建中湯を定期処方するという経験則があります。 補中益気湯は柴胡・升麻・陳皮を含むため、最低限の基礎体力がない患者に投与すると逆効果になるリスクがある点が、黄耆建中湯との大きな違いです。www-1.potato+2
ここに「独自視点」として着目したいのが、黄耆建中湯の「排膿・創傷治癒促進」効果です。
黄耆を加えることで汗腺の開閉機能と排膿の力が高まり、皮膚の修復を助けます。 床ずれ(褥瘡)や慢性化膿巣を持つ虚弱な高齢者に対して、栄養補給と創傷治癒を同時に期待できる処方という観点は、フレイル×皮膚科・外科領域での応用として実践的な価値があります。 通常の栄養療法に加え、消化管機能の低下した褥瘡患者への補助として検討できます。philkampo+1
高齢者への処方では、さらに以下も確認してください。
参考)http://asunorinsho.aichi-hkn.jp/wp-content/uploads/2020/12/2020_3202_02.pdf
これが原則です。
参考情報として、ツムラ医療関係者向けサイトの偽アルドステロン症解説ページも確認を推奨します。
甘草含有量の管理・偽アルドステロン症の詳細リスク解説(ツムラ医療関係者向け公式資料)。
小児への黄耆建中湯は、量の設定と効果の出方に独特のパターンがあります。
小児において黄耆建中湯は、虚弱体質・風邪をひきやすい・寝汗をかく・食が細いといった症状に幅広く使われます。 3歳の症例では成人の6分の1の量を夕食後に服用してもらい、1週間で寝汗の減少、2週間後には風邪が軽く済むといった改善が報告されています。 1日量18gの成人量を年齢・体重で割り返すと相当な少量になりますが、それでも効果は期待できます。
アトピー性皮膚炎への応用も注目されています。
黄耆建中湯を開始後に「汗をかくようになり、からだがきれいになった」という報告があり、汗腺機能の回復が皮膚症状の改善に先行するパターンが観察されています。 小建中湯に変更したところ汗をかかなくなり症状が悪化、再び黄耆建中湯に戻すと改善したという経過からも、黄耆の発汗調節作用が皮膚症状に直結していることが示唆されます。
服薬指導で押さえておくべき点をまとめます。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=5215
小児では甘草の絶対量は少ないものの、他の漢方薬との重複がないか処方歴の確認が不可欠です。
参考情報として、小児外科領域での小建中湯・黄耆建中湯の処方選択に関する研究報告です。
漢方医学的所見に基づく小建中湯と黄耆建中湯の処方選択の違いに関する考察。
久留米大学医学部小児外科|小建中湯・黄耆建中湯の処方選択研究(PDF)