抜釘後の痛みが初回HTO手術の約6%しかないと知っていましたか?
高位脛骨骨切り術(HTO:High Tibial Osteotomy)は、O脚変形による変形性膝関節症に対して行われる骨矯正手術です。脛骨の上部を楔状に切り開き、荷重軸を傷んだ内側軟骨から比較的健全な外側へ移動させます。その際、骨切り部を固定するためにチタン製のプレートとスクリューが挿入されますが、骨癒合が確認された後にそれらを取り除く処置が「抜釘術(ばっていじゅつ)」です。
HTOで使われるプレートは全長が長く、スクリューは8本程度が挿入されます。これほど大型の内固定材料が入ると、術後6カ月以降に腫れが引いてくる時期から異物感が出現しやすくなります。皮膚の伸張感やプレート周辺の鈍痛が膝の可動域に影響するケースもあります。つまり、抜釘の主な目的は異物感・皮膚伸張感の解消と、可動域改善です。
さらに、多くの施設では抜釘と同時に関節鏡を用いた「セカンドルック」を行います。これが抜釘に独自の意義を加えます。初回HTOの際にマイクロフラクチャー法(骨に穴をあけて軟骨再生を促す処置)を実施した場合、抜釘時の関節鏡で1年後の軟骨再生状況を直接確認できます。これは画像検査だけでは得られない情報であり、治療の進行評価として非常に価値が高いです。
患者側の視点としては、「1年後にまた手術をする」という心理的負担があります。医療従事者としては、HTOのインフォームドコンセントの段階から抜釘の目的・時期・意義を丁寧に伝えることが、患者の不安軽減と治療継続率の向上につながります。
| 項目 | 初回HTO | 抜釘術 |
|---|---|---|
| 目的 | 荷重軸矯正・痛み軽減 | プレート・スクリュー除去、異物感解消 |
| 入院期間(目安) | 14〜35日程度 | 3泊4日〜9泊10日(施設差あり) |
| 術後痛みの強さ | 3〜7日間強い痛みが続く | 初回の約6%程度(翌日から杖なし歩行が多い) |
| 同時施行処置 | マイクロフラクチャー等 | 関節鏡セカンドルック |
参考:HTOの抜釘目的・入院期間・費用について詳しい医師向け情報はこちら
川田整形外科|高位脛骨骨切り術と前十字靭帯再建術の抜釘術・セカンドルックについて
患者ブログから浮かび上がる抜釘入院の経過は、医師・理学療法士の説明資料にはない「生の体験」として非常に参考になります。複数の体験談をまとめると、以下のような流れが典型的です。
術当日または前日に入院し、手術は全身麻酔または腰椎麻酔で行われます。術後は創部のドレーンが留置されますが、翌日には抜去されることが多く、早い患者では術後2日目から片松葉杖なしで歩き始めます。初回HTO時と比べると驚くほど痛みが少なく、多くのブログ記述でも「思ったより楽だった」という感想が共通しています。これは、抜釘の侵襲が骨ではなく皮膚・皮下組織に限られるためです。痛みが軽い理由は明確です。
入院中の生活については、術後3日目からシャワーが解禁になるケースが報告されており、病棟内の歩行練習や軽いスクワットを自主的に行う患者も見られます。一方で、ブログでは「筋力が思ったより落ちる」という記述も多く、入院中のリハビリへの参加意欲を維持することが退院後の機能回復に直結します。
退院は施設によって異なりますが、短いケースでは3泊4日、標準的なケースでは1週間前後という報告が患者ブログに多く見られます。特筆すべき点として、一部施設では「2泊3日の予定が3泊4日に延長された」という記述もあり、抜糸の状態や術後経過によってスケジュールが変動することを患者に事前に伝えておくことが望ましいです。
退院後は傷口の管理が課題になります。抜釘部の手術創はHTOよりも小さいものの、膝周囲への汚染(土・汗など)は感染リスクがあるため、退院後の生活指導を充実させることが求められます。術後1週間で抜糸が行われますが、この期間は皮膚のバリア機能が十分でないため、屋外活動・コンタクトスポーツへの復帰は慎重に判断する必要があります。
抜釘後のリハビリは「何もしなくてよい」と思われがちですが、それは大きな誤解です。術後の膝関節には腫脹が生じ、術前より可動域・筋力ともに低下します。退院時に筋力が抜釘術前の水準に戻っていない患者がほとんどです。リハビリは必須です。
入院中のリハビリは、術創が開かないよう配慮しながら、可動域訓練・筋力訓練・物理療法(腫脹軽減)を中心に構成されます。退院時に筋力測定を行い、術前値との差を確認することで、退院後に外来リハビリが必要かどうかを判断する流れが標準的です。
退院後の筋力回復の目標は、大腿四頭筋を中心とした膝伸展筋力の術前水準への回復です。患者ブログでも「じっとしていると筋肉が落ちる」「なるべく自主トレをした」という記述が散見され、入院中から患者に自主運動の重要性を教育することが、退院後の経過に影響します。
スポーツ復帰について、コンタクトスポーツや屋外スポーツは術後1カ月を目安とする施設が多いですが、傷口への衝撃リスクがある場合は慎重に進めるべきです。骨切り術後のスポーツ復帰に関する報告では、平均8.7±2.7カ月という数字もあり、抜釘後の全面復帰も患者の筋力・バランス能力に応じて個別に判断することが大切です。
また、HTOの抜釘では半月板処置(半月板掃除)を同時に行うケースがあり、その場合は純粋な抜釘よりも荷重開始や活動拡大のタイミングが慎重になる点を、担当PTは把握しておく必要があります。これは体験ブログにも記述のある現実的な注意点です。
参考:骨切り術後のスポーツ復帰率・期間についての医療データ
西宮回生病院|骨切り術後のスポーツ復帰(復帰率75.3%・平均8.7ヵ月のデータ収録)
費用については、患者からの問い合わせが多いにもかかわらず、医療現場では説明が後回しになりがちなテーマです。抜釘術にかかる費用の実態を整理しておきましょう。
抜釘術(HTO後)の手術費用(3割負担)は約10万円程度が目安とされています。2割・1割負担の場合は約4万〜8万円となります。高額医療費制度が適用されるため、所得区分によって自己負担限度額が35,400円〜252,600円の範囲で変動します。計算式が複雑なため、事前に医事課スタッフとの連携で患者への説明を行うことが望ましいです。
一方、高額医療費制度が適用されない費用として、食費・差額ベッド代・レンタルパジャマ代などがあります。これらは目安として約6万円とされており、退院時に手術医療費の自己負担分と合算した金額が実際の支出となります。患者ブログには「予想より費用がかかった」という記述もあり、事前の費用説明が患者満足度に直結します。
入院期間の差も費用に影響します。3泊4日の施設と9泊10日の施設では、食費・差額ベッド代だけでも数万円の差が生じます。患者が複数の施設を比較する際には、入院日数による費用の違いを考慮するよう案内することが親切な対応です。
なお、HTOの初回手術費用は手術費用のみで150万円前後(3割負担で約45万円)とされているため、抜釘術は相対的に安価であることを患者に伝えると、心理的な負担感を軽減できます。抜釘の費用は概して抑えられます。
| 術名 | 3割負担 | 2割・1割負担 |
|---|---|---|
| 高位脛骨骨切り術(初回) | 約35万〜45万円 | 約8万〜10万円 |
| 抜釘術(HTO後) | 約10万円程度 | 約4万〜8万円 |
| 食費・差額ベッド代等(目安) | 約6万円(入院期間によって変動) | |
参考:各術式の費用一覧と高額医療費の詳細
江本ニーアンドスポーツクリニック|手術費用(目安)一覧(HTO・抜釘術・人工関節の自己負担額比較)
「抜釘は必ずするもの」という前提で説明している医療者は少なくありません。しかし実際には、抜釘は必ずしも全員に必須の処置ではなく、個々の状態によって判断が分かれます。この視点は、患者との会話の質を大きく変えます。
抜釘をしない選択肢が検討されるケースとして、無症状でインプラントが生活に支障をきたしていない場合、骨とプレートの癒着が強く除去が困難な場合、再骨折リスクが高い場合などが挙げられます。特に高齢患者やリスクが高い症例では、「抜かないほうが安全」という判断が成立します。
一方で、抜釘しないことで生じ得るデメリットも明確です。内固定材料周囲の骨が弱くなるリスク、転倒による周囲骨折リスク、遅発性感染のリスク、可動域制限・疼痛の残存などが知られています。これらのリスクは「すぐに現れない」ことが特徴で、患者が抜釘を先延ばしにしがちな理由でもあります。
注目すべきは、金属イオンの問題です。チタンの血清中濃度は術後2年経過しても基準値の5倍以上に達することがあるという報告があります(naruoseikei.com, 2025)。現時点では明確な健康リスクは確立されていませんが、長期留置に関するリスク説明を患者にどこまで伝えるかは、医師の判断が求められます。
また、患者ブログには「事前説明では必ず抜釘すると記載されていたが、主治医から抜釘しなくてもよいと言われた」という記述も見られます。施設間・医師間での方針の差が患者の混乱を招いている実態があります。施設の方針を明確にした統一した説明フローを整備することが、医療の質と患者体験の向上につながります。
参考:抜釘のメリット・デメリットを最新研究とともに解説した医療者向け記事
鳴尾整形外科クリニック|抜釘は本当に必要?メリット・デメリットと最新研究を徹底解説(2025年3月)
医療論文やガイドラインには載らない「患者がブログに書くこと」には、医療者が見落としやすい重要な視点が含まれています。ここでは複数の体験ブログから読み取れる心理・行動パターンを、医療者目線で分析します。
まず最も多く見られる記述が「思ったより痛くなかった」という安堵感です。初回HTOの強い痛みを経験した患者ほど、抜釘の痛みの少なさに驚きを感じています。川田整形外科のアンケートでは、抜釘の痛みは初回HTOを100とした場合、平均6という結果が出ています。この数字を事前に共有することで、抜釘への心理的抵抗を大きく下げられます。
次に多いのが「筋肉を落としたくない」という強い意識です。入院中にできる自主トレを模索したり、病棟内を積極的に歩いたりする患者が多く見られます。これはHTOの長期リハビリを経験した患者ならではの学習効果です。この意欲を入院中のリハビリ指導で適切に活かすことが、回復速度の向上につながります。
一方で、「費用が想定外だった」という記述も散見されます。高額医療費制度の適用について十分な理解がないまま退院し、請求書を見て驚く患者が存在します。入院前に費用の概算を分かりやすく説明するシートを準備することは、クレーム防止の観点からも有効です。
また、ブログ記述の中には「抜釘したプレートを持ち帰った」という報告も多く見られます。施設によっては術後にプレートとスクリューを患者に返却しています。この体験は患者の術後への納得感・記念感につながっており、返却の可否を事前に説明することも患者体験の向上に貢献します。
「抜釘すると決まっていたが、実は必要ではないと言われた」という混乱の声も一部あります。これは医師間・施設間の方針の差によるものです。担当者が変わっても一貫した説明ができる体制づくりが求められます。一貫した説明が信頼の基盤です。

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