薬歴(薬剤服用歴)は、単なる「メモ」ではなく、継続的な服薬指導の根拠として参照できる形で保存・管理することが前提になります。
ただし現場で混乱が起きやすいのは、「薬歴そのものの保存年限」が条文でズバリ一本化されているわけではなく、制度上は“調剤録・処方箋”の保存年限や診療報酬上の取り扱いとセットで語られやすい点です。
まず確実な軸として押さえるべきは、処方箋と調剤録の保存期間が「3年間」で法令上はっきりしていることです。
薬剤師法では、調剤済みとなった処方せんを「調剤済みとなつた日から三年間」保存、調剤録を「最終の記入の日から三年間」保存と定めています。これは監査・指導の場で最初に確認される“土台”です。
参考)https://www.phchd.com/jp/medicom/park/idea/ph-management-keep-medicationhistory
さらに、薬局実務のQ&Aでも、処方箋3年、調剤録3年、薬歴管理簿3年という整理が明記されています(閉局時の取り扱い質問に対する回答として示されており、現場運用の目線が強いのが特徴です)。
参考)ニトリ
ここで大事なのは、薬歴を「調剤録の代替」として運用している薬局が少なくない点です。
たとえば、処方箋の裏書やレセコン/電子薬歴連携で、指導内容・監査情報・疑義照会の要点を薬歴側に集約している場合、監査で問われるのは“保存期間だけ”ではなく「必要事項が、必要時に速やかに参照できるか」です。厚労省の解説資料でも、薬局文書の電子化において“必要に応じて直ちに明瞭かつ整然と表示・書面化できる”ことを求めています。
✅現場でのミスが出やすいポイント(チェック用)
・「3年保存」と言いながら、起算日(最終記入日/完結日)が曖昧なまま廃棄してしまう
・薬歴と調剤録の役割分担が不明で、監査時に“どれが正式記録か”説明できない
・患者ごとの参照性(患者単位でまとまっているか、必要時に直ちに出せるか)が弱い
上記を避けるコツは、薬局内で「薬歴=指導の記録」「調剤録=調剤の記録」と教科書的に分けるのではなく、あなたの薬局のシステム構成で“何がどの条文要件を満たすのか”を文章化しておくことです。
後述する運用管理規程(電子化の運用ルール)に、保存年限と起算日、参照の手順、監査対応の出し方まで落とすと、属人化が一気に減ります。
参考:薬局内文書の電子化(見読性・真正性・保存性、外部保存の考え方)
https://www.mhlw.go.jp/content/001279081.pdf
次に、「結局5年なの?3年なの?」問題です。ここは“保存義務”と“リスク管理としての推奨”が混ざって語られやすいので、分けて整理します。
薬歴の保存期間について、一般向け解説では「基本3年、ただし一部は5年」とされ、具体例として自立支援医療、生活保護、結核、小児慢性特定疾病、難病医療などが挙げられています。
参考)薬局における法定保存書類の保存期間の整理・一覧【ファーマシス…
このような領域では、療養担当規程等の枠組みで、後からの確認・監査・請求の検証が強く意識されるため、「薬歴も長めに保存しておく」判断が現場的に合理的になります。
さらにやや“意外”なのが、民法改正(2020年4月施行)に伴う調剤報酬請求権の消滅時効など、請求・返還の論点が保存年限の考え方に影響しうる点です。一般向け解説でも、これを理由に「2020年4月以降は5年保存が望ましい」とする見解が紹介されています。
つまり、法令で必ず5年と断定できるケースだけでなく、返還請求・監査対応を見越して「5年保持が安全」という“経営判断”が入り込む領域がある、ということです。
✅5年運用が効いてくる典型シーン
・公費(自立支援、生活保護など)の監査で、過去事例の提示を求められる
・返還請求・過誤調整の検証が長期化し、薬歴が裏付け資料として必要になる
・閉局・事業承継・M&Aで、引継ぎ時点のデータ保持を厚めにしたい
一方で、むやみに年限だけ延ばすのは、個人情報の保持期間を伸ばすことでもあります。
保管期間を伸ばすなら、そのぶん「アクセス権」「持ち出し」「バックアップ」「廃棄」の統制を強めないと、情報漏えいリスクが増えます(紙でも電子でも同じです)。厚労省の電子化解説では、個人情報の取扱いやサイバーセキュリティ対策の実施、運用管理規程の整備が必要と明記されています。
現場でおすすめの落としどころは、次のように「基本ルール+例外ルール」を明文化することです。
📌例:保存年限のルール化(雛形イメージ)
・原則:薬歴(薬剤服用歴)は最終記入日から3年保管
・例外:公費・監査対象等は最終記入日から5年保管(対象の定義を列挙)
・凍結:返還請求や係争など“案件化”した場合、解決まで廃棄禁止
・廃棄:廃棄記録(実施日・対象期間・担当者・方法)を残す
この「凍結ルール」は検索上位の一般記事には出にくい一方で、現場の事故(返還請求が来たのに資料がない)を防ぐのに効きます。
保存期間は“年数”の話に見えますが、実は「いつ捨てないか」「捨てるときに何を残すか」まで含めて制度設計です。
紙薬歴から電子薬歴へ移行する薬局が増えた今、保存期間より先に詰まるのが「電子化の要件を満たしているか」です。
ポイントは、PDFを置いただけでは足りない、という一点に集約されます。
厚労省の資料では、e-文書法に基づく電子保存を行う場合に、いわゆる3要件(①見読性、②真正性、③保存性)を適切に守る必要があると明記されています。
ここで言う“見読性”は、必要時にすぐ表示・印刷できること、“真正性”は改変や消去の事実の有無と内容を確認でき、責任所在が明らかなこと、“保存性”は保存期間中に復元可能であること、という整理です。
現場でトラブルになりやすいのは真正性です。
個人のPCにスキャンPDFを保存し、元紙を捨てた場合、改ざん防止・履歴・責任主体が説明できず、指摘を受けやすいとされています(実務者の整理記事でも「スキャナーでPDF保存して紙を捨てました、では要件を満たせない」と明確に書かれています)。
✅電子薬歴・電子保存で最低限確認したい項目
・編集履歴(追記・修正のログ)が残るか
・誰が確定した記録か(利用者識別)が担保されるか
・バックアップの世代管理(ランサムウェアも想定)
・停電・災害時の参照手段(“見読性”の実運用)
・退職者アカウントの無効化、権限棚卸し
さらに、見落とされがちなのが「外部保存(クラウド)の扱い」です。
厚労省の解説では、調剤録等を薬局外で保存すること自体は必ずしも妨げられない一方、電子媒体で外部保存するなら3要件、運用管理規程、個人情報、サイバーセキュリティ対策が必要とされています。
つまり、クラウドは“使ってはいけない”ではなく、“要件を満たしたうえで使う”が基本線です。
参考:薬局文書の電子化・外部保存(厚労省解説)
https://www.mhlw.go.jp/content/001279081.pdf
保存期間を守っていても、最後の「捨て方」で事故が起きます。
薬歴には氏名・年齢・薬剤情報など個人情報が集約されるため、可燃ごみや古紙回収に混ぜるのは当然NGで、廃棄方法の統制が必要です。
紙の場合はシュレッダーが基本ですが、大量になると現実的ではなく、溶解処理など外部業者を使うことも選択肢になります。一般向け解説でも、大量処分は専門業者の活用が触れられています。
ただし外部委託するなら、委託先の管理体制・契約・持ち出し経路(誰がいつ運ぶか)までセットで決めておかないと、監査より怖い“漏えい”が起きます。
閉局時は、保存義務が残る書類が多い点も要注意です。
現場Q&Aでは、処方箋3年、調剤録3年、薬歴管理簿3年、麻薬小売業者の帳簿2年、向精神薬の購入記録2年など、閉局時に整理すべき保存年限の例が挙げられています。
そして重要なのが「最終的には管轄保健所に確認を推奨」と明記されている点で、地域運用や状況(薬局の形態、公費の有無等)で追加の確認事項が出ることを示唆しています。
✅廃棄の実務で“地味に効く”運用
・廃棄台帳を作る(対象期間、箱数、担当者、方法、業者名、立会い有無)
・廃棄前に「凍結対象」(返還請求・係争・監査指摘フォロー)を再確認
・電子の場合は、削除証明(ログ)や媒体廃棄証明を取る
・閉局なら、保健所確認のメモを残す(誰がいつ何を聞いたか)
意外に盲点なのは、電子薬歴の“削除”です。
紙は「溶解証明」など形に残りやすい一方、電子は「削除したつもり」でもバックアップや複製に残り、逆に「消した証明」が出せず揉めることがあります。厚労省の枠組みでは保存性・真正性・運用管理を求めているため、廃棄段階でも“運用で説明できる”状態が望ましいです。
ここからは検索上位があまり触れない“実務の落とし穴”です。保存年限を守っていても、監査・患者対応・訴訟対応の場面で「該当薬歴が出せない」事故が起きると、保存している意味がほぼ消えます。
この事故は、紙より電子のほうが起きやすいことがあります。理由は簡単で、電子は「データはあるが、検索キーが揺れていて出ない」ことがあるからです。
典型例は次の通りです。
・患者氏名の表記ゆれ(旧字体、スペース、カナ英数、婚姻後の姓)
・生年月日が空欄、または西暦和暦の混在で一致しない
・患者IDの採番ルールが途中で変わり、別患者として二重登録
・店舗統合やレセコン入替で、参照先が分断される
・スキャン取り込みでOCRが効かず、画像はあるが検索できない
こういう事故は、保存年限3年/5年よりも、現場のストレスが大きいです。
なぜなら「存在するのに出せない」状態は、監査では“保存義務の実質不履行”に近い印象を与え、患者対応では“説明不能”につながるからです。厚労省資料が求める“必要に応じ直ちに明瞭かつ整然と表示・書面化できる”という見読性の要件にも、運用として抵触しやすくなります。
そこで、薬局の規模を問わず効く対策を、仕組みとして提案します。
🛠️検索不能を防ぐルール(薬局内ルール例)
・患者キーの統一:患者IDを主キーにし、氏名は検索補助と位置づける
・表記基準:氏名カナ、姓・名の区切り、旧字体の扱いを決める
・登録チェック:新規登録時に生年月日+電話番号等で重複確認する
・移行設計:レセコン更新時は、薬歴検索テスト(ランダム30名など)を実施して記録する
・監査訓練:年1回「この患者の3年前の薬歴を5分で出す」訓練をする
「監査訓練」は意外に効果があります。
普段はシステムが回っていても、担当者が替わったり、閉局・統合が起きたりすると、参照手順がブラックボックス化します。訓練をすると、検索キー、権限、端末配置、バックアップ復元手順など、見読性・保存性に直結する穴が露出します。
最後に、保存期間の議論は“年数”で終わらせず、「保管→参照→廃棄」までのライフサイクルで設計するのが安全です。
薬歴保管期間は、あなたの薬局の業務フロー(紙/電子、外部保存、店舗統合、公費の比率)で最適解が変わります。だからこそ、3年を土台に、5年が必要な例外を定義し、検索不能を防ぐ運用まで含めて整えると、監査対応も日常業務も軽くなります。
【硫化水素】 ムトウハップとサンポールの混合実験 【化学実験】
上司チェック用に、以下のどちらで作り直すか指定してください(どちらも“作り方”は扱いません)。

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