内視鏡検査は、現代医療において消化管疾患の診断と治療に欠かせない重要な検査法です 。先端に超小型ビデオカメラを搭載した約1cmの太さの管を用いて、消化管内部を直接観察する検査です 。光ファイバーにより映像をリアルタイムでモニター画面に映し出し、水を通す孔や組織検査用の器具が通る孔も装備されています 。
参考)https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/division/endoscopy/0402/20200421111347.html
現在の内視鏡は1970年代後半に普及した技術で、それまでの胃カメラとは大きく異なる構造を持っています 。胃カメラは1950年に日本で開発された医療機器で、挿入管の先端に小型スチルカメラと照明用豆ランプが取り付けられ、写真撮影後に現像して診断を行うものでした 。
参考)https://sawayaka-saisei.or.jp/column/endoscope-endoscope-gastroscope/
消化管の内視鏡検査は、検査部位により上部・中部・下部の三つに大別されます 。上部消化管内視鏡検査は食道・胃・十二指腸乳頭部までを対象とし、下部消化管内視鏡検査は大腸を検査対象とします 。
参考)https://www.jges.net/citizen/faq/general_02
**上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)**は、口または鼻から内視鏡を挿入して上部消化管の粘膜を直接観察します 。がんや潰瘍、ポリープ、逆流性食道炎などの診断に使われ、経鼻タイプは苦痛が少なく、経口タイプはより高精度な観察が可能です 。
参考)https://wagougaokaclinic.jp/2025/04/10/what-types-of-endoscopy-are-available/
**下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)**は、肛門から内視鏡を挿入して直腸から結腸、盲腸まで大腸全域を観察します 。ポリープやがん、炎症の有無を確認でき、ポリープが見つかればその場で切除することも可能です 。
内視鏡検査により多くの消化器疾患を早期発見できます 。上部消化管内視鏡検査では、食道がん、胃がん、十二指腸がん、胃・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、胃炎、食道静脈瘤などが発見されます 。
参考)https://gocho-naika.com/blog/diseases-fujisawa-endoscope/
下部消化管内視鏡検査では、大腸がん、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、クローン病、大腸憩室症、虚血性大腸炎などの診断が可能です 。特に大腸がんのほとんどはポリープから発生するため、ポリープの段階での発見と切除により、がんの予防効果も期待できます 。
参考)https://kokomon.com/media/151/
最近では、画像強調機能(NBI)や拡大内視鏡技術が使用され、より精度の高い診断が可能になりました 。NBIは粘膜の微細な血管や構造を強調し、早期がんの発見に役立ちます 。
症状がある場合は、血便・下血、便通異常、腹痛、胸やけ、嚥下困難などの症状がある方は積極的に検査を受けるべきです 。便潜血検査で陽性判定を受けた方は、進行がんの検出精度が73.3~85.6%であることから、詳細な検査が必要です 。
参考)https://micro-ctc.cellcloud.co.jp/column/colonoscopy-noneed
症状がない場合でも、以下に該当する方は定期的な検査が推奨されます:家族や親戚に大腸がん・大腸ポリープの既往がある方、大腸がんや大腸ポリープの手術歴がある方、35歳以上の年齢、以前にがんになったことがある方などです 。
特に50歳を過ぎた方は、症状がなく家族歴も既往歴もない場合でも、3~5年に1回の内視鏡検査が推奨されています 。炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)の方は定期的な検査が必要です 。
参考)https://yanaginaikaclinic.jp/%E8%8B%A6%E7%97%9B%E3%81%AE%E5%B0%91%E3%81%AA%E3%81%84%E5%86%85%E8%A6%96%E9%8F%A1%EF%BC%88%E8%83%83%E3%82%AB%E3%83%A1%E3%83%A9%E3%83%BB%E5%A4%A7%E8%85%B8%E3%82%AB%E3%83%A1%E3%83%A9%EF%BC%89%E6%A4%9C
近年の内視鏡技術は急速に進歩しており、拡大観察機能、NBI(狭帯域光観察)、AI支援診断などの機能が追加されています 。拡大観察機能により粘膜の微細な構造まで詳細に観察可能となり、NBIは血管や表層の変化を強調する画像処理技術です 。
参考)https://www.akihabara-naishikyo.com/blog/evis-x1-endoscope-evolution/
AI支援診断システムは画像をリアルタイムで解析し、病変の自動検出をサポートします 。最新のAI搭載システムでは、感度96.0%、特異度98.0%という高い精度で病変を検出し、音声アラートと画面上のハイライト表示により見逃しのリスクを大幅に低減します 。
参考)https://murano-clinic.jp/news/1566/
NBI画像をAIが解析し、病変の性質をリアルタイムで自動判定する機能も実用化されており、腫瘍か非腫瘍かの治療判断サポートにも活用されています 。これらの技術により、経験豊富な内視鏡専門医とAIの協働による「正確で安心な内視鏡検査」が実現されています 。
内視鏡を用いた治療技術も大きく進歩しており、早期がんに対する**内視鏡的粘膜切除術(EMR)と内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)**が広く行われています 。EMRは従来から行われている方法で、スネアと呼ばれる金属の輪を病変部に引っ掛け、高周波電流を流して切り取る治療法です 。
参考)https://www.koseikan.jp/medical_care/latest_treatment/esd_poem_emr/
ESDは専用の処置具を使ってより大きな病変を切り取ることが可能な新しい治療法です 。EMRでは約2cmまでの制限がありましたが、ESDでは広範囲の病変をひとかたまりで切除でき、病理検査でのより正確な診断にも役立ちます 。
ESD治療では開腹手術と異なり、お腹に傷がなく、翌日に胃カメラで切除部分を観察し、問題なければ水分摂取、翌々日にはおかゆを食べることができます 。小胃症状やダンピング症状に悩まされることもなく、傷の痛みもないため、患者さんの負担が大幅に軽減されています 。
参考)https://nakanohp.com/hospital/inspectiontreatment/entry-145.html
内視鏡検査、特に大腸内視鏡検査では適切な前処置が検査の成功に重要な役割を果たします 。大腸内視鏡検査は大腸の中が完全にきれいになり、便が残っていない状態でないと実施できないため、前処置が必要です 。
参考)https://koganei.tsurukamekai.jp/blog/endoscopy_pretreatment.html
前処置の方法は、検査前日までに行う準備と検査当日に行う処置の2ステップに分けられます 。検査前日までの準備では、胃から小腸にかけてほぼ完全に吸収される低残渣食が理想的で、根菜や葉物野菜、海藻などは残渣が残りやすいため避ける必要があります 。
前処置方法には「在宅洗浄法」と「院内洗浄法」があり、患者さんの状態や生活環境に合わせて選択されます 。在宅洗浄法はご自宅で周囲に気兼ねすることなくリラックスしながら下剤を服用でき、院内洗浄法はお住まいが遠方の方やご自宅での準備に不安がある方に適しています 。
参考)https://www.matsushima-hp.or.jp/consultation/naishikyokensa/preparation.html