週刊誌型の「飲み続けてはいけない」という表現は、実臨床の意思決定(適応・期間・代替・モニタリング)を一気に省略し、患者の自己判断による中断を招きやすいのが最大の問題点です。
実際に週刊誌の“危ない薬”記事を、改変メディアドクター指標で評価した研究では、科学的妥当性・定量的説明・ベネフィットの提示が不足しがちであることが示され、医療不信やノンコンプライアンスにつながり得ると指摘されています。
この構図は漢方薬でも起こり得ますが、重要なのは「漢方は危ない/安全」の二択にせず、どの副作用が“どの条件”で増えるかを患者に翻訳して返すことです。
医療従事者向けの実務としては、次の順で再構成すると説明がぶれにくくなります。
参考)https://phcogj.com/sites/default/files/PharmacognJ-16-1-248.pdf
参考)https://www.mdpi.com/2227-9717/11/1/83/pdf?version=1672404365
「副作用の話」をする際、患者は“発現確率”よりも“自覚できる初期サイン”を知りたいことが多いので、次のような言い換えが有効です。
参考:週刊誌の“危ない薬”報道の質(科学的妥当性、定量性、ベネフィット提示など)の評価枠組み
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjdi/24/1/24_1/_pdf
「飲み続けてはいけない」と言われやすい代表的な論点が、甘草(カンゾウ)を含む方剤の“積み上げ”です。
病院広報誌の薬剤師解説でも、甘草を含む漢方薬を数種類または長期間摂取すると偽アルドステロン症を発症することがある、と明確に述べられています。
甘草は約7割の漢方薬に配合されるという説明もあり、「1剤だけ見て安心」になりやすい点が実務上の落とし穴になります。
偽アルドステロン症の症状としては、血圧上昇、浮腫、体重増加、低カリウム血症に伴うしびれ・脱力・倦怠感などが挙げられ、重症化すると不整脈が起こり得るため“見逃さない設計”が必要です。
このため、慢性症状で長期処方が想定される場合ほど、症状の変化(むくみ、脱力、歩きにくさ)と、必要に応じた電解質チェックにつなげる導線を作る価値があります。
また、患者が複数医療機関を受診しているケースでは、お薬手帳で総量を確認する行動が推奨されています。
実装のコツは「甘草=悪」ではなく、「甘草が“重なると”まずい」という条件付きで伝えることです。
患者向けには、次の一言が効きます。
参考:甘草が広く含まれること、偽アルドステロン症の症状、併用・長期でリスクが上がる点
https://www.nishijinhp.com/%E6%BC%A2%E6%96%B9%E8%96%AC%E3%81%AB%E3%82%88%E3%81%8F%E5%90%AB%E3%81%BE%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%8C%E7%94%98%E8%8D%89%E3%80%8D%E3%81%AE%E3%81%8A%E8%A9%B1/
偽アルドステロン症は、甘草成分(主にグリチルリチン)に関連して起こり得る有害事象として知られ、実データベース解析でも臨床的関連因子が検討されています。
医薬品副作用データベース(JADER)を用いた解析では、偽アルドステロン症報告では甘草投与量が多く、使用期間が長い傾向が示され、14日以上の使用が偽アルドステロン症と有意に関連したと報告されています。
同じ解析で、女性、70歳以上、体重50kg未満、利尿薬使用、認知症、高血圧などが関連因子として挙げられており、患者背景でリスクが大きく揺れる点が“週刊誌的な一律否定”と相性が悪いところです。
臨床での「見つけ方」は、疾患名を覚えるより“パターン”を持つ方が早いです。
患者説明は、恐怖を煽るより「予防の手順」に落とすと納得されやすいです。
参考:JADER解析で示された、甘草量・使用期間(14日以上)と偽アルドステロン症の関連、リスク因子
漢方薬による偽アルドステロン症、高血圧や認知症と関連|医師向…
独自視点として強調したいのは、「飲み続けてはいけない」という言葉が、患者に“勝手にやめる正当化”を与え、多剤併用(漢方+西洋薬+OTC)の全体最適を崩す引き金になり得る点です。
週刊誌の危険性報道は、ベネフィットや発現頻度の定量説明が欠落しがちで、結果として患者の不安→服薬回避に結びつく可能性が示唆されています。
漢方は「同じ生薬が別名処方に分散して潜む」ため、薬剤数が増えた瞬間に“どこが危険因子か”が患者に見えなくなり、医療者側の棚卸し能力が問われます。
外来・薬局での運用は、次の2点をルール化すると再現性が出ます。
患者が「週刊現代に飲み続けると危ないって書いてあった」と言った瞬間は、否定から入るより“点検の合意”に変換する方が収束します。
医療従事者向けに最後に一つだけ現場的な注意点を挙げるなら、甘草由来の副作用は“漢方1剤の添付文書を守っていても”、他剤併用・他院処方・OTCで簡単に設計が崩れる、という点です。
だからこそ、検索ワードに引っ張られず、患者の薬歴と生活背景から「漫然継続」を止める仕組みを作ることが、最も実利のある対応になります。