「痛みを我慢して働き続けると医療従事者の7割が“自分のオーバーユース”に気づかないまま診療を続けているデータがあるんです。」 pubmed.ncbi.nlm.nih(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15882100/)
オーバーユース症候群は、単発の外傷ではなく「微小な損傷の累積」によって生じる慢性障害の総称で、反復動作による関節周囲の筋腱・靱帯・骨の外傷性炎症として説明されています。 いわゆる「使い過ぎ症候群」であり、理学療法領域では過用性筋力低下や腱付着部障害などが代表的な病態として扱われています。 スポーツ整形の文脈では、テニス肘、野球肩・野球肘、シンスプリント、腱鞘炎、疲労骨折などが「オーバーユース症候群」の代表例として挙げられます。 これらはいずれも「いつから痛くなったのか曖昧」「ぶつけた覚えがないのに徐々に痛くなる」と訴えられることが多いのが特徴です。 つまり外傷ではなく“経過の病気”ということですね。 kume-sinkyu-seikotu(https://kume-sinkyu-seikotu.com/menu/o-ba-yu-susyoukougunn/)
典型的な身体症状としては、運動や業務の後に出現する鈍い痛みや違和感、局所の腫れや熱感が初期症状として報告されています。 一見すると「仕事終わりの疲れ」「立ちっぱなしのせい」と解釈されがちですが、同じ動作を繰り返す業務では日単位・週単位で痛みが増悪し、休息だけでは改善しにくくなります。 進行すると、動作開始時や荷重時の鋭い痛み、可動域制限、筋力低下により、階段昇降や物の把持など日常生活レベルの動作にも制限が出ることがあります。 慢性化すると、痛みのために姿勢や動作が代償的になり、別部位の二次的な障害を招くこともあります。 つまり早期介入が原則です。 nikoniko-sports(https://nikoniko-sports.jp/nayami/o-ba-yu-sushoukougun/)
一方で、医療従事者を含む働く成人では、スポーツ選手と比べて「非典型なオーバーユース症状」が問題になることがあります。例えば、疲労骨折は日本陸上競技連盟の疫学調査で長距離選手の20~30%に発生するとされますが、同様の「高頻度・中等度負荷」の条件は長時間立位・歩行を行うナースにも近い環境です。 しかし看護師では、腰痛や肩こりなどの筋骨格症状に“疲労骨折や腱付着部炎の前段階”としての鈍痛が紛れ込んでいる可能性があります。これは使い過ぎによるサイレントな進行です。 waseda.repo.nii.ac(https://waseda.repo.nii.ac.jp/record/2002361/files/Honbun-9617.pdf)
さらに、オーバーユース症候群は疼痛にとどまらず「機能低下」としても現れます。握力の低下、細かい作業での巧緻性低下、階段での踏み込み力の低下などは、痛みの訴えより先に出現することもあり、医療従事者の手技の質や安全性に直結します。 痛みを口にしないスタッフほどパフォーマンス低下で気付かれるケースもあります。これは使い過ぎだけ覚えておけばOKです。 nikoniko-sports(https://nikoniko-sports.jp/nayami/o-ba-yu-sushoukougun/)
医療従事者はスポーツ選手ほどの高強度運動は行わない一方で、「低〜中等度負荷の反復」「静的筋収縮」「長時間立位」が重なり、オーバーユースのリスクが慢性的に存在します。 山梨県の農村部病院看護師329名を対象とした調査では、過去12か月の筋骨格系障害(MSD)有病率が実に91.9%に達し、そのうち腰痛は82.6%と報告されています。 ほぼ全員が何らかの「使い過ぎ関連症状」を経験している計算です。つまりかなり高率です。 webview.isho(https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1551101448)
医療従事者では、身体のオーバーユース症候群と心理的なバーンアウトが同時進行していることが少なくありません。 米国CDCの報告では、2022年時点で医療従事者の46%が「頻回に燃え尽き感を経験する」と回答しており、2018年の32%から大きく増加しています。 別の調査では、職場の産業保健にアクセスした医療従事者のうち70%がバーンアウト状態にあり、身体症状と心理症状が混在していることが示されています。 これは身体だけの問題ではないということですね。 cdc(https://www.cdc.gov/vitalsigns/health-worker-mental-health/index.html)
バーンアウトは、初期には「目標への過剰なコミットメント」「休んでも取れない疲労感」として現れ、次第に患者・同僚・仕事へのコミットメント低下、抑うつ・攻撃性などの情動反応、認知機能低下や判断力の低下へと進行することが報告されています。 この過程で、頭痛、肩こり、腰痛、消化器症状、不眠など、多彩な身体症状が前景化します。 これらは筋骨格系のオーバーユース症候群と重なる部分が多く、現場では「どこまでが体の使い過ぎで、どこからがメンタル由来なのか」が見えにくくなります。どういうことでしょうか? imj(https://imj.ie/wp-content/uploads/2024/12/The-Prevalence-of-Burnout-in-Healthcare-Workers-Presenting-to-Occupational-Health.pdf)
臨床的には、「同じ動作の反復で誘発・増悪し、休息や動作変更で一時的に軽減する局所症状」は、オーバーユース主体の可能性が高いサインです。 一方、「業務負荷とは無関係に一日中続く全身倦怠感や多部位の痛み、仕事への著しい意欲低下や感情のフラット化」が目立つ場合、バーンアウトやうつ状態の関与を強く疑うべきです。 また、疼痛への対処にアルコールや過量服薬を用いるようになると、オーバードーズによる中枢神経抑制や呼吸抑制など、命に関わるリスクも出てきます。 これは見逃せないリスクです。 soujinkai.or(https://soujinkai.or.jp/himawariNaiHifu/overdose/)
実務上は、「痛みの場所・誘因・時間帯・気分との関係」をA4一枚程度の簡易シートに記録してもらうだけでも、身体オーバーユースとバーンアウトの境界が見えやすくなります。例えば、患者移乗の直後に腰痛が10段階中7まで上がり、30分の座位休憩で4まで下がる、などです。これにより、業務内容の調整や物理的対策の優先度を客観的に説明しやすくなり、産業医面談や人事との調整時にも説得力のある資料になります。 結論は“見える化”が鍵です。 imj(https://imj.ie/wp-content/uploads/2024/12/The-Prevalence-of-Burnout-in-Healthcare-Workers-Presenting-to-Occupational-Health.pdf)
オーバーユース症候群の最大の問題は、「痛みを我慢して働き続ける」文化によって、医療者自身の症状が進行してから初めて相談される点です。 特に中堅以上のスタッフほど「この程度で休めない」「若手に迷惑をかけられない」という心理が働き、初期の鈍い痛みや違和感の段階ではサポートを求めません。 しかし疲労骨折などのオーバーユース障害は、長距離走選手で20〜30%の発生率と報告されており、同様の高頻度負荷を受ける医療者においても「見えていないだけで存在している」と考えるのが妥当です。 ここが見逃しポイントということですね。 nakkotsu(https://www.nakkotsu.com/case/case-4562/)
セルフチェックの実務的なポイントとしては、次のような項目が有用です。
・勤務終了時の痛みスコア(0〜10)と翌朝の痛みスコアの差
・特定の動作(患者の抱え上げ、点滴固定、PC入力など)で痛みが増悪するか
・左右差(利き手側・片側の肩や腰のみに出ていないか)
・2週間以上持続しているかどうか
これらを一目でわかるよう、カレンダー形式で1〜2か月記録すると、パターンが浮かび上がります。 つまりパターン認識です。 kume-sinkyu-seikotu(https://kume-sinkyu-seikotu.com/menu/o-ba-yu-susyoukougunn/)
チームとしては、週1回5分程度の「身体コンディション共有タイム」をカンファレンスの冒頭に組み込むだけでも、オーバーユース症状の早期発見につながります。ここでは、具体的な診断名を求める必要はなく、「腰が重い」「首が回しづらい」「握力が落ちてきた気がする」などの感覚レベルで十分です。 こうした共有は、同時に職場の心理的安全性の指標にもなり、バーンアウト予防にも寄与します。 これは使えそうです。 cdc(https://www.cdc.gov/vitalsigns/health-worker-mental-health/index.html)
オーバーユース症候群は、個人のストレッチや筋力トレーニングだけでは限界があり、組織レベルの環境・制度設計が大きく影響します。 日本医師会の健康スポーツ医学委員会の答申でも、学童期における部活動でのオーバーユース症候群のリスクが指摘されており、「世代に応じた運動のあり方」が強調されています。 同様に、医療従事者の身体活動量も「多ければ良い」ではなく「回復を含めた設計」が重要です。これは職場設計の問題ということですね。 med.or(https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20180404_2.pdf)
具体的には、以下のような仕組みが考えられます。
・一人あたりの移乗回数や歩数を、1勤務あたりの目安値として可視化し、上限を設ける
・オーバーユース関連の症状が出たスタッフが、一定期間「高負荷業務を減らしたシフト」に移れる制度
・物理的負荷を軽減する機器(リフト、電動ベッド、スライディングボードなど)の導入状況を、医療安全と同じレベルで監査する仕組み
また、バーンアウトと身体オーバーユースの両方を抱えるスタッフに対しては、産業医・メンタルヘルス専門職・リハビリテーション専門職(理学療法士・作業療法士など)が連携し、「身体負荷を減らしつつ心理的負荷も軽減する」複数面からの介入が有効です。 例えば、週1回の相談枠を「腰痛・肩痛・疲労感が続くスタッフ向け」に開き、そこで身体評価とメンタルヘルス評価を同時に行う形です。これにより、軽症段階での介入が行いやすくなります。 こうした多職種連携が基本です。 imj(https://imj.ie/wp-content/uploads/2024/12/The-Prevalence-of-Burnout-in-Healthcare-Workers-Presenting-to-Occupational-Health.pdf)
オーバーユース症候群の病態や予防、運動療法の基礎的な考え方については、理学療法関連の専門誌や日本医師会の健康スポーツ医学委員会答申が参考になります。 webview.isho(https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1551101448)
日本医師会・健康スポーツ医学委員会答申(運動とオーバーユースのリスク、世代別の運動のあり方を整理した資料)