立位と座位と臥位の基本と医療現場での管理

医療従事者にとって重要な立位、座位、臥位の体位管理について、各姿勢の特徴やバイタルサインへの影響、体位変換時の注意点を網羅的に解説します。患者の状態に応じた適切な体位選択ができていますか?

立位・座位・臥位の基本と臨床的意義

💡 体位の基本3種類
🧍
立位(りつい)

立っている姿勢で、支持基底面が最も狭く筋力とバランス能力が必要

🪑
座位(ざい)

座っている状態で、臥位よりも身体を動かしやすく呼吸も楽

🛏️
臥位(がい)

寝ている姿勢で、支持基底面が広く最も安定した体位

立位・座位・臥位の定義と特徴

 

 

体位は医療・介護現場における基本的な概念であり、大きく立位、座位、臥位の3種類に分類されます。立位とは立っている状態を指し、臥位や座位と比較して支持基底面が狭いため、筋力やバランス能力が必要とされます。背中や膝を伸ばすことが安定した立位を維持するポイントとなり、筋力やバランス能力の低下により転倒リスクが高まります。kaigo-antenna+1
座位は座っている状態を指し、端座位、長座位、椅座位、半座位(ファーラー位)などの種類があります。座位は臥位よりも楽に身体を動かせ、呼吸もしやすくなる特徴があり、脳の活性化にもつながると言われています。端座位はベッドの端などに腰かけ、両足を下して背もたれがなくても座っている姿勢であり、ベッドからの移乗時に重要な中間姿勢として位置づけられます。tryt-worker+2
臥位は寝た状態を指し、仰臥位(仰向け)、側臥位(横向き)、腹臥位(うつ伏せ)などに分類されます。仰臥位は支持基底面が広いため安定感がありリラックスできる体位ですが、舌根沈下になりやすく、呼吸が浅くなる傾向があります。側臥位は仰臥位に比べて支持基底面が狭いものの、動きやすく姿勢を変えやすい特徴があり、咳も比較的しやすくなります。kaigo-antenna+1

立位・座位・臥位がバイタルサインに与える影響

体位による血圧の変化は医療現場で重要な観察ポイントです。一般的に収縮期血圧(最大血圧)は立位<座位<臥位の順で高くなり、逆に拡張期血圧(最小血圧)は立位が最も高く、座位、臥位の順で低くなります。立位で収縮期血圧が低くなるのは、心臓より下にある動脈や毛細血管の静水力学的圧力が高くなり、血液が身体の下部にうっ滞する状態となり、心臓への還流血液量が減少するためです。kango-roo+2
臥位では心臓から全体的に平面に血液を押し出すため、拍出量や心拍数は少なくても済みます。座位では下半身に血液が滞留しやすくなるため心拍出量が減少し、臥位よりも収縮期血圧が低下する傾向があります。座位から立位になったとき、血圧調節機能が正常であれば血圧は維持されますが、調節がうまくいかない場合には起立性低血圧が生じます。kango-roo+3
体位と呼吸機能の関連も重要な臨床的知見です。座位になると横隔膜が下がり、臥位の状態で腹部臓器による横隔膜への圧迫が避けられるため、呼吸面積が広がり肺の伸展が容易となります。一般に呼吸量が大きい順に取られる体位は、立位>座位>仰臥位>腹臥位となります。うっ血性心不全などの心臓性呼吸困難の場合、座位では下肢や腹部の静脈に血液がたまり心臓に戻ってくる血液(静脈還流)が減少するため、肺うっ血が軽減され呼吸が楽になります。kango-roo+1

立位・座位・臥位における体位変換の基本技術

体位変換とは患者が自分で身体を動かすことができないとき、ベッド上での姿勢や位置を動かす介助をすることで、日常生活援助や長期臥床時の褥瘡予防などを目的として実施されます。仰臥位から側臥位への体位変換では、上半身と下半身を同時に動かすことが最も重要なポイントとなります。別々に動かそうとすると体が安定せず余計な力が必要となるため、肩と膝を同時に動かすよう意識します。kango-oshigoto+3
仰臥位から端座位への移行は、臥位から立位への重要な中間段階です。介護用ベッドのリクライニング機能を活用すると、仰向けの状態から起き上がることが可能で、体が起き上がったら膝をベッドの外に降ろし端座位にします。端座位から立位への移行では、立ち上がり後に立ちくらみなどがないか気分の確認を行うことが重要です。立位が不安定な患者は身体機能が脆弱化している可能性があるため、安全を考慮して座位姿勢で運動を行うことが推奨されます。kaigojob+3
体位変換時にはボディメカニクスの原理を活用することで、介護者の負担を軽減できます。具体的には、支持基底面を広くする、重心を低くする、対象者に近づく、てこの原理を使う、対象者の身体を小さくまとめる、などの技術があります。スライドシートなどの補助具を使用すると、立位の移乗が難しい方や座位の姿勢が維持できない方でも安全に体位変換が行えます。kango-roo+2

立位・座位・臥位と褥瘡予防の関係

褥瘡(床ずれ)は、寝たきりの方が同じ体勢のままでいるとベッドと接している部分が圧迫され血液が流れにくくなり、その部分がただれたような状態になる疾患です。褥瘡は体位によって圧迫されやすい部位が異なり、仰臥位(仰向け)では仙骨部や踵骨部、側臥位(横向き)では大転子部や肩関節、座位では尾骨部や坐骨部が好発部位となります。leis+2
仰臥位では後頭部、肩甲骨部、肘関節部、仙骨部、踵骨部が褥瘡好発部位とされています。半座位(ファーラー位)では後頭部、肩甲骨部、仙骨部、臀部、踵骨部が圧迫されやすい部位です。同一部位の長時間の圧迫を避けるため、ベッドに寝ている場合は1~2時間毎、椅子に座っている場合は1時間毎に体位を変えることが褥瘡の予防に役立ちます。supernurse+2
体位変換の際には「30度側臥位」を意識すると効果的です。これは骨の突出がない臀部の側面に体重がかかる姿勢であり、仙骨部や大転子部への圧力を分散できます。体位変換後には服のしわやシーツのしわを必ず伸ばすことが重要で、しわがあるとそれも褥瘡の原因になります。膝の下に大きめのクッションを入れて脚全体を支え、かかとを少し浮かすことも褥瘡防止に効果的です。theotol.soudan-e65+2

立位・座位・臥位の評価と画像診断における革新

従来の医療画像診断は主に臥位で行われてきましたが、立位や座位での撮影が可能な機器の開発により、新たな診断価値が見出されています。臥位と立位で解剖学的構造が変化することで現れる病態があり、骨盤底の臓器脱や鼠径ヘルニアなどは臥位CTでは描出が難しく、立位での撮影で初めて診断がつく症例が報告されています。pmc.ncbi.nlm.nih+1
脊椎すべり症、変形性膝関節症など荷重がかかることで変化する病態を画像として捉えることで診断が可能になり、治療につながります。側彎症や漏斗胸の患者の肺葉体積の変化から呼吸困難の原因解明や、上大静脈の径の変化から心不全の重症度判定への応用の可能性などが立位撮影で明らかになっています。立位、座位、臥位の3体位での撮影が可能なマルチポジションCT「Aquilion Rise」は、ガントリが90°回転かつ上下動する機構を備えており、新たな診断の可能性を拓いています。innervision
座位と立位での脊椎骨盤アライメントの違いも重要な研究テーマとなっています。人工股関節全置換術(THA)の術前評価において、リラックスした座位での脊椎骨盤撮影が、まっすぐな座位よりも脊椎骨盤可動性の評価に適していることが報告されています。座位では下半身に血液が滞留しやすくなるため心拍出量が減少し、血管内皮にかかるせん断応力が低下するため、座位正常で仰臥位高血圧を示す症例の病態解明にも座位と臥位の比較が重要です。wbck+2
<参考リンク>
立位・座位・臥位の基本的な体位の種類と特徴について詳しく解説
https://www.kaigo-antenna.jp/kaigo-maruwakari/kaigo-technique/tec_001/detail-95/
体位による血圧変化のメカニズムについて
https://www.kango-roo.com/learning/2523/
座位が呼吸困難を軽減する理由について
https://www.kango-roo.com/learning/2503/
体位変換の具体的な技術と注意点について
https://kango-oshigoto.jp/media/article/3636/
褥瘡の好発部位と体位の関係について
https://www.supernurse.co.jp/useful/18222/

 

 




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