うつ状態は一時的な気分の落ち込みや憂鬱な気持ちが続く「状態」を指します。職場や家庭での嫌な出来事、身近な人の死、災害などのつらい出来事があったときに起こりやすい傾向にあります。この状態では、症状に波があり元気な時間も存在するのが特徴的です。fastdoctor+2
原因が明確で、ストレスや疲労、環境の変化によって生じることが多く、原因となるストレスが解消されれば自然に回復することが期待できます。数時間から数日で気分が回復し、日常生活への影響は限定的で、普段通りの生活が送れることが多いです。mcli+2
抑うつ気分、不眠、食欲の低下、意欲低下などの症状がみられますが、一日中続くわけではなく、日によって症状の程度に変動があります。好きなことに対してはある程度の興味関心を保つことができ、ポジティブな出来事には一時的に気分が改善する傾向があります。hirose-kokorono+2
うつ病は深刻なうつ症状が2週間以上続く「病気」であり、DSM-5やICD-10という国際的な診断基準を用いて診断されます。DSM-5では、9つの症状のうち5つ以上が2週間以上続く場合にうつ病と診断され、必ず抑うつ気分または興味・喜びの著しい減退のいずれかを含む必要があります。chamomile+3
DSM-5の診断項目には、抑うつ気分、興味や喜びの著しい減退、体重または食欲の変化、不眠または過眠、精神運動性の焦燥または制止、易疲労性、無価値観や罪責感、思考力や集中力の減退、死についての反復思考が含まれます。一方、ICD-10では「抑うつ気分・興味と喜びの喪失・易疲労感のうち2つ以上+その他の症状2つ以上」が2週間以上続く場合に診断されます。cocoromi-mental+1
うつ病の特徴として、症状がほぼ終日続き、元気な時間がほとんどありません。食欲がなくなり、眠れなくなる症状が継続し、日常生活への影響が重度で、「死にたい」と感じるほどつらい場合もあります。以前は楽しめたことにも興味がなくなり、ほとんどの事柄に喜びを抱けなくなるのが典型的な症状です。nagoya-hidamarikokoro+1
うつ病の治療は「急性期」「回復期」「再発予防期」という3つの段階に分けて進められます。各段階には特徴的な症状と治療目標があり、焦らず段階的に回復を目指すことが重要です。shinagawa-mental
急性期は診断から約1~3ヶ月の期間で、うつ病で最もつらい時期とされています。抑うつ気分や不安感、極度の疲労感、食欲不振、不眠などの症状が特に強く現れ、焦燥感や意欲低下も顕著です。この時期には十分な休養が最優先され、症状に応じて抗うつ薬や睡眠導入薬などの薬物療法が行われます。chamomile+2
回復期は診断から4~6ヶ月以上の期間で、急性期の強い症状は徐々に和らいでいきます。しかし、症状に波があり、良くなったり悪くなったりを繰り返すため油断できない時期です。症状が悪いときは「もう治らないかもしれない」と悲観的になることもありますが、これは回復の過程であると理解することが大切です。stressmental+3
再発予防期は約1~2年にわたり、薬物療法を継続しながら再発予防に努める段階です。症状がほぼ消失しても、自己判断で治療を中断せず、医師の指示に従って治療を続けることが再発防止には不可欠です。mencli.ashitano+2
うつ病になると仕事にさまざまな影響が出やすくなり、集中力ややる気が低下して業務上のミスが増加します。書類やメールでの誤字脱字が増える、締め切りや作業プロセスを忘れるといった行動が見られ、以前は仕事ができると言われていた人でもケアレスミスを繰り返すようになります。kaien-lab
遅刻や欠勤が増えることも特徴的で、仕事に行く時間になっても起きられない、体を動かせないといった状態に陥ります。不眠や過眠、気持ちの落ち込みなどの症状が続くと、仕事に対して前向きな気持ちを持てなくなり休みがちになります。重篤化した場合は無断での欠勤や早退、遅刻が増えるケースもあります。kaien-lab
コミュニケーションにも影響が出て、周りとの会話を避けるようになり、報告・相談が少なくなります。整理整頓ができなくなる、服装が乱れる、仕事中に眠気が襲ってくるといった変化も現れます。これらの症状によって仕事の能率が著しく低下し、日常生活を送ることが困難になる場合があります。di-agent.dandi+2
国際的な研究では、うつ病を持つ従業員の14%が6ヶ月後に新たな失業状態になり、生産性の低下(プレゼンティーイズム)や欠勤(アブセンティーイズム)が顕著に増加することが報告されています。また、年間約120億日分の労働日がうつ病と不安症によって失われており、精神保健状態に関連する総コストの50%は生産性低下などの間接的コストが占めています。pmc.ncbi.nlm.nih+1
うつ状態の初期段階では、セルフケアによる改善が期待できます。まず十分な休養を取ることが回復の第一歩であり、仕事や家事の負担を一時的に減らし、睡眠時間を確保することが重要です。無理に頑張らず心と体が求める休息に従うことで、症状の悪化を防ぐことができます。kashiwa-ekimae+1
生活リズムを整えることも効果的で、早寝早起きの朝型生活習慣を心がけ、朝日を浴びることで体内時計をリセットします。毎日同じ時間に寝起きし、食事も三食規則正しく取ることで、生活にリズムを作ることができます。chamomile+1
軽い運動を取り入れることで、幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンの分泌が促され気分が改善します。散歩や軽いストレッチなど、無理のない範囲で体を動かし、週に2~3回、30分程度の有酸素運動を行うのがおすすめです。chamomile
ロッテ健康情報サイト:セロトニンとストレスの関係について詳しく解説
食生活にも気を配り、セロトニンの元となるトリプトファンを含む食品(大豆製品、乳製品、バナナなど)や、DHAやEPAが豊富な青魚を積極的に摂取すると心の安定につながります。ビタミンB群(玄米、豚肉、卵など)やオメガ3脂肪酸(青魚、ナッツ類)も重要な栄養素です。nagoya-hidamarikokoro+1
「小さな行動」から始めることも大切で、着替える、洗顔するといった日常的な行動を無理のない範囲で実践します。完璧を目指さず「できたこと」を認め、自分にできる範囲の工夫を生活に取り入れるだけでも回復につながります。音楽を聴く、アロマを焚く、瞑想や呼吸法を試すなど、リラックスできる時間を意識的に作ることも効果的です。kashiwa-ekimae+1
うつ病の発症には、脳内の神経伝達物質の不均衡が深く関わっています。特にセロトニンは「幸せホルモン」と呼ばれ、精神を安定させたりやる気を出したり、幸福感を得たりするために必要な神経伝達物質です。セロトニンは脳幹のセロトニン神経から分泌され、喜びを感じる伝達物質と怒りや恐怖を感じる伝達物質の調節を行い、心の安静を保ちます。fuelcells+1
セロトニンの分泌が減少すると、不安になったり、落ち込みやすくなったり、目覚めが悪くなり、集中力も低下します。また、セロトニンは眠気を引き起こすメラトニンのもとになるため、セロトニンが不足するとよく眠れないといった変化も現れます。セロトニン減少の原因には、ストレスや睡眠不足、昼夜逆転などの不規則な生活があります。lotte
量子科学技術研究開発機構:セロトニン低下によるやる気低下のメカニズムに関する研究
逆にセロトニンが増えると、目覚めがよくなり、頭がスッキリしてポジティブな気分で過ごせるようになり、表情も明るくなります。うつ病はストレスをきっかけに脳内のセロトニンやノルアドレナリンが減ることで、気分の落ち込み、無気力、食欲の減退、不眠などを引き起こすと考えられています。wemeet+1
興味深いことに、セロトニンは腸でも作られており、腸内細菌の存在がセロトニン量に影響を与えるという研究結果も報告されています。このため、食生活を通じて腸内環境を整えることも、うつ病の予防や改善に役立つ可能性があります。fuelcells
医療従事者としては、うつ病の神経生物学的メカニズムを理解することで、患者への説明や治療方針の理解が深まり、より適切な医療サービスの提供が可能になります。qst