オッズ比(Odds Ratio, OR)は、2つの事象が発生するオッズの比率を示す統計指標です。オッズとは、ある事象が発生する確率とその事象が発生しない確率の比率を意味します。例えば、ある事象が起こる確率が0.8(80%)で起こらない確率が0.2(20%)の場合、オッズは0.8÷0.2=4となります。
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オッズ比は「たすきがけ」の計算式で求められ、症例対照研究では(症例群の曝露オッズ)÷(対照群の曝露オッズ)として計算されます。オッズ比が1の場合は2つのグループ間に違いがないことを示し、1より大きい場合はグループAでの事象のオッズが高く、1より小さい場合は低いことを示します。
参考)オッズ比とは
オッズ比はロジスティック回帰分析の結果として出力され、主に症例対照研究や横断研究で使用されます。ロジスティック回帰モデルでは、回帰係数の指数関数がオッズ比として算出されます。
参考)オッズ比とは?わかりやすく相対危険度(リスク比)との違いや計…
ハザード比(Hazard Ratio, HR)は、単位時間あたりのイベント発生率(ハザード)の比を表す指標です。ハザードは「期間(時間)」を考慮したイベント発生率の指標であり、生存時間解析で使われる重要な概念です。
参考)リハテックリンクス
ハザード比の計算では、例えば高血圧群100名を3年間観察し20名が脳卒中になった場合、ハザードは20名÷300人年≒0.067となります。非高血圧群で4年間観察し8名が脳卒中になった場合、ハザードは8名÷400人年≒0.02となり、ハザード比は0.067÷0.02=3.35倍と計算されます。
ハザード比はCox比例ハザードモデルによって算出され、時系列情報を加えた解析が可能です。ハザード比が1より小さければイベントを起こしにくく、1より大きければイベントを起こしやすいと解釈されます。
参考)https://rs.usaco.co.jp/product/xlstat/tips/cox-proportional-hazards-model-with-XLSTAT.html
オッズ比とハザード比の最も重要な違いは、時間要素の考慮の有無です。オッズ比は「イベントの有無」だけを情報として扱うのに対し、ハザード比はイベントの有無と「期間(時間)」を考慮しています。
参考)抗血栓療法トライアルデータベース
リスク比とオッズ比は特定期間内のイベント発生の有無のみを評価しますが、ハザード比は「いつイベントが起こったのか」という時系列の情報も加味した発症率を表します。この特性により、ハザード比は生存時間解析において、イベント発生タイミングを重視する研究に適しています。
参考)医療統計:Log-rank検定/Cox回帰モデル、ハザード比…
ただし、結果の見方には共通点があります。比が1であれば群間に差がなく、1から遠ければ群間差があるという解釈は、ハザード比でもリスク比でもオッズ比でも同じです。
参考)ハザード比(ハザードレシオ)の基本と医療統計における重要性
オッズ比は主に後ろ向きで行われる症例対照研究の効果指標として用いられます。症例対照研究では相対危険度を直接計算できないため、オッズ比を相対危険度の近似値として使用します。また、オッズ比はロジスティック回帰分析で算出され、計算が安定して答えが導き出せるメリットがあります。
参考)オッズ比
ハザード比は主に前向きで行われるコホート研究や臨床試験の効果指標として使用されます。特に生存時間解析においては、Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比が算出されます。開いたコホート研究では、人年法を用いた率比を計算するか、Cox比例ハザードモデルを用いた生存分析によりハザード比を計算できます。
参考)Cox比例ハザードモデルをわかりやすく解説!生存時間解析での…
各解析によって得られる結果の推定値は変わるため、研究の目的に応じてどの解析を実施するのか決める必要があります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjdisatmed/28/2/28_280204/_pdf
オッズ比の解釈では、リスク比との混同に注意が必要です。オッズ比は必ずリスク比に比べて1よりも離れた値をとる特性があり、イベント頻度が高いほどオッズ比はリスク比と離れた値になります。例えば、オッズ比が2.25であっても「リスクが2.25倍になる」とは言えず、これをリスク比と同等に扱うと喫煙の効果を誇張してしまいます。
参考)https://med-statacademy.com/storage/moviefile/192/NcgmJLgMVBMS2v0PgbAh12MKzEdAkeL31Rgbzztj.pdf
ハザード比の解釈で最も重要なのは、比例ハザードの仮定が成立しているかどうかです。比例ハザードの仮定とは、研究期間を通じて治療群と対照群のハザード(イベント発生率)の比率が一定であるという仮定です。この仮定が成立しない場合、ハザード比は時間に依存して変化し、一定の治療効果を示す値として解釈できなくなります。
参考)Coxモデルを使うなら要チェック!「比例ハザード仮定」って本…
また、ハザード比は相対的な効果を示す指標であり、治療の絶対効果や臨床的意義を直接示すものではありません。治療効果の大きさを示すには、p値ではなくオッズ比やハザード比のような効果の要約値で報告し、多角的な結果報告や議論を行う必要があります。
参考)【p値だけではダメ!】p値に依存した結果報告の落とし穴と正し…
医療統計でオッズ比が多用される理由は、計算の安定性と症例対照研究での有用性にあります。症例対照研究は疾病の発症率が低い場合でも実施可能であり、オッズ比は相対危険の近似値として機能します。実際の臨床研究では、遺伝子と癌発症の関連性など、後ろ向き研究で因果関係を探索する際にオッズ比が活用されています。
参考)https://www.med.hirosaki-u.ac.jp/~uro/research/Statistical_Analysis2022_8_26HP.pdf
ハザード比は生存期間や無病期間など、時間依存的なアウトカムを評価する臨床試験で広く使用されています。抗がん剤の治療効果評価や心血管疾患の予後因子分析など、「いつイベントが発生するか」が重要な研究ではハザード比が適しています。Cox回帰モデルを用いることで、複数の共変量を同時に考慮した多変量解析が可能となり、独立した予後因子を特定できます。
参考)https://www.ebm-library.jp/circ/topics/yougo.html
生存時間解析における詳細な解説:ハザード比の計算方法と統計的検定の手順について
両指標とも信頼区間の報告が重要であり、95%信頼区間が1を含まない場合に統計的に有意と判断されます。ただし、p値だけに依存せず、効果量の大きさと臨床的意義を総合的に評価することが求められます。
参考)【誤解を招く研究報告はNG!】研究結果の印象操作(スピン)の…

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