神経細胞(ニューロン)は、脳と神経系を構成する最も重要な細胞であり、他の細胞とは大きく異なる独特な構造を持っています 。神経細胞は細胞核、ミトコンドリア、ゴルジ体など、他の細胞と同じ構造をすべて備えているほか、軸索や樹状突起などの独自の構造も持っています 。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%B4%B0%E8%83%9E
神経細胞の構造は大きく3つの部分に分けられます。
神経細胞の大きさは様々で、細胞核の直径は3~18マイクロメートルまでさまざまです 。軸索は特に注目すべき構造で、ヒトでは1メートル、他の生物種ではそれ以上の長さに及ぶこともあります 。
神経細胞はその機能に基づいて通常3種類に分類されます 。この分類システムは、神経系全体の理解において非常に重要です。
感覚神経細胞は、感覚器官の細胞に作用する力、音、光などの刺激に反応し、その信号を脊髄や脳に伝達します 。これらの神経細胞は、外部環境からの情報を神経系に取り込む重要な役割を果たしています 。
参考)https://www.akira3132.info/sp_neuron_system.html
運動神経細胞は、脳や脊髄からの信号を受け取り、筋収縮から腺の分泌まであらゆる動作を制御します 。運動神経細胞の典型的な例として脊髄運動ニューロンがあり、これらは細胞体と呼ばれる細胞体と、ミエリン鞘(髄鞘)に覆われた細長い軸索から構成されます 。
介在神経細胞は、脳や脊髄の同じ領域内にある神経細胞どうしを結びつけます 。これらの神経細胞は、感覚情報の処理や運動制御において重要な統合機能を担っています 。
神経細胞間の情報伝達は、シナプスと呼ばれる接続部位で行われます 。シナプスは神経細胞と神経細胞の情報の受け渡し場所であり、私たちの脳には約一千数百億個の神経細胞が存在し、互いに複雑につながり合って神経回路を形成しています 。
参考)https://kompas.hosp.keio.ac.jp/science/20160901/
シナプス伝達のプロセスは以下のように進行します。
神経細胞が興奮すると、シナプスでは軸索の端から神経伝達物質が放出されます 。放出された神経伝達物質は、シナプス間隙を拡散して、次の神経細胞膜、あるいは効果器の細胞膜上にある受容体に結合し、情報は細胞内へと伝えられます 。
参考)https://www.kango-roo.com/learning/2079/
このようなシナプスにおける興奮の伝達は、私たちの脳においてはグルタミン酸とグルタミン酸受容体が主に担っています 。電気信号(活動電位)がシナプス前末端に到達すると、シナプス小胞が前末端膜に融合することで、中の伝達物質を外へと放出します(エキソサイトーシス)。
参考)https://www.oist.jp/ja/photo/%E3%82%B7%E3%83%8A%E3%83%97%E3%82%B9%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%B4%B0%E8%83%9E%E9%96%93%E6%83%85%E5%A0%B1%E4%BC%9D%E9%81%94%E3%83%A1%E3%82%AB%E3%83%8B%E3%82%BA%E3%83%A0
神経線維内の情報(活動電位)の伝播を伝導というのに対し、シナプス間隙の情報の伝播を伝達とよんで区別しています 。
従来、神経細胞は胎児期にのみ産生され、一度失われると二度と再生しないと考えられてきました 。しかし、現在では成人の脳でも特定の領域で神経新生が起こることが明らかになっています。
参考)https://ocw.kyoto-u.ac.jp/course/40/
神経新生とは、神経幹細胞と呼ばれるニューロンの素となる細胞がニューロンへ分化することです 。成人では脳神経細胞は基本的に再生されませんが、記憶を司る海馬など特定の領域では、終生にわたり神経幹細胞から神経細胞が新生されています 。
参考)https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%B3%E6%96%B0%E7%94%9F
海馬歯状回での神経新生について詳しく見ると。
参考)https://www.fujita-hu.ac.jp/ICMS/topics/ngforget/index.html
興味深いことに、海馬歯状回の神経新生は新しい記憶の形成に重要な役割を果たしている一方で、神経新生が起こると既存の神経回路に再編が生じるため、それまで蓄えられていた記憶は回路の再編に伴って忘却されてしまう可能性があることも指摘されています 。
加齢に伴って神経系には様々な変化が起こり、これらの変化は神経機能に大きな影響を与えます 。
参考)https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/rouka/shinkei-rouka.html
脳の加齢変化として最も顕著なのは脳の萎縮です 。人の脳は20歳頃に重さがピークとなり、その後は大きさや重さを維持していますが、50歳頃を境として、徐々に脳の萎縮が始まり、重さも減少していきます 。脳の中でも、大脳の萎縮がもっとも強く、特に記憶や言語を司る側頭葉や、それぞれの働きを統合し、意欲や意志の源となっている前頭葉での萎縮が大きいことが特徴です 。
健康状態に依存した個人差が非常に大きいものの、加齢に伴って脳の神経細胞の数が減少することがあります 。さらに、脳には神経細胞の萎縮や消失がみられたり、いわゆる「老人斑」とよばれるシミ「アミロイド斑」がみられるようになります 。
参考)https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/09-%E8%84%B3-%E8%84%8A%E9%AB%84-%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%B3%BB%E3%81%AE%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%AD%A6/%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%B3%BB%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%8A%A0%E9%BD%A2%E3%81%AE%E5%BD%B1%E9%9F%BF
末梢神経への影響も深刻です 。加齢に伴って、末梢神経での信号の伝達速度が低下したり、神経伝達物質の放出が障害されたりすると、感覚が鈍くなり、反射が遅くなるほか、多くの場合、体の動きがぎこちなくなります 。
神経変性疾患は、脳や脊髄にある中枢神経の神経細胞のなかで、ある特定の神経細胞群が徐々に障害を受け脱落し(神経細胞死)、発症する病気です 。神経変性疾患には、パーキンソン病やアルツハイマー病に加え、脊髄小脳変性症や筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、ハンチントン病などが含まれます 。
参考)https://www.takasaki-furuta-cl.jp/degeneration.html
神経変性疾患の主な発症プロセスには以下があります :
参考)https://blog.cellsignal.jp/what-is-neurodegenerative-disease
高齢者に発病しやすい傾向があることから、加齢そのものが発症のリスクであると考えられており、高齢化社会に伴い、ますます変性疾患の患者さんは増加していくと考えられています 。