タリビット眼軟膏0.3%(有効成分:オフロキサシン)は、外眼部の細菌感染症などに用いられる無菌の眼軟膏剤です。
「まぶたに塗る」と患者が表現するとき、実際には①下まぶたを軽く下げて“下まぶたの内側(結膜嚢)”へ塗布する意図、②眼瞼皮膚(まぶたの外側)に“皮膚用軟膏のように”塗る意図、③塗布後に軟膏が眼瞼皮膚へ付着している状態、の混在が起きやすいのが臨床の落とし穴です。
添付文書ベースでは、投与方法の共通注意として「汚染防止のため、塗布するとき容器の先端が直接目に触れないように」指導することが明記されています。
この“先端が触れない”は、角膜損傷の回避だけでなく、チューブ側の汚染→再接種リスクを下げる意味もあるため、医療者側は「触れないように、近づけすぎない」「押し出して“のせる”感覚」という言い換えを準備しておくと説明が通りやすくなります。
実務でよくあるのが「軟膏を出す量が多すぎて、まぶたの外までべったり付く」パターンです。
この場合、添付文書には「軟膏が眼瞼皮膚等についた場合には、すぐにふき取ること」と明記されており、“皮膚に塗り広げる”方向へ患者が自己流に進まないよう釘を刺せます。
参考)https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/300237_1319722M1056_1_09
患者が“まぶたに塗る”と言ったら、まず「内側に入れる(結膜嚢内)目的か、外側の皮膚に塗るつもりか」を確認し、目的が結膜嚢内なら「外側についた分は拭き取る」をセットで伝えるのが安全です。
用法・用量は「通常、適量を1日3回塗布する。なお、症状により適宜増減する」とされています。
結膜嚢内に塗布する場合は、「患眼を開瞼して結膜嚢内に塗布し、閉瞼して軟膏が全体に広がった後、開瞼すること」と具体的な手技が示されています。
ここでいう“結膜嚢内に塗布”を、患者が「下まぶたに塗る」と表現することが多いので、指導時は「下まぶたの内側(白目とまぶたの間)に入れる」と部位を言語化すると誤解が減ります。
参天製薬の一般向け解説でも、鏡を見ながら下まぶたを軽く下にひいて“下まぶたの内側に薬をつける”、先端がまつ毛や目に触れないようにする、という流れが示されています。
また「綿棒を使用する場合、清潔な綿棒にチューブから軟膏を少し取り、下まぶたを軽く下にひいて薬をつける」とあり、手指での操作が苦手な患者・手の震えがある患者には代替案として提示できます。
塗布後は「まばたきをせずにまぶたを閉じ、軟膏が溶けて全体に広がるまで待つ」「あふれた軟膏は清潔なガーゼやティッシュで軽く拭き取る」と説明されており、ここも“まぶたに塗ったら擦り込む”誤解を打ち消す材料になります。
医療者向けの細部としては、軟膏剤は一時的に視界がかすむ訴えが出やすいので、患者には「塗った直後は見えにくくなることがある」前提で、就寝前や外出前のタイミング調整を勧めるとアドヒアランスが落ちにくいです(※これは一般的な眼軟膏の剤形特性としての説明で、添付文書の文言そのものではありません)。
ただし、視機能の急激な悪化や強い眼痛・充血がある場合は、感染増悪や角膜病変など鑑別が必要なため、自己判断の継続使用ではなく受診を促す設計にします。
併用薬があるときの基本ルールは添付文書に明確で、「他の点眼剤を併用する場合には、本剤を最後に使用する(その際、少なくとも5分以上間隔をあける)」とされています。
軟膏を先に入れると油性基剤がバリアになって水性の点眼液が入りにくくなるため、点眼→最後に軟膏という順序を徹底するだけで、効き目の体感が改善しやすくなります。
患者説明では「目薬(液体)を先に、軟膏(最後)」と短く言い切り、さらに「最低5分あける」を数字で渡すと守られやすいです。
また、参天製薬の解説では使用前の手洗い、使用後にチューブ先端が不潔にならないようにしてフタを閉めることが強調されています。
この“手洗い→先端非接触→フタを閉める”は、単なるマナーではなく感染症治療の一部(再汚染を防ぎ、必要最小限の期間で終えるための条件)として説明すると、患者の理解が深まります。
重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)が記載され、紅斑、発疹、呼吸困難、血圧低下、眼瞼浮腫などの症状が認められた場合は投与中止し適切に処置する、とされています。
眼科領域では「まぶたが腫れた」を感染悪化と誤解しやすい一方、添付文書上は眼瞼浮腫がアナフィラキシーのサインとして挙がっているため、“腫れの性状(急激、左右差、皮疹、全身症状)”を質問して早めに切り分ける価値があります。
その他の副作用として、角膜障害(びまん性表層角膜炎等)、眼瞼炎、結膜炎、眼のそう痒感、眼痛なども挙げられており、症状が強い・増悪する場合は漫然継続を避けます。
さらに、使用期間に関して「耐性菌の発現等を防ぐため、原則として感受性を確認し、治療上必要な最小限の期間の投与にとどめる」「長期間使用しないこと」と明記されています。
患者が「まぶたに塗る薬だから、皮膚の抗菌軟膏のように長く続けても平気」と誤認すると、耐性化リスクだけでなく、症状が遷延した別疾患(アレルギー性結膜炎、MGD、ウイルス性など)の見逃しにもつながります。
医療従事者としては「良くなったら自己判断で急に止める」も「良くならないのにずっと続ける」も両方を避ける指導設計が必要で、受診・再評価の目安を具体化するのが有効です。
検索上位の“使い方”は手順説明が中心になりがちですが、医療者向けには「どこで手技エラーが起きるか」を先回りすると、指導の質が上がります。
現場で多いエラーは、(1) 先端がまつ毛に当たる、(2) 量を出しすぎて皮膚側に残り“まぶたに塗った”と自己解釈される、(3) 併用点眼の順序が逆、(4) 目をこすって薬を外へ出す、の4つです。
このうち(1)(2)は“汚染防止”と直結し、添付文書の注意(先端非接触、皮膚についたら拭き取る)をそのままチェックリスト化して渡すだけで再発が減ります。
患者指導で使いやすいチェックリスト例(外来・病棟の説明に転用可)を示します。
また、意外に重要なのが「患者が“塗った感”を求めて、まぶたを強くマッサージしてしまう」行動です。
参天製薬の解説は「まばたきをせずに閉じて待つ」としており、擦り込む動作を推奨していないため、「こすらず、閉じて待つ」を明確に言語化するとトラブルが減ります。
(適用上の注意・用法用量・副作用など一次情報として参照)
PMDAのタリビッド眼軟膏0.3%添付文書(組成、効能・効果、用法・用量、重要な基本的注意、適用上の注意、副作用の詳細)
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/300237_1319722M1056_1_09
(患者向けの具体的な塗布手順・綿棒使用・拭き取り・手洗いの説明として参照)
参天製薬「目薬(点眼液・眼軟膏)の使い方」(下まぶたの内側に薬をつける、綿棒で塗る、まばたきせず閉瞼、あふれた軟膏の拭き取り)
https://www.santen.com/jp/healthcare/eye/eyecare/eyelotion/5