アレルギー性結膜炎の最も特徴的な症状は目のかゆみです。この症状は他の結膜炎との鑑別において重要な指標となります。患者が訴える主な症状には以下があります。
主要症状:
診断においては、問診と身体所見、結膜の状態観察が基本となります。結膜上皮細胞の擦過採取により好酸球の存在を確認することで確定診断が可能ですが、臨床現場では涙液や血清中のIgE量測定による診断が一般的です。
分類による症状の違い:
季節性アレルギー性結膜炎(スギ花粉症など)では、特定の季節にのみ症状が現れ、通年性アレルギー性結膜炎では年間を通じて症状が持続します。重症例として、小児に多い春季カタルやソフトコンタクトレンズ使用者に見られる巨大乳頭結膜炎があります。
現在、日本では3人に1人が何らかのアレルギー疾患を有しており、特にスギ花粉症患者は増加傾向にあります。花粉飛散量は前年夏の気候に大きく影響され、猛暑で雨の少ない夏の翌年は花粉飛散量が増加することが知られています。
アレルギー性結膜炎の治療は点眼薬による薬物療法が主体となります。治療薬は作用機序により複数のカテゴリーに分類されます。
抗アレルギー点眼薬:
第一選択薬として使用される抗アレルギー点眼薬には、以下の種類があります。
具体的な薬剤例:
角膜保護・修復薬:
重症例に対する治療薬:
ヒスタミンはアレルギー反応の主要なメディエーターであり、血管拡張による充血や炎症反応を引き起こします。抗ヒスタミン薬はこの作用を阻害することで症状を改善します。
アレルギー性結膜炎の治療は患者の症状の重症度に応じて段階的にアプローチすることが重要です。
軽症例の治療戦略:
軽症例では市販の抗ヒスタミン薬(ケトチフェンなど)で十分な効果が期待できます。症状が持続する場合は、処方薬による治療を検討します。
中等症例の治療戦略:
抗アレルギー点眼薬を中心とした治療を行います。必要に応じてヒアルロン酸やジクアホソルナトリウムを追加処方し、ドライアイが併存する場合はドライアイ用点眼薬も併用します。
重症例の治療戦略:
治療継続の重要性:
抗アレルギー点眼薬は継続使用により安定した効果が得られるため、症状のある時のみの使用では十分な効果が期待できません。患者には「かゆい時だけ」ではなく、医師の指示に従った定期的な使用の重要性を説明する必要があります。
アレルギーは原因が存在する限り根治しないため、症状のコントロールが治療の主目的となります。薬剤の効果が切れると症状が元に戻るため、点眼回数を減らすことはあっても中断は避けるべきです。
併存疾患への対応:
アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などの併存がある場合は、同時治療が重要です。症状の強い疾患のみを治療して他を放置すると、全ての疾患の治療効果が低下する可能性があります。
初期療法の概念:
花粉などの季節性アレルゲンが原因の場合、症状出現を予測できるため初期療法が保険適用されています。この治療法は症状が出る前の花粉飛散時期約2週間前、または症状が少しでも現れた時点から抗アレルギー点眼薬による治療を開始する方法です。
初期療法の効果:
実施タイミング:
スギ花粉症の場合、1-2月の気温が高いと早期から飛散が始まるため、天気予報や花粉情報を参考に適切なタイミングで開始することが重要です。
アレルゲン除去・回避の重要性:
薬物療法と並行して、日常生活でのアレルゲン除去・回避対策が不可欠です。
花粉症対策:
ハウスダスト対策:
特異的免疫療法:
根治的治療として、アレルゲンの継続投与による体質改善を目指す特異的免疫療法(減感作療法)があります。低濃度少量から開始し徐々に増量する長期治療ですが、アナフィラキシーショックのリスクに注意が必要です。
薬剤師は患者への適切な服薬指導を通じて、治療効果の最大化と副作用の最小化に重要な役割を果たします。
点眼薬使用方法の指導:
継続使用の重要性説明:
多くの患者が症状改善時に自己判断で点眼を中止してしまうため、継続使用の重要性を詳しく説明する必要があります。「かゆみが治まっても、予防効果を維持するために指示通り使用を続けてください」という具体的な説明が効果的です。
副作用モニタリング:
生活指導のポイント:
患者教育の工夫:
薬剤師は医師と患者の橋渡し役として、治療継続のモチベーション維持にも重要な役割を担います。患者の不安や疑問に適切に対応し、個々の生活スタイルに応じた実践可能なアドバイスを提供することで、治療成功率の向上に貢献できます。