ワントラムとツートラムの違いを最初に押さえるなら、「同じトラマドール塩酸塩でも、放出設計が違う」という一点に集約できます。岩手県薬剤師会の資料では、ツートラムは製剤中の“速報部(速放部)”によって最高血中濃度到達が早くなることが明記されており、製剤的特徴が体内動態の差を作る、と整理されています。
つまり、ワントラムは“ゆっくり効いて長く続く”方向に寄せた徐放設計、ツートラムは“速やかに効き始めて持続させる”ことを意識した設計です。
現場で誤解が起きやすいのは、「ツートラム=単に回数が2回のワントラム」ではない点です。投与回数(1日1回/2回)は結果としての用法差ですが、根っこは“速放成分を入れるかどうか”という設計の差で、ここが鎮痛の立ち上がりやピーク関連副作用の印象を左右します。
この差は、同じ“トラマドール”でも患者の訴え(効き始めが遅い・痛みの波に間に合わない・眠気や悪心が出やすい等)が変わり得る、という意味で医療従事者の説明ポイントになります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12034434/
また「速放部がある=良い」でもありません。速放は“必要なときに効かせやすい”反面、ピークが立ちやすい設計になり得るため、導入初期や副作用が強い患者では、増量の刻み幅・服用タイミング・食事との関係など、基本動作の丁寧さが重要です。
使い分けのコツは、疼痛の性質(一定の持続痛か、日内変動や活動時増悪が目立つか)と、患者が許容できる副作用の種類(眠気・悪心・便秘など)を、放出設計と結びつけて説明することです。
体内動態の数字は、患者が体感する「効き始め」と「副作用の出方」を理解する近道です。岩手県薬剤師会の資料では、トラマドール濃度で比較したTmax(最高血中濃度到達時間)が、ワントラム9.5時間に対してツートラム1.3時間と大きく異なる、と示されています。
同資料では、ツートラムは最高血中濃度がワントラムより1.5倍以上高いこと、半減期もツートラムの方が長いことが述べられており、これが「1日2回投与で安定した鎮痛効果につながる」と説明されています。
一方、埼玉県の資料でも、ツートラムの特徴として「速効性と持続性を併せ持つ」点が明確に書かれており、Tmaxは約1.4時間、半減期は約8.5時間、用法通りの使用回数は1日2回、と整理されています。
この“速効+持続”の組み合わせは、患者の生活の中で痛みが立ち上がるタイミング(起床後・移動・リハビリ・仕事前など)に合わせやすい一方、ピークが高い設計ほど、眠気・悪心・ふらつきといった中枢系副作用が「効き始めの時間帯に集中した」と表現されることがあります(もちろん個人差があります)。
ここで意外に見落とされがちなのが、「同じトラマドールでも、説明の仕方が変わる」という点です。ワントラムでは“じわじわ効くので、効果判定は数日単位で”、ツートラムでは“比較的早い時間に効き目が見えやすいので、導入初期の体感を聞き取りやすい”といった運用上の差が出ます。
医師・薬剤師・看護師で共有しておくと、患者が「効かない」と感じたときに、単純な増量よりも“剤形の設計差”を踏まえた提案(服用タイミング調整、用量刻みの見直し、制吐や便秘対策の先回り)につながります。
用法の違いは、単に「飲む回数」だけでなく、処方設計の自由度にも影響します。岩手県薬剤師会の資料では、ワントラムは1日1回、ツートラムは1日2回投与で安定した鎮痛効果が期待される、という整理がされています。
さらに同資料では、ツートラムは25mg・50mg・100mg・150mgの4製剤で“よりきめ細かな投与設計”ができる、と述べられています。
埼玉県の資料でも、ツートラムは「1日50mg(1回25mg)の少量から開始できる」ことがメリットとして記載されており、悪心などの副作用リスクを軽減しやすい導入設計が示唆されています。
この「少量導入」は、痛みが中等度で、NSAIDsやアセトアミノフェンだけでは不十分だが、強オピオイド導入には抵抗がある/時期尚早といったケースで、患者の納得を得やすい導入ルートになり得ます。
投与回数の観点では、ワントラムはアドヒアランス面で有利に見えますが、併用薬が1日2回のことは珍しくありません。岩手県薬剤師会の資料では、整形外科領域でセレコキシブやプレガバリン、ミロガバリンと併用する場合、これらが1日2回であるためツートラムと併用される、と実務的な示唆が書かれています。
つまり、患者の「飲み忘れ」リスクを下げる目的で1回製剤が良いこともあれば、逆に“他剤と服用タイミングを揃える”ことで飲み忘れを減らせる場合もあり、ここがワントラム/ツートラム選択の臨床的な分岐になります。
慢性疼痛では、痛みそのものだけでなく「活動性・睡眠・気分・服薬負担」をセットで最適化する必要があります。岩手県薬剤師会の資料にある通り、整形外科での併用(セレコキシブ、プレガバリン、ミロガバリン等)を前提にすると、投与回数を揃えやすいツートラムが選ばれる場面がある、というのは現実的です。
一方で、服薬回数をできるだけ減らしたい患者(就労中で日中に内服しづらい、服薬管理が苦手など)では、1日1回設計のメリットが活きる可能性があります。
併用時に医療従事者が注意したいのは、単純な“鎮痛の足し算”ではなく、副作用の重なりです。たとえば眠気やふらつきが出やすい薬剤が重なると、転倒リスクや運転可否の説明が重要になりますし、便秘はトラマドール系でも問題になり得ます。
岩手県薬剤師会の資料には、オピオイド誘導性便秘(OIC)への対応薬としてナルデメジン(スインプロイク)が触れられており、便秘対策を「後手」ではなく「先手」で考える視点が示されています。
また、埼玉県の資料では「トラマドールの位置づけ」として、各種ガイドラインで三段階鎮痛ラダーの記載が削除され、がん患者への投与を推奨していない旨が記載されています。
この点は、慢性疼痛での処方意図を患者・家族に説明する際に役立ちます(“麻薬”への不安が強い患者に、位置づけとリスク/ベネフィットを整理して話すための材料になります)。
ワントラム/ツートラムの違いを「剤形」と「回数」だけで語ると、臨床の“効かない/効きすぎる”を説明しきれないことがあります。埼玉県の資料では、CYP2D6という代謝酵素が20〜40%の患者で低下していることが、トラマドールの効き方に関係している、と記載されています。
これは、同じ用量でも鎮痛効果や副作用の出方がブレる背景として重要で、患者の訴えが「気のせい」ではないことを医療者側が構造的に理解する助けになります。
この観点を入れると、ワントラムとツートラムの選択・調整は「剤形の最適化」だけでなく、「患者側の代謝特性も含めた最適化」になります。たとえば、用量を上げても効果が乏しい・逆に少量で眠気が強い、といった場合に、単純な増量/減量で迷走せず、代謝の個人差を念頭に置いて評価・提案しやすくなります。
実務では、鎮痛評価(NRSなど)だけでなく、日中の眠気、悪心、便秘、転倒、服薬遵守といったアウトカムを一緒に追い、必要なら剤形変更や他鎮痛戦略へ切り替える、という判断が合理的になります。
最後に、“意外な盲点”として、患者説明の順番があります。「ワントラム/ツートラムの違い=1日1回/2回」とだけ伝えると、患者は「回数が少ない方が強い薬」と誤解しやすい一方、実際はTmax・Cmax・半減期・速放部の有無など、効き方の設計の違いが本質です。
医療従事者としては、①製剤設計(速放+徐放か、徐放中心か)、②体内動態(Tmax差)、③導入しやすさ(少量開始)、④併用と生活(回数を揃える/減らす)という順で説明すると、患者の理解と納得が得やすくなります。
埼玉県の資料(ツートラムの特徴、Tmax・半減期、少量開始、CYP2D6の記載)
https://www.saitama-pho.jp/documents/540/pctvol22024.pdf
岩手県薬剤師会の資料(ワントラム/ツートラムのTmax差、Cmax差、半減期、投与回数、併用の実務例)
https://www.lively-pharma.jp/lp/wp-content/uploads/2023/05/%E7%93%A6%E7%89%8846.pdf

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