要指導医薬品は、「その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないものであって、薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているものであり、かつ、その適正な使用のために薬剤師の対面による情報の提供及び薬学的知見に基づく指導が行われることが必要なもの」と法的に定義されています 。
参考)https://ph-lab.m3.com/categories/industry/series/report/articles/518
この区分は2013年の薬事法改正により新設されたもので、医療用医薬品と一般用医薬品の間に位置付けられた特別な医薬品カテゴリーです 。要指導医薬品は処方せんなしで購入できますが、薬剤師による対面での情報提供と指導が法律により義務付けられており、インターネット販売は許可されていません 。
参考)https://www.38-8931.com/pharma-labo/carrer/skill/youshidou_iyakuhin.php
この制度の背景には、医薬品の安全性確保と国民の適正使用促進という重要な目的があります。特に、医療用医薬品から市販薬に転用されたばかりの薬剤や、取り扱いに注意が必要な劇薬について、より厳格な管理体制を構築することで、セルフメディケーションの安全性を高めています 。
要指導医薬品には、安全性や特性に応じて以下の3つのカテゴリーが設定されています。
スイッチ直後品目 🔄
医療用医薬品から一般用医薬品に転用されたばかりの医薬品で、製造販売後調査期間中のものです 。これらの薬剤は医療用としての使用実績はありますが、一般用医薬品としての安全性データがまだ十分に蓄積されていないため、慎重な取り扱いが必要です 。原則として3年間の調査期間を経て、安全性が確認されれば第1類医薬品へ移行します 。
参考)https://www.hiroyaku.jp/di/wordpress/wp-content/uploads/20210901_yousidou_1rui.pdf
直接OTC品目 🏥
医療用医薬品を経ずに直接OTCとして承認された新医薬品で、再審査期間中のものです 。これらは全く新しい成分として市販薬市場に登場するため、十分な安全性確認が必要となります。
毒薬・劇薬 ⚠️
薬機法第44条に定める毒薬および劇薬に該当する医薬品です 。これらの薬剤は成分の性質上、特に慎重な取り扱いが求められるため、永続的に要指導医薬品として分類されています。現在、ヨヒンビン塩酸塩を含む勃起障害改善薬3品目が該当します 。
要指導医薬品の販売には、薬剤師による厳格な管理体制が義務付けられています。薬剤師は販売前に購入者の年齢、性別、症状、服用中の薬剤などを確認し、適応の有無を慎重に判断する必要があります 。
参考)https://yakuyomi.jp/career_skillup/column/03_114/
販売時には、用法用量、薬効、使用上の注意などについて詳細な情報提供を行い、購入者が内容を理解したことを確認しなければなりません 。この過程は必ず薬剤師が対面で実施する必要があり、登録販売者による販売は認められていません。
また、店舗内には薬剤師の勤務時間や要指導医薬品の販売時間帯を明確に掲示することが義務付けられています 。これにより、購入者が適切なタイミングで薬剤師からの指導を受けられる体制が確保されています。
薬局や店舗販売業者は、要指導医薬品を販売した際に詳細な記録を作成し、2年間保存する法的義務があります 。記録には、品名、数量、販売日時、販売した薬剤師の氏名、情報提供を行った薬剤師の氏名、購入者が情報提供内容を理解したことの確認結果を含める必要があります 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/pdf/140226-1-3.pdf
購入者の連絡先についても、書面で保管するよう努めることが求められています 。これらの記録は薬事監視の実効性確保と安全対策の観点から重要であり、電磁的記録での作成・保存も認められています 。
この記録制度により、要指導医薬品の販売状況を適切に管理し、必要に応じて安全性情報の収集や追跡調査が可能となっています 。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001392893.pdf
要指導医薬品制度は、社会情勢の変化に応じて見直しが検討されています。特に、新型コロナウイルス感染症の影響でオンライン医療が普及したことを受け、要指導医薬品のオンライン服薬指導についても議論が進められています 。
参考)https://credentials.jp/2024-02/special-report/
2023年の規制改革実施計画では、要指導医薬品についてもオンライン服薬指導の実施に向けた検討が盛り込まれました 。厚生労働省の調査によると、4割以上の薬剤師がオンラインでの実施に前向きな回答を示していますが、本人確認の困難さや情報提供の質の確保などの課題も指摘されています 。
また、要指導医薬品の一律的な一般用医薬品への移行制度についても見直しが検討されており、医薬品の特性に応じた柔軟な制度設計が求められています 。これにより、安全性を確保しながらも国民の医薬品アクセス向上を図る方向性が模索されています。