DAS28で「寛解」判定でも、CDAIで同じ患者のスコアを出すと寛解率が約3分の1になります。
CDAI(Clinical Disease Activity Index)は、関節リウマチ(RA)の疾患活動性、つまり「炎症や症状の強さ」を数値化するための複合的評価指標です。2002年にAletahaらによって提唱され、現在は日本リウマチ学会の診療ガイドラインでも推奨される標準ツールのひとつとなっています。
CDAIの最大の特徴は、血液検査(CRPやESR)を使わずに算出できる点です。診察室でその場で計算が完結するため、「リアルタイムの疾患活動性評価」が実現できます。
計算式はシンプルです。
| 構成要素 | 内容 | スケール |
|---|---|---|
| 圧痛関節数(TJC) | 圧痛のある関節の数(28関節中) | 0〜28 |
| 腫脹関節数(SJC) | 腫脹のある関節の数(28関節中) | 0〜28 |
| 患者による全般評価(PtGA) | 10cmのVASで患者本人が評価 | 0〜10 |
| 医師による全般評価(MdGA) | 10cmのVASで医師が評価 | 0〜10 |
CDAI=TJC+SJC+PtGA(0〜10)+MdGA(0〜10)
合計値の最大は76点です。計算に複雑な数式や対数変換は必要ありません。つまり四則演算だけで完結します。
疾患活動性の判定カットオフは下表のとおりです。
| 疾患活動性 | CDAIスコア |
|---|---|
| 🔴 高疾患活動性 | 22<CDAI |
| 🟠 中等度疾患活動性 | 10<CDAI≦22 |
| 🟡 低疾患活動性 | 2.8<CDAI≦10 |
| 🟢 寛解 | CDAI≦2.8 |
VAS(Visual Analogue Scale)は、長さ10cmの水平な線上で左端(0)を「症状なし」、右端(10)を「過去最大の症状」とし、患者または医師が現在の状態を記入するスケールです。たとえばVASで3.3cmに斜線を引いたなら、スコアは3.3となります。はがきの横幅(約14.8cm)の約22%の位置に当たるイメージです。
CDAIが導入される以前は、DAS28が主な活動性評価指標として使われていました。しかしDAS28の計算式には対数変換(Ln)や平方根(√)が含まれており、計算ツールなしに即座に算出することが難しいという弱点がありました。CDAIはその煩雑さを解消し、外来診療の場で患者とともにスコアを確認できる実用性を備えた指標として広く普及しています。
なお、関節の評価対象は両肩・両肘・両手関節・両親指指節間関節・両示〜小指の近位指節間関節(PIP)・中手指節間関節(MCP)・両膝の計28関節です。この28関節は、RAで炎症が生じやすい主要な部位を網羅しています。
参考:CDAIの計算方法と各評価法の比較(湯川リウマチ内科クリニック)
https://yukawa-clinic.jp/knowledge/evaluation/calculation-method.html
「DAS28で寛解」と「CDAIで寛解」は、同じ患者でも一致しないケースが少なくありません。これが大事な点です。
京都下鴨病院リウマチ科が行った研究(2012年)では、IL-6阻害薬トシリズマブ(TCZ)を投与した関節リウマチ患者33例を対象に、各評価法による寛解率を比較しました。結果は以下のとおりです。
| 評価指標 | 24週時点の寛解率 |
|---|---|
| DAS28-ESR | 73.3% |
| CDAI | 20.0% |
| SDAI | 23.3% |
| Boolean基準 | 23.3% |
DAS28-ESRの寛解率は、CDAIの寛解率の約3倍に達しました。これはDAS28で「寛解」と判定された患者のうち、相当数がCDAI基準では「低疾患活動性」にとどまっていることを示しています。
この差が生まれる主な理由が2つあります。
ひとつ目は「寛解のカットオフ値の設計思想の違い」です。DAS28-ESRでは2.6未満が寛解とされますが、CDAIの寛解基準(2.8以下)はより厳しく設計されており、関節数やVASが少しでも残っているとスコアが上振れしやすい構造になっています。
ふたつ目は「IL-6阻害薬使用時の評価バイアス」です。TCZのようなIL-6阻害薬は、CRPやESRなどの急性期蛋白の産生を直接抑制します。そのためCRPやESRを含む評価法(DAS28・SDAI)では、炎症が実際より軽く見えてしまう「過大評価」が生じやすいのです。一方、CDAIはCRPもESRも含まないため、IL-6阻害薬使用時でも評価が歪みにくいという強みがあります。
この特性は臨床上とても重要です。IL-6阻害薬を使用している患者のスコアをDAS28だけで追っていると、実際の病態より良好な印象を受ける可能性があるからです。
京都大学リウマチセンターの通信資料でも「一般にはDAS28がいちばん甘い」と明記されており、これは複数の研究で一貫して示されている知見です。
参考:各評価法の特性と注意点に関する学術資料(京都大学医学部附属病院リウマチセンター)
https://www.racenter.kuhp.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2011/05/ra201102.pdf
参考:各評価法によるトシリズマブ有効性の比較検討(J-Stage 臨床リウマチ誌)
3つの主要指標を正確に使い分けることが、適切な治療判断につながります。まず整理しましょう。
| 指標 | 計算式の構成要素 | 血液検査 | 寛解の閾値 |
|---|---|---|---|
| DAS28 | 圧痛関節数・腫脹関節数・患者VAS・CRPまたはESR | 必要(CRPまたはESR) | <2.6(ESR)/ <2.3(CRP) |
| SDAI | 圧痛関節数・腫脹関節数・患者VAS・医師VAS・CRP | 必要(CRP) | ≦3.3 |
| CDAI | 圧痛関節数・腫脹関節数・患者VAS・医師VAS | 不要 | ≦2.8 |
ポイントは「医師VAS」の有無です。
DAS28には医師VASが含まれていません。一方、SDAIとCDAIは医師VASを含む設計になっています。医師の主観的な評価も加味される分、患者VASとの乖離が評価に反映されやすくなっています。
ただし、実際の医師VASと患者VASの間には乖離が生じることがあります。日経メディカルが報じた研究(2011年)によると、「医師はRA疾患活動性の改善度を過大評価し、患者は過小評価する傾向がある」ことが明らかになっています。この傾向を意識しておくことが精度の高いCDAI評価には不可欠です。
痛いですね。医師が「よくなった」と感じている一方で、患者本人はまだ苦しんでいるケースが数字として現れているわけです。
SDAIはCDAIにCRP(mg/dl)を加えた指標です。CRPが1mg/dl追加されるとSDAIに1点加算される計算です。SDAIの寛解閾値はCDAIより少し高い(≦3.3)ですが、CRPが低値であれば両指標の数値はほぼ一致します。CRPが高い患者ではSDAIがCDAIより大きく乖離します。
DAS28の計算式には自然対数(Ln)や平方根(√)が含まれており、暗算では算出できません。電子カルテシステムやHOKUTOアプリなどの計算補助ツールを活用することで正確なスコアを得られます。
参考:疾患活動性評価指標DAS28・SDAI・CDAIの概要(湯川リウマチ内科クリニック)
https://yukawa-clinic.jp/knowledge/evaluation/objective.html
参考:DAS・SDAI・CDAIの解説(ナース専科)
https://knowledge.nurse-senka.jp/232289/
CDAIを単なる「数値の記録」にとどめず、治療戦略の軸にすることが現在の標準的アプローチです。
「目標達成に向けた治療(Treat to Target:T2T)」とは、具体的な数値目標(臨床的寛解または低疾患活動性)を設定し、その目標を達成するまで外来ごとに治療を見直し・強化していく戦略です。2010年にSmolen らによって提唱され、日本リウマチ学会のガイドラインでも強く推奨されています。
T2Tにおける目標は次のように位置づけられています。
- 🎯 第一目標(優先):臨床的寛解(CDAI≦2.8 / SDAI≦3.3 / DAS28<2.6)
- 🟡 代替目標(長期罹患・高齢患者など):低疾患活動性(CDAI≦10)
CDAIが特に有用なのは、受診ごとにその場でスコアを算出し、患者と医師が同じ数値を見ながら「今どこにいるか」「目標まであとどのくらいか」を共有できる点にあります。これは患者のアドヒアランス向上にも寄与します。
実践上のポイントをまとめると以下のとおりです。
- ✅ 外来ごと(目安:1〜3か月ごと)に定期的に評価を記録する
- ✅ VASの記入方法を患者に事前説明しておく(「過去最大の症状を10」とする認識統一)
- ✅ IL-6阻害薬使用中の患者ではDAS28単独での評価を避け、CDAIまたはSDAIと並行して用いる
- ✅ スコアが目標値を上回っている場合、次回受診までに治療方針を見直すことをルール化する
T2T研究では、CDAI12週時点で低疾患活動性(≦10)を達成した患者は24週時点での寛解率が有意に高いことが示されています。つまり中間目標の確認がゴールの達成率を左右する、ということです。
「次回は低疾患活動性になるように」という明確な短期目標を示すことが、T2Tの真髄です。
参考:T2T(目標達成に向けた治療)の解説(日本リウマチ学会)
https://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rheuma/t2t/
これは検索上位記事では詳しく触れられていない、独自の視点です。
CDAIを含むすべての標準的疾患活動性評価指標(DAS28・SDAI・CDAI)の評価対象は「28関節」に限定されています。具体的には、両肩・両肘・両手首・両親指・両示〜小指のPIP関節とMCP関節・両膝の28関節です。重要な点は、足首(足関節)・足指(MTP関節など)は評価の対象に含まれていないことです。
これは、関節リウマチ患者の日常生活に深刻な影響を与える可能性があります。
英国で関節リウマチ患者585名を対象に行われたアンケート調査(Otter SJ ら、2010年)では、以下の事実が明らかになっています。
- 🦶 90%以上の患者が生涯に一度は足痛を自覚している
- 🦶 発症2年以内の早期RA患者でも足痛の自覚は90%に及ぶ
- 🩺 医師が最後に手の診察を行った平均は6.2か月前
- 🩺 医師が最後に足の診察を行った平均は16.5か月前
この数字は意外ですね。手の診察頻度に対して足の診察頻度がほぼ3倍の間隔で空いているという実態が、患者自身のアンケートから浮かび上がっています。
痛みや腫れが残っているにもかかわらず、CDAIスコアが「低疾患活動性」や「寛解」を示す場合、その患者が足関節やMTP関節に炎症を抱えているケースを見逃している可能性があります。CDAIが「2.8以下=寛解」と出ていても、患者が「まだ足が痛い」と訴えている場合は、28関節外の病変を疑う姿勢が必要です。
対応として有効なのは、問診時に「最近のこわばり」「しびれ」「歩行時の痛み」を具体的に確認すること、そして定期的に靴と靴下を脱いでもらい足関節・MTP関節・足底を直接観察することです。足の診察を「面倒な手順」ではなく「ルーティンの一部」として組み込むことが、患者QOLの実質的な改善につながります。
また、足関節の評価が必要な場合、超音波検査(エコー)は滑膜炎を鋭敏に捉えられるツールとして有用です。28関節外の炎症が疑われる局面では、積極的に活用を検討しましょう。
参考:関節リウマチ患者の足痛に関するアンケート調査の考察(医師向けブログ)
https://tuneyoshida.hatenablog.com/entry/RA_foot
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