PASI 乾癬 重症度評価で見落としがちな治療選択の落とし穴

PASIと乾癬重症度評価の「ものさし」が変わることで、治療方針や薬剤選択にどんなリスクとチャンスが生まれているのでしょうか?

PASI 乾癬 重症度評価の基本と落とし穴

あなたのPASI評価、そのまま保険査定やクレームリスクに直結しているかもしれません。


PASI 乾癬 重症度評価の全体像
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PASIスコアの基礎と重症度分類

PASI 0〜72の仕組みやRule of Tens、国内試験で用いられているカットオフを整理し、重症度評価の「共通言語」を再確認します。

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PASI-75/90/100と治療ゴール

PASI改善率だけで評価することの限界や、DLQI・BSAとの組み合わせで生じる治療選択のズレと医療経済的インパクトを解説します。

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PASIでは拾えない重症度と例外症例

PASI低値でも重症扱いすべき局所病変や小児・関節病変など、PASI依存で見落としやすい症例と、実臨床での対応の工夫を紹介します。


PASI 乾癬 重症度評価の基礎と「Rule of Tens」

PASI(Psoriasis Area and Severity Index)は、1978年に提唱された乾癬重症度評価の代表的指標で、現在も臨床試験・実臨床の双方で最も広く用いられています。 hokuto(https://hokuto.app/calculator/24nU4dlKXubo79PgBr97)
具体的には、例えば下肢病変で病変面積が全下肢の約30%なら面積スコアは3点(10〜29%が2点、30〜49%が3点に相当)となり、さらに紅斑3点、浸潤2点、鱗屑2点だと合計7点に領域ごとの重みを掛けて足し上げます。 hokuto(https://hokuto.app/calculator/24nU4dlKXubo79PgBr97)
つまり面積と重症度の両方を一つの数字に圧縮しているということですね。


PASIと並んで重要なのが、Finlayらが提唱した「Rule of Tens(10の法則)」です。 tokyo-med.ac(http://www.tokyo-med.ac.jp/derma/content/files/topics_okubo_2011clinicalderma.pdf)
これはBSA(体表面積に占める乾癬病変の割合)>10%、PASI>10、DLQI>10のいずれかを満たす場合には「重症例として考慮すべき」とする簡便な基準です。 tokyo-med.ac(http://www.tokyo-med.ac.jp/derma/content/files/topics_okubo_2011clinicalderma.pdf)
単に「広さ」だけでなく、DLQI10以上、つまり生活の質が著しく損なわれていることも重症扱いの条件に含めている点が特徴です。 tokyo-med.ac(http://www.tokyo-med.ac.jp/derma/content/files/topics_okubo_2011clinicalderma.pdf)
Rule of Tensが原則です。


国内の臨床試験では、PASIスコア3以下を軽症、3超〜15を中等症、15超を重症と定義して被験者を層別化している報告もあります。 rctportal.mhlw.go(https://rctportal.mhlw.go.jp/detail/jr?trial_id=jRCT2071250114)
一方で、製薬企業や患者向け資材では「一般にBSA10%以上、PASI10以上が重症」と説明されることが多く、現場では複数の基準が混在しているのが実情です。 skyrizi(https://skyrizi.jp/ps/about_psoriasis/diagnosis.html)
このズレは、生物学的製剤・JAK阻害薬など高額薬剤の導入適応を判断する際に、保険者・審査側との認識差として顕在化し得ます。
つまり基準そのものが一枚岩ではないということですね。


PASI 乾癬 重症度改善率(PASI-75/90/100)と治療ゴールの変化

PASIは絶対値による重症度評価だけでなく、「どれだけ改善したか」という変化率指標としても広く使われています。 medical.lilly(https://medical.lilly.com/jp/answers/46092)
臨床試験や実臨床報告では、治療前から治療後でPASIが75%以上改善すれば「PASI-75」、90%以上で「PASI-90」、100%で「PASI-100」と表現します。 medical.lilly(https://medical.lilly.com/jp/answers/46092)
例えばベースラインPASIが20で、治療後に2まで低下した場合、改善率は90%でPASI-90達成となり、スライドや論文では「Week 16でPASI-90達成率60%」といった形で示されます。 hokuto(https://hokuto.app/calculator/24nU4dlKXubo79PgBr97)
PASI-75はかつて主要評価項目の標準でしたが、近年は生物学的製剤の高い効果を反映してPASI-90やPASI-100が新たなゴールドスタンダードに近づきつつあります。 da.abbvie.co(https://www.da.abbvie.co.jp/psoriasis-mygoal/index.html)
結論はPASI-90以上を意識する時代です。


ただし、PASI改善率だけに依存すると、ベースラインの重症度が低い症例では「PASI-100なのに、患者満足度は低い」といった逆説的な状況が生じかねません。 da.abbvie.co(https://www.da.abbvie.co.jp/psoriasis-mygoal/index.html)
例えばベースラインPASIが5の患者で、治療後に0となればPASI-100達成ですが、頭皮や爪、外陰部などQOLへのインパクトが大きい部位に微小病変が残存していれば、DLQIは十分に改善していない可能性があります。 da.abbvie.co(https://www.da.abbvie.co.jp/psoriasis-mygoal/index.html)
そのため近年は、PASI改善率と同時に「DLQI 0/1達成率(乾癬による日常生活への悪影響がない、ほとんどない状態)」を併記する報告が増えています。 da.abbvie.co(https://www.da.abbvie.co.jp/psoriasis-mygoal/index.html)
治療ゴールも「PASI-75達成」から「PASI-90〜100かつDLQI 0/1」で、患者が制限されない生活を取り戻すことへとシフトしています。 da.abbvie.co(https://www.da.abbvie.co.jp/psoriasis-mygoal/index.html)
PASIだけ覚えておけばOKです、とは言えない状況ですね。


この変化は医療経済面でも重要です。
高額な生物学的製剤を用いてPASI-100を目指すことは、短期的には薬剤費の増加をもたらしますが、長期的には再燃・入院・休業などのコストを減らす可能性があります。
実臨床では、患者の職業(接客業、手作業、外傷リスクなど)や併存症(肥満、糖尿病、心血管疾患など)を踏まえ、PASI指標と医療経済的な視点を統合して治療ターゲットを決めることが求められます。
どういうことでしょうか?


PASI 乾癬 重症度だけでは拾えない「局所重症例」とQOLギャップ

PASIは全身の面積と重症度を平均化する指標であるため、病変が限局していてもQOLへの影響が極めて大きい症例では「スコア上は軽症」と判定されてしまうことがあります。 skyrizi(https://skyrizi.jp/ps/about_psoriasis/diagnosis.html)
典型例として、頭皮、顔面、手掌・足底、外陰部、爪などの露出部・機能部位の乾癬が挙げられます。
このような症例はPASI<10にもかかわらず、生活への影響は「Rule of Tens」の重症例と同等以上であり、生物学的製剤やシステム治療の適応として再検討すべきケースになります。 tokyo-med.ac(http://www.tokyo-med.ac.jp/derma/content/files/topics_okubo_2011clinicalderma.pdf)
つまりPASIとDLQIのギャップが問題です。


また、顔面や外陰部に病変が集中している場合、写真撮影や診察室での露出に対する心理的ハードルから、患者が症状を過小申告することもあります。
このとき医療者側がPASI計算に必要な情報を十分に得られず、実際よりも低いスコアで評価してしまうリスクがあります。
特に思春期の若年患者や妊娠可能年齢の女性では、就学・就労・妊娠計画にも影響するため、PASI値以上に慎重な評価が必要です。
QOLに注意すれば大丈夫です。


こうしたリスクを減らすための実務的な工夫として、初診時とフォローアップ時にDLQIやPSQIなどの簡便な質問票をルーチンで記録する、電子カルテにPASIとBSA、DLQIを同一画面で表示するテンプレートを組み込む、といった方法があります。 tokyo-med.ac(http://www.tokyo-med.ac.jp/derma/content/files/topics_okubo_2011clinicalderma.pdf)
小規模クリニックでは紙のチェックシートでも十分で、5分以内に記入できるフォーマットを用意しておくと運用しやすくなります。
また、患者向けには製薬企業が提供するQOL記録アプリや手帳もあり、セルフモニタリングと診察時の情報共有ツールとして活用できます。 da.abbvie.co(https://www.da.abbvie.co.jp/psoriasis-mygoal/index.html)
これは使えそうです。


PASI 乾癬 重症度評価に潜む「医療者側のバイアス」と時間的コスト

医療者、とくに外来で多くの患者を診ている皮膚科医にとって、PASI計算は「時間がかかる」「面倒だ」という印象を持たれがちです。
実際、紅斑・浸潤・鱗屑をそれぞれ0〜4点で評価し、4領域の病変面積を0〜6点で見積もり、重み付けして足し合わせる作業は、慣れていても数分を要します。 hokuto(https://hokuto.app/calculator/24nU4dlKXubo79PgBr97)
1日あたり50〜60人を診療する外来では、全例に厳密なPASIを毎回つけるのは現実的ではなく、「重症例だけ」「生物学的製剤導入例だけ」に限定している施設も少なくありません。
しかし、PASI評価を行っていない、あるいはカルテに明示的に記録していないことが、中長期的には保険査定や訴訟リスクとして跳ね返ってくる可能性があります。
厳しいところですね。


たとえば、高額な生物学的製剤を導入した症例で、レセプト査定や個別指導の際に「導入時PASI」「BSA」「DLQI」の記録が不十分だと、適正使用の根拠が示しにくくなります。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212188_00001.html)
また、治療効果が不十分で薬剤変更や中止を繰り返したケースで、後になって患者側から「高額薬剤を漫然と使用された」と訴えられた場合、PASIやDLQIによる系統的な評価の有無が、説明責任を果たしたかどうかの重要な証拠になります。
さらに臨床研究や学会発表を行う際にも、ベースラインPASIやPASI-75/90達成率がなければ、国際的な比較が難しくなります。 medical.lilly(https://medical.lilly.com/jp/answers/46092)
PASIを付けないことは、短期的には時間の節約に見えても、長期的には医療者側の法的・研究的な機会損失につながりかねません。
PASI記録は必須です。


この時間的コストを減らすツールとして、オンラインのPASI計算機やスマートフォン向けアプリが多数公開されています。 hokuto(https://hokuto.app/calculator/24nU4dlKXubo79PgBr97)
例えば国内の医療者向けサイトでは、4領域ごとの病変面積と紅斑・浸潤・鱗屑のスコアをプルダウンで選ぶだけで、自動的にPASIを計算してくれるフォームが提供されています。 hokuto(https://hokuto.app/calculator/24nU4dlKXubo79PgBr97)
こうしたツールを外来PCのブラウザのお気に入りやホーム画面に登録しておき、少なくとも「生物学的製剤・JAK阻害薬導入前」「治療開始後12〜16週」「半年〜1年ごとのフォローアップ」のタイミングだけでもPASIとDLQIを記録する運用にすると、時間とリスクのバランスが取りやすくなります。
PASI計算ツールに注意すれば大丈夫です。


PASI 乾癬 重症度の「例外」:小児・関節・合併症から見た独自視点

小児乾癬では、成人と同じPASIカットオフをそのまま当てはめると、実態にそぐわない重症度評価になるリスクがあります。
4〜18歳を対象とした中等症〜重症の尋常性乾癬に対するJAK阻害薬の国内第3相試験では、成人と同様にPASIスコア0〜72、3以下軽度、3超〜15中等度、15超重度という区分が用いられていますが、体表面積が小さいことから、同じ病変面積でもBSA%は高くなりがちです。 rctportal.mhlw.go(https://rctportal.mhlw.go.jp/detail/jr?trial_id=jRCT2071250114)
一方で、小児は学校生活や体育、対人関係に対する影響が大きく、DLQI(もしくはCDLQI)のスコアは成人以上に高く出ることがあります。 tokyo-med.ac(http://www.tokyo-med.ac.jp/derma/content/files/topics_okubo_2011clinicalderma.pdf)
つまり小児では、PASIとQOL指標の両方を見ないと、真の重症度がつかみづらいということですね。


関節症性乾癬では、皮膚病変が軽度から中等度でも、関節炎や腱付着部炎による機能障害が強く、全体としては「重症」と扱うべき症例が多く存在します。 asai-hifuka(https://www.asai-hifuka.com/trivia)
この場合、PASIは重症度を過小評価しやすく、DAS28やSPARCCなど関節炎用のスコアを併用しなければ、治療強度の決定を誤るリスクがあります。
さらに、乾癬患者では心血管疾患やメタボリックシンドローム歯周病など全身性炎症と関連した合併症が増加し、重症乾癬では歯周病リスクが健常人の約2倍以上となる報告もあります。 asai-hifuka(https://www.asai-hifuka.com/trivia)
重症度を皮膚症状だけで評価すると、こうした全身リスクを見落としやすく、結果的に心筋梗塞脳梗塞といった重大イベントの一次予防介入のタイミングを逃すおそれがあります。 asai-hifuka(https://www.asai-hifuka.com/trivia)
全身リスク評価が条件です。


独自の視点として、筆者は「PASIの時間軸」をあえてカルテに記録することをおすすめします。
具体的には、PASIとDLQIを時系列でグラフ化し、1年単位で「炎症負荷の累積」を視覚化するイメージです。
これは厳密なAUC(Area Under the Curve)計算ではなくても構いませんが、「過去5年間、ほぼ常にPASI10以上だった」「生物学的製剤導入後3年間はPASI2以下を維持している」といった情報は、長期予後や合併症リスクを議論する上で非常に有用です。
また、こうしたグラフは患者説明にも有効で、「ここからここまでが炎症の強かった時期です」と指差しで示すことで、治療継続の動機づけやライフスタイル介入の説得力が高まります。
意外ですね。


PASI 乾癬 重症度評価を日常診療で「使いこなす」ための実務ポイント

ここまで見てきたように、PASIは乾癬重症度評価の中心的指標でありながら、そのまま信じて使うだけでは不十分な場面が少なくありません。 hokuto(https://hokuto.app/calculator/24nU4dlKXubo79PgBr97)
日常診療でPASIを「使いこなす」ためには、いくつかの実務的ポイントを押さえておくことが重要です。
まず、全例に毎回PASIを付けるのではなく、「治療方針を大きく変えるタイミング」にフォーカスして計測することが現実的です。
たとえば、生物学的製剤・JAK阻害薬・アプレミラストなど高額薬剤の導入前、導入後12〜16週、薬剤変更時、長期フォローアップ時(年1回など)を「必ずPASIを記録するチェックポイント」と決める運用が考えられます。 rctportal.mhlw.go(https://rctportal.mhlw.go.jp/detail/jr?trial_id=jRCT2071250114)
PASI記録のメリハリが基本です。


次に、PASIだけでなくBSAとDLQI(またはCDLQI)をセットで記録し、「Rule of Tens」と整合するかどうかを常に意識します。 skyrizi(https://skyrizi.jp/ps/about_psoriasis/diagnosis.html)
PASI<10でもBSA10%以上またはDLQI>10であれば、「形式上は中等症でも実質は重症」と判断し得ることをカルテに明記しておくと、レセプト査定やセカンドオピニオン時の説明がしやすくなります。
逆に、PASI10以上でもDLQI0/1であれば、「皮膚症状は広いが生活への影響は少ない」と整理でき、患者と相談の上で治療強度やゴール設定を柔軟に調整できます。 da.abbvie.co(https://www.da.abbvie.co.jp/psoriasis-mygoal/index.html)
つまり複数指標の組み合わせがです。


三つ目として、PASI計算を属人的な「勘」に任せず、標準化されたツールやフローチャートで統一することが挙げられます。
また、忙しい外来では看護師や医療事務スタッフが事前にBSA%をチェックし、診察室では医師が重症度スコアだけを確認するワークフローも有効です。
対策としては、院内で一度PASI評価の勉強会を開き、「写真+模擬スコアリング」で目線合わせをしておくとよいでしょう。
PASI運用なら違反になりません。


最後に、PASI評価を患者とのコミュニケーションツールとして活用する視点も重要です。
「今日はPASIが12→5まで下がりました」「目標はPASI3未満とDLQI0/1です」といった具体的な数字で共有すると、患者は治療の進捗を実感しやすくなります。 medical.lilly(https://medical.lilly.com/jp/answers/46092)
一方で、PASIが横ばいのときには、「なぜ改善が鈍いのか」「アドヒアランスや外用量、合併症、体重変動など、どこにボトルネックがあるのか」を一緒に考えるきっかけになります。
このとき、製薬企業が提供する患者向けパンフレットやウェブサイトは、PASIやBSA、DLQIを簡単な図で説明しており、待合室でのセルフラーニングにも活用できます。 skyrizi(https://skyrizi.jp/ps/about_psoriasis/diagnosis.html)
どういうことでしょうか?


以上を踏まえると、PASIは「乾癬の重症度を一言で伝える便利な指標」であると同時に、「QOLや全身炎症、医療経済、法的リスクまで含めた総合判断のきっかけ」にすべきツールと言えます。
あなたの施設でも、まずは「いつPASIを測るか」「何と組み合わせて判断するか」をチームで話し合うところから始めるのが現実的な第一歩かもしれません。


PASIの計算法と重症度分類の詳細な図解を確認したい場合は、以下の医療者向け資料が参考になります。
東京医科大学皮膚科学教室「尋常性乾癬」:Rule of Tensや重症度評価の解説


PASIとBSA、DLQIを組み合わせた重症度評価と、治療ゴール(PASI-90/100、DLQI 0/1)を患者向けにわかりやすく説明している例として、次のページも実務の参考になります。
アッヴィ「乾癬のマイゴール」:治療ゴールと患者QOLの考え方


あなたの施設では、PASI・BSA・DLQIのうち、日常診療でルーチンに記録している指標はどれでしょうか?