ブピバカイン塩酸塩は、長時間作用性のアミド型局所麻酔薬として広く使用されています。神経膜のナトリウムチャネルをブロックし、神経における活動電位の伝導を可逆的に抑制することで、知覚神経および運動神経を遮断します。
リドカインと比較して約8倍強力な活動電位遮断作用を持ち、メピバカイン塩酸塩の2~5倍(神経ブロック)から1.5~2倍(硬膜外麻酔)の作用持続時間を示します。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/29/4/29_4_509/_pdf
ブピバカインの詳細な薬理作用に関する情報
ブピバカインは脊椎麻酔、硬膜外麻酔、伝達麻酔、浸潤麻酔など幅広い適応で使用され、0.25%および0.5%の濃度では、それぞれ1%および2%のメピバカイン塩酸塩と同等の麻酔効果を発揮します。その高い脂溶性により、神経組織への浸透性が良好で、長時間の麻酔効果が得られます。しかし、この高い脂溶性は後述する心毒性のリスクとも関連しています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/28/5/28_5_723/_pdf/-char/ja
ロピバカインは、局所麻酔薬として最初に開発されたS(-)エナンチオマーであり、ブピバカインやレボブピバカインと比較して脂質親和性が低いという特徴を持ちます。この低い脂溶性により、大きな有髄運動線維への浸透が相対的に減少し、運動神経遮断作用に比べて感覚神経遮断作用が強いとされています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3106379/
ロピバカインの薬理学的特徴の詳細解説(日本臨床麻酔学会誌)
臨床使用において、ロピバカインは高濃度溶液を使用することでブピバカインと同等の麻酔効果と作用時間をもたらします。ただし、臨床的に同じ麻酔効果を発現するには、ロピバカインはブピバカインやレボブピバカインに比較して1.3~1.5倍の用量が必要です。この力価の違いは、硬膜外麻酔や脊髄くも膜下麻酔など投与経路によって異なり、小児の仙骨麻酔や硬膜外麻酔ではロピバカインの相対力価がブピバカインよりも強いという報告もあります。
参考)http://www.anesth.or.jp/guide/pdf/publication4-5_20180427s.pdf
ロピバカインの最も明確な利点は、ブピバカインおよびレボブピバカインに比べて心毒性が低いことです。動物実験において、ロピバカインの心毒性はブピバカインよりも低いことが示されており、これは臨床的に重要な安全性の優位性となっています。局所麻酔薬による心毒性は、血中濃度が過剰に上昇した際に不整脈や心停止をきたす可能性があり、特にブピバカインでは蘇生が困難な場合があります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/29/4/29_4_519/_pdf
ロピバカインの低い脂溶性は、心筋細胞への浸透を減少させ、心臓への直接的な毒性作用を軽減します。したがって、投与量が多くなるときや持続注入が必要なとき、特に区域ブロックや持続硬膜外鎮痛においてロピバカインが適しています。等用量を投与する場合には、ロピバカインの中枢神経毒性や心毒性はブピバカインおよびレボブピバカインよりも低いと考えるべきです。
参考)https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282679735310720
両薬剤の使い分けは、投与量、投与経路、必要な麻酔効果の持続時間、および安全性の考慮に基づいて行われます。ブピバカインは0.5%の濃度で運動神経も遮断され、手術目的で使用されますが、0.125~0.25%の濃度では選択的ブロックが可能です。一方、ロピバカインは低濃度(0.2%程度)で術後鎮痛に用いられる際、分離麻酔効果(感覚神経と運動神経の選択的遮断)が高いとされていますが、臨床研究では差を認めないとの報告も多いです。
参考)局所麻酔薬の特徴と臨床での使い分け—よりよい硬膜外麻酔・術後…
ロピバカインの薬理学と臨床使用に関する包括的レビュー
硬膜外麻酔において、0.75%ロピバカインと0.5%ブピバカインは等力価とされ、同様の麻酔効果を発揮します。しかし、分娩時の硬膜外鎮痛ではロピバカインの力価はブピバカインの約60%程度とされ、用量調整が必要です。脊髄くも膜下麻酔では、0.75%ロピバカイン22.5mgと0.5%ブピバカイン15mgが比較されることが多く、下腹部手術や下肢手術において両者は同等の効果を示します。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9979211/
長時間の術後鎮痛や持続注入を必要とする場合、ロピバカインの低い心毒性という利点が特に重要になります。また、運動機能の早期回復が望まれる場合には、ロピバカインの選択的感覚遮断特性が有利に働く可能性があります。一方、確実な運動神経遮断を必要とする手術では、ブピバカインが依然として選択されることがあります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/27/5/27_5_445/_pdf
実臨床において、局所麻酔薬中毒(LAST)の予防と早期発見は極めて重要です。局所麻酔薬の血中濃度が上昇すると、まず中枢神経症状(耳鳴り、口のしびれ、金属味、めまい、多弁、興奮状態、痙攣)が先行し、その後心血管症状(不整脈、心停止)が出現します。ブピバカインは心毒性が強く、一度心停止が発生すると蘇生が困難であるため、血管内への誤投与を避けるための吸引確認が特に重要です。
参考)局所麻酔薬中毒 href="https://nishijima-clinic.or.jp/blog/2025/09/22/%E5%B1%80%E6%89%80%E9%BA%BB%E9%85%94%E4%B8%AD%E6%AF%92/" target="_blank">https://nishijima-clinic.or.jp/blog/2025/09/22/%E5%B1%80%E6%89%80%E9%BA%BB%E9%85%94%E4%B8%AD%E6%AF%92/amp;#8211; にしじまクリニックブログ
複数の薬剤を比較した研究では、レボブピバカインとブピバカインの方がロピバカインより鎮痛効果が優れていたという報告もあり、力価の違いを考慮した用量設定が必要です。また、アミド型局所麻酔薬は肝臓で分解されるため、肝機能低下患者では使用量を最小限にする配慮が求められます。
エステル型局所麻酔薬と比較して、アミド型はアレルギー反応やアナフィラキシーを起こす可能性がはるかに低いという利点があります。
参考)歯科麻酔薬の種類と副作用
長時間作用性局所麻酔薬の中では、ロピバカインが最も安全域が広い薬物と考えられており、特に高用量を必要とする場合や持続投与において、その安全性プロファイルが臨床上の大きな利点となります。硬膜外麻酔における薬剤選択では、フェンタニルなどのオピオイドとの併用も考慮され、より低濃度の局所麻酔薬で効果的な鎮痛が得られます。
参考)https://kango-oshigoto.jp/hatenurse/article/2071/
ブピバカインの臨床使用濃度は0.125%から0.5%の範囲で、適応に応じて選択されます。硬膜外麻酔では通常25~150mg、伝達麻酔では15~200mg、浸潤麻酔では10~200mgが基準最高用量として設定されています。脊髄くも膜下麻酔では、0.5%高比重ブピバカイン7.5~15mgが一般的に使用されます。
参考)マーカイン注0.125%の効能・副作用|ケアネット医療用医薬…
| 麻酔方法 | ブピバカイン | ロピバカイン |
|---|---|---|
| 硬膜外麻酔(手術) | 0.5% 15~30mL | 0.75% 15~30mL |
| 術後鎮痛 | 0.125~0.25% | 0.2% |
| 脊髄くも膜下麻酔 | 0.5% 15mg(3mL) | 0.75% 22.5mg(3mL) |
| 伝達麻酔 | 0.25~0.5% | 0.75%(等力価) |
ロピバカインは、臨床使用濃度が7.5mg/mL(0.75%)、5mg/mL(0.5%)、2mg/mL(0.2%)の製剤があり、硬膜外麻酔での作用発現時間はブピバカインと同程度です。しかし、等用量では効果が弱いため、より高い濃度または用量が必要となることに注意が必要です。分娩時の硬膜外鎮痛では、0.1%~0.2%ロピバカインにフェンタニル2μg/mLを加えた製剤が用いられ、プログラム間欠ボーラス投与(PIEB)により良好な鎮痛効果が得られます。
参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2001/P200100013/67022700_21300AMY00131_253_1.pdf
薬剤選択において、患者の肝機能、心血管系の状態、必要な麻酔の深度と持続時間、運動機能の保持の必要性などを総合的に評価することが重要です。特に心疾患を有する患者や高用量投与が予想される症例では、ロピバカインの選択が推奨されます。
参考)長時間作用性局所麻酔剤「ポプスカインhref="https://www.maruishi-pharm.co.jp/medical/pickup/popscaine/" target="_blank">https://www.maruishi-pharm.co.jp/medical/pickup/popscaine/amp;reg;0.25%注・…

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