神経ブロック治療の種類と効果メカニズム

神経ブロックは局所麻酔薬により痛みの伝達を遮断し、血行改善効果で自然治癒力を促進する治療法です。適応疾患や使用薬剤、合併症のリスクまで、正しい知識をお持ちですか?

神経ブロック治療の種類と効果メカニズム

神経ブロック治療の主要な特徴
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局所限定効果

患部に限局して効果を発揮し、痛みの原因神経を特定できます

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悪循環の遮断

痛みによる神経興奮→血行悪化→痛み増加のサイクルを断ち切ります

複数の治療法

局所麻酔薬注射から高周波治療まで多様な手技があります

神経ブロック治療の基本的メカニズム

神経ブロック治療は、主に末梢神経を一時的または長期間機能停止させることで痛みを軽減する治療法です 。この治療法の核心は、「痛みの悪循環」を断ち切ることにあります 。
参考)https://www.kaoru-pc.jp/column/2019/09/19/2251/

 

痛みが生じると、神経が過剰に興奮し、血管や筋肉が緊張状態になります。これにより血行が悪化し、患部への酸素と栄養供給が減少することで、さらに痛みが増加するという悪循環が生じます 。神経ブロックは、局所麻酔薬により神経伝達を遮断することで、この悪循環を断ち切り、興奮した神経をリセットする効果があります 。
参考)https://www.aj-clinic.com/column/2726/

 

  • 知覚神経ブロック:除痛効果を目的とし、痛みの伝達を直接遮断します
  • 交感神経ブロック:血行改善効果により患部の自然治癒力を高めます
  • 診断的効果:痛みの原因となる神経を特定し、治療方針の決定に役立ちます

治療効果は麻酔薬の効果が切れた後も持続し、血行改善により患部の状態が根本的に改善されることが期待できます 。

神経ブロック治療の主要な種類と適応疾患

神経ブロック治療には比較的容易なものから高度な技術を要するものまで、多種多様な手技が存在します 。区域麻酔学会では2023年6月時点で標準的とされるブロック法の用語統一が行われ、上肢・下肢・胸部・腹部・脊柱周囲・頭頚部・ペインクリニック領域で使用される神経ブロック名が明確化されました 。
参考)https://www.regional-anesth.jp/education/terminology.html

 

主要な神経ブロックの種類と適応疾患

  • 硬膜外ブロック(頸部・胸部・腰部・仙骨):帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛、腰下肢痛、椎間板ヘルニア血流障害、術後瘢痕疼痛症候群、がん性疼痛
  • 交感神経ブロック(胸部交感神経節・星状神経節・腰部交感神経節):帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛、腰下肢痛、椎間板ヘルニア、血流障害
  • 神経根ブロック:頸部・腰背部痛、下肢痛
  • 椎間関節ブロック:椎間関節由来の腰痛症
  • 肋間神経ブロック:肋間神経痛

星状神経節ブロックは、首にある交感神経を局所麻酔薬により一時的に緩め、上半身の痛み軽減だけでなく、脳血流改善、自律神経・ホルモン分泌・免疫力のバランス調整効果も期待できます 。
参考)https://www.aj-clinic.com/column/919/

 

神経ブロック治療で使用される薬剤と作用機序

神経ブロック治療で使用される薬剤は、治療目的や効果持続期間により選択されます 。各薬剤には特有の作用機序があり、適切な選択が重要です。
局所麻酔薬
一時的に神経伝達をブロックする薬剤で、神経細胞膜の電位依存性ナトリウムイオンチャネル(VGSC)に作用します 。脂溶性の高い塩基型が細胞膜を通過し、細胞内でイオン型となって神経伝導を遮断します 。通常は細い神経線維から順次遮断されるため、低濃度では交感神経から、次に知覚神経、高濃度では運動神経まで遮断されます 。
参考)https://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse2143.pdf

 

副腎皮質ステロイド
神経に生じた炎症を抑制する目的で局所麻酔薬に添加されます。炎症性疼痛に対して持続的な効果が期待できます。

 

神経破壊薬
長期間のブロック効果を期待する際に使用されますが、事前に必ず局所麻酔薬による効果確認を行います。無水エタノールやフェノールが代表的で、神経組織を永続的に破壊します。

 

造影剤
針の位置確認や薬液の流れを確認するために使用し、治療の安全性と効果を高めます。

 

薬剤の選択は、患者の症状、治療目標、副作用のリスクを総合的に評価して決定されます。

 

神経ブロック治療の合併症と禁忌事項

神経ブロック治療は安全性の高い治療法ですが、医療行為である以上、合併症のリスクをゼロにすることはできません 。適切な知識と対策により、リスクを最小限に抑えることが重要です。
参考)https://www.kaoru-pc.jp/column/2019/09/30/2269/

 

主要な合併症

  • 局所麻酔薬中毒:大量使用時に血管内注入により発症する可能性があります
  • 神経原性ショック:痛み刺激による迷走神経反射で急激な血圧低下や徐脈が起こります
  • アナフィラキシーショック:局所麻酔薬や添加薬物によるアレルギー反応です
  • 神経損傷:注射針による直接的な神経損傷で、数日から数週間の感覚鈍麻や痺れが残ることがあります

    参考)https://knowledge.nurse-senka.jp/500168

     

治療が行えない場合

合併症予防のため、多くの施設ではレントゲン透視下や超音波ガイド下でのブロックを実施し、体内の深部状況を直接確認しながら治療を行っています 。

神経ブロック治療の継続期間と効果持続性

神経ブロック治療は一度の施術で完治するものではなく、複数回実施するのが一般的です 。治療効果の持続期間は、使用する薬剤、患者の症状の重症度、治療部位により大きく異なります。
局所麻酔薬単独での効果持続
局所麻酔薬そのものの持続時間は数時間程度ですが、痛みの悪循環を断ち切ることで、麻酔効果が切れた後も痛みの軽減が持続します。一般的に軽症例では効果の持続時間が長く、重症化している場合ほど短時間となります 。
星状神経節ブロックの治療間隔
1回の注射の持続時間は症状により数時間から数週間と幅広く、通常は1週間に1回を目安として治療を継続します。

 

高度な神経ブロック手技の持続効果

  • 高周波熱凝固法 :80-90℃の熱により神経を蛋白変性させ、数か月から数年の除痛効果をもたらします

    参考)https://www.kuaccm.med.kyushu-u.ac.jp/patient/index.html

     

  • パルス高周波法 :42℃以下の低温で高周波電流を間歇的に通電し、数週間から数か月の効果が得られます

    参考)https://shiopain.com/pulse.html

     

  • 神経破壊薬使用 :適切に施行された場合、数か月から1年以上の長期効果が期待できます

治療効果が減弱してきた場合は、安全性を確保したうえで繰り返し施行することが可能です 。患者の症状経過を慎重に観察し、最適な治療間隔を決定することが重要です。
神経ブロック治療に関する詳細な医学的情報
日本区域麻酔学会の神経ブロック用語統一について
神経ブロックの種類と適応疾患の詳細解説
神経ブロック治療の基本的な仕組みと使用薬剤
高周波治療法の詳細な作用機序
パルス高周波法と高周波熱凝固法の違いと臨床応用
神経ブロック治療の合併症と安全対策
神経ブロック施行時の注意点と合併症予防